今年倒産した上場企業をグラフ化してみる(11月26日版)

2008年11月27日 06:30

倒産イメージ(11月26日版)11月26日、コンクリート製品の販売と建設工事を主業務とする【オリエンタル白石(1786)】が会社更生法の適用を申請すると共に上場廃止が決定、上場企業の倒産(破産・民事再生・会社更生)は今年に入って29社目となった。帝国データバンクによれば、この倒産社数「29」は2002年の29社と並び、戦後最大の多さとなる(上場廃止後に倒産したエー・エス・アイを含めると30社)。不動産関連市場の軟調さに加え、さまざまなマイナス要因が重なった不運があるとはいえ、株価動向とあわせ少々常軌を逸している。そこで今回は同数とはいえ戦後最大(最悪)をカウントしたこともあり、【今年倒産した上場企業をグラフ化してみる(10月31日版)】のデータ更新版として、最新のデータを反映させたグラフを作成し、現状を把握できるよう試みることにした。

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まずは今年に入ってから、11月26日時点の上場企業における倒産企業一覧。エー・エス・アイは上場廃止後なので取り入れておらず、合計で29社となる。

2008年における上場企業の倒産一覧(11月26日時点)
2008年における上場企業の倒産一覧(11月26日時点)

なお「不動産」には直接の不動産売買以外に不動産投資、不動産関連事業も含めてある。詳細に分類しても今件においてはあまり意味をなさないからである。

次に、セクター(業種)ごとに負債総額を累計し、負債総額全体に占める割合をグラフ化する。

2008年に倒産した上場企業の負債額区分(11月26日時点)
2008年に倒産した上場企業の負債額区分(11月26日時点)

不動産だけで7割強、建設も含めると9割超が「不動産・建設」という、不動産事業がらみの企業の倒産で生じている構造は10月末時点と変わらない。いかに今年の上場企業の破たんが、不動産業界と深い関係があるかが分かるだろう。

負債総額の上位10位を並べてみても、不動産業界の苦境が見て取れる。

2008年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(11月26日時点)
2008年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(11月26日時点)

直近で破たんしたオリエンタル白石が第5位に入り、上位10位すべてが不動産か建設で占められるという異常事態になってしまった。それだけ不動産・建設の大型倒産が今年発生しているということだ。

また、上場企業の倒産は今年後半にかけてペースを上げている。これは元々改正建築基準法絡みで審査が通りにくくなり新規建設物件の量が少なくなったことに加え、去年秋以降の資源高によるコストの高騰、さらには不景気による需要縮小で需給バランスが大きく崩れたこと、その上今年春先以降顕著になった金融信用収縮で「資金の借り入れが難しくなった」どころか「貸しはがしを受ける」企業が相次いでいることが要因として挙げられる。幸いにも「現時点で」11月はまだ2件しか確認されていないが、これから月末に向けて「当記事の更新版を改めて掲載しなければならない事態」が生じないと断言することはできない。

2008年における上場企業倒産件数(11月26日現在)
2008年における上場企業倒産件数(11月26日現在)

10月の月末は連続して3件も相次いでリストに名を連ねるなど、半ば倒産ラッシュ状態となり、月間倒産件数では最多の8件を記録する事態におちいっている。10月がピークでした、ということになれば良いのだが。

最後に「市場から失われた資金」を計算してみる。これは上場廃止告知日におけるその企業の株価に、その企業が発行している株式総数(ヤフーファイナンスから取得)を乗じた、いわば「倒産告知時の時価総額」。倒産≒上場廃止となればその企業の株式の流動性はほとんどゼロとなり、破産ならほぼ資産価値はゼロ、民事再生や会社更生でも上場廃止後に何らかの資産価値を得られる可能性は極めて低い(まれな例外として、上場廃止に清算された分配金が、上場廃止時の株価を上回る場合もある)。

そこでここでは、上場廃止告知日のその企業における時価総額を、「株価がゼロ」=「時価総額がゼロ」になると仮定し、その資金が市場から失われてしまうと考え(少なくともそれに近い額がそれぞれの株主から失われるのは確かだ)、計算してみることにした。仮に倒産告知前に何らかの「気配」が感じられていれば、投資家はそれに気づき手持ちの株式を売り抜けようとするので、自然に時価総額も下がることになる。

2008年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(11月26日現在)
2008年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(11月26日現在)
・「不動産」が半数突破
・いまだにプロデュースの
「突然死」の影響は大きい

先月データ掲載から一か月が経過したが、相変わらず「その他」セクターの比率が異様に高い。これは【プロデュース(6263)、民事再生法適用申請・10月27日に上場廃止】でもお伝えしたように【プロデュース(6263)】に寄るところが大きい。株主が異変に気がつく、あるいは気がついても逃げ切る余裕なく倒産の告知がなされたため、株価が高い水準のまま破たんし、結果的に「時価総額」に大きく貢献することになってしまった。

ちなみにプロデュースの倒産告知当時の時価総額は160.7億円。負債総額ではトップの位置にあるアーバンコーポレーションの140.8億円ですら上回る値。プロデュースの事例がいかに異様であるかがあらためて理解できよう。

またその一方、不動産・建設セクターの割合の合計が前回と比べ増加しているのが分かる。11月の倒産のうち、特にオリエンタル白石の影響力が大きく、建設業における「失われた資金」が積み増しされているのが原因。


上場企業の年間倒産件数が過去最高に達するのは、早くても11月末と想定していたが(月末が週末にもあたり、決済や告知上何かと危険な日にあたるため)、実際にはそれよりも前に同数ながらも「過去最高」をカウントする事態におちいってしまった(一部報道では「記録更新」とあるが、これは前述したように上場廃止後に倒産したエー・エス・アイを含めているため)。

東証の適時開示情報を見るに、綱渡り的なやり取りをしている企業や、赤ランプが点灯している企業を複数確認することができる(しかも、やはり建設・不動産業に多く見受けられる)。これから週末にかけて、とは限らないが、年末にいたるまでには確実に「過去最高に達する」ではなく「過去の記録を更新」として、再び今種の記事を掲載しなければならなくなるだろう。

望むことといえば、せめて「積み増し」される件数・額が少しでも少なくなること。今はただ、それを祈るしかない。


(最終更新:2013/08/01)

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