川崎重工業、ニューヨークから地下鉄電車140両を追加受注

2008年11月11日 19:40

R160イメージ【川崎重工業(7012)】は11月10日、アメリカのニューヨーク市交通局(NYCT、New York City Transit)から地下鉄電車(R160)140両の追加受注を受けたことを発表した。受注金額は2億7500万ドルほどで、納期は2010年3月。先に契約した車両における契約の、オプション契約が行使されたもの(発表リリース)。

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先行導入されているR160
先行導入されているR160

R160地下鉄電車は5両1編成、通常2編成(10両単位)で運転。寸法は長さ18.325メートル、幅2.98メートル、高さ3.665メートル。車体素材はステンレス鋼。

川崎重工業では2002年10月にフランスのアルストム社と共同でNYCTからR160について660両を契約、うち川崎重工業は260両を担当している。その契約にはオプションがいくつか用意されており、すでにオプション1(260両、全両川崎重工業)は2007年7月に行使されて受注。今回オプション2が行使され、382両が受注(うち川崎重工業は140両)されることになった。さらに川崎重工業はR160の車両設計と、アルストム社のも含めたすべてのR160車両1662両の台車を担当している。

解説によると地下鉄電車は、ステンレス車体に信頼性の高い制御装置や空調装置、ドア開閉装置、放送装置などを備え、安全性や快適性に配慮した車両。車両構体製作をリンカーン工場(アメリカ・ネブラスカ州)で、機器取付けと最終組立て、試験をヨンカース工場(アメリカ・ニューヨーク州)でそれぞれ行い、順次NYCTに納入する。現在400両以上の川崎重工業製車両が営業運転に投入され、車両の信頼性を示す無故障での連続走行距離が契約要求の3倍以上の実績を達成するなど、客先や利用客より高い評価を得ているとのこと。

川崎重工業はNYCT向け車両では1985年にR62地下鉄電車325両を受注して以来、累計で2079両の実績を持つ。今回R160の納入が終われば、NYCT向けの地下鉄車両では最大シェアを占めることになる。

次期大統領と鉄道網の関係

リリースにもあるように次期大統領のオバマ氏は、鉄道を含む交通インフラへの公共投資の充実を公約しており、今後も連邦政府資金の投資が増加する見通し。また、多くの州や都市で税収を鉄道投資に充てる政策が住民投票で承認されており、今後も北東回廊(首都ワシントンなどアメリカ北東部を網羅する鉄道網)の都市交通やアムトラックをはじめとする都市間交通の、既存車両の置き換えや輸送力増強に関するプロジェクトが大幅に増加することが予想されている。すでに、都市部の地下鉄路線の増強・更新や、都市近郊の通勤路線の快適性向上などにともない、地下鉄電車・通勤電車・二階建客車の発注が増加しているとのこと。

公共交通機関としての鉄道イメージアメリカにおける鉄道事情の変化は、【自動車や飛行機から鉄道へ・燃料高で急増するアメリカの鉄道利用客数】【「自家用車からバス、鉄道へ」ガソリン高で変わるアメリカの移動スタイル】でも触れているが、元々自動車による移動が主流だったアメリカで、ガソリン高により「ガソリンを使わず安価に移動できる交通手段」として鉄道が再評価されるようになったのがもっもと大きな要因。さらにリリースにもあるように、次期大統領のオバマ氏が鉄道への注力を選挙期間中に約束してきただけに、内需拡大の面もあわせて鉄道の整備更新を行うことが期待されている。

具体的には「グリーンニューディール政策(Green New Deal、緑の公共事業)」と銘打ち、西海岸、さらにはアメリカの各地を結ぶ鉄道網の「再生」(現状では廃止された路線も多く、老朽化が進んでいる)。そしてクリーンエネルギーの開発によって多数の雇用を創出すると共に、エネルギーの自立をめざしている。

自動車におされて今ひとつ元気の無いアメリカの鉄道も、「省エネ」、そしてトップの政策方針により、大きな転機を迎えることになるだろう。


(最終更新:2013/08/02)

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