10月の「ブラッディ・オクトーバー」を個人投資家らはどのように過ごしたか
2008年11月07日 06:30
【野村證券(8604)】の金融経済研究所は11月5日、個人投資家の投資動向に関するアンケート調査とその結果の分析報告レポートを発表した(【ノムラ個人投資家サーベイ・2008年10月計測分、PDF】)。それによると、当方(不破)が「ブラッディ・オクトーバー」と銘銘するほどの急降下を見せた2008年10月の株式市場において、個人投資家の多くは含み損を出したものの、損切りを行う一方で買い増しや新規買いを積極的に行っていたことが明らかになった。調査母体が中長期投資家を中心としていることもあり、今回の「ブラッディ・オクトーバー」を良い銘柄が安値で拾える「ラッキー・オクトーバー」と見ている面もあるようだ。
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今調査は1000件を対象に10月22日から23日に行われたもので、男女比は70.0対30.0。年齢層は40歳代がもっとも多く34.4%、ついで30歳代が25.0%、50歳代が21.8%など。金融資産額は1000万円~3000万円がもっとも多く24.3%、500万円~1000万円が22.9%、200万円~500万円が17.2%と続いている。1銘柄あたりの保有期間は2年から5年未満がもっとも多く30.3%を占めている。次いで5年以上が24.3%、1年から2年未満が11.3%。投資に対し重要視する点は、安定した利益成長がもっとも多く46.9%と約半分を占めている。ついで配当や株主優待が30.8%となっている。投資サイクルが個人投資家全般よりやや長めとなっていることに注意する必要がある。
まず最初に、「最近一か月間の株式投資の状況」に関する回答。調査日が10月22・23日なので、ほぼ「ブラッディ・オクトーバー」をカバーしていることになる。そのような状況の中でもプラス(実現損益・含み損益の双方を含む。以下同)をはじき出している人が1.8%もいた。
最近一か月間(2008年9月下旬~10月下旬)の株式投資の状況(含み・確定双方)
一方で損失を計上している人は8割強。日経平均と比べて「まだマシ」「それ以上に酷い」人がほぼ同数ずつ。額の平均まではこのデータからは計算できないが、少なくとも人数的に平均化すると、大体日経平均株価の下落率と同じ程度の損失を出していることになる。
では利益を出した人はもちろん、含み損を増やした人、確定損を出した人も含め、この一か月間にどのような投資行動を行ったのか(日本国内株式の現物取引に限定)。もっとも多いのは「何もしていない」で6割を超えていた。要は「嵐の吹く中、頭を抱えて過ぎ去るのを待っていた」ことになる。
最近一か月間に行った投資行動(複数回答)
買い増し、新規買い、
損切り
:それぞれ1割5分
利益確定:1割
複数回答とはいえ、「何もしていない」人が同時に何か他の行動を選択することは矛盾する。つまり38.1%の人が何らかの行動を起こしたことになる。具体的な行動の中でもっとも多いのは「保有していなかった株式を新たに買い付けた(新規買い付け)」で15.5%。ただ、それに続く「保有株式の買い増し(大部分の場合は「ナンピン」)」「保有株式の売却(損切り)」はほぼ同数になる。さすがにこの下げ相場の中では「利益確定の売り」は少ない。
このデータを見る限り、嵐のような相場観の10月においても、多くの個人投資家は「事態が過ぎ去るのをただ待つ」一方、残りの投資家はポジションの整理をしたり、さらにはこれを好機と捕らえて果敢に買い増しをしたり、新規買いをしていたことになる。ああ、健気かな個人投資家たちよ。
10月28日に付けた日経平均6994円90銭が「バブル後最安値更新」「7000円台の大台を割り込む」という2つの項目で大きなインパクトを与えたことから、これを「ここで底だろう。今が買い時だ」というマインドを多くの投資家に植えつけたようで、直近においてはこの時点が底値となり、もみ合いながらも市場は反発の様相を見せている。
ファンドなどの大口の売買、追証売りによる証券会社からの強制売りなど、個人投資家にはどうしようも無い状況もあるが、市場は大抵において参加投資家の総意によって形成されうるもの。周囲環境が改善され、投資家のマインドがポジティブさを取り戻せば、市場そのものも再び明るさを見せるようになる。
その時には61.9%の「何もしていなかった」投資家も、腰を上げることになるだろう。
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