『World of Warcraft』の不正プログラムに対し6億3000万円の損害賠償支払い判決
2008年10月04日 12:00
【BBC News】が伝えるところによると、多人数同時参加型ネットワークロールプレイングゲーム(MMORPG)の『World of Warcraft(WoW)』の不正プログラムを作成し販売してきたMDY Industriesに対しアメリカの地方裁判所は10月1日までに、『WoW』の販売運営元であるBlizzard社に対し、600万ドル(6億3000万円)の損害賠償を支払うよう判決を下した。
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MDY IndustriesのMDY配布サイト。状況をかんがみ、URLは表記しない。
『World of Warcraft』は1000万人以上の会員を有し、『ウルティマオンライン』『エバークエスト』『リネージュ』などと共に世界中からアクセスされている人気MMORPG。他のサービス同様に人気の高まりと共に不正プログラム(企業側が認定しないもの、ゲームやシステムの改ざんなどの不法プログラムをあわせた)やRMT(リアルマネートレード。ゲーム内の貨幣などを現実のお金で売買する行為。多くのゲームでは禁止されている)行為が見受けられるようになる。
今回判決を受けたMDYでは『WoW』用に「Glider」(25ドル)と呼ばれるBOTプログラム(自動的にキャラクタを動かして敵を倒したりアイテムを手に入れるプログラム)と呼ばれる不正プログラムを作成。25ドル(2625円)の価格で10万本以上を販売してきた。
今回判決を下した地方裁判所では、この「Glider」が『WoW』の利用規定のいくつかに定職していることを確認すると共に、MDY側の主張の一つ「低レベルの自分のキャラクタがレベルアップをする際にしなければならない、単純作業的なモンスターとの戦いや戦利品の調達は苦痛であり、それを手助けするツールは多くのプレイヤーが求めている」事実も一部認定している。そしてもしこの「一部的な同情・認定」がなければ、賠償額はもっと跳ね上がっただろうと指摘する法の専門家もいる。
今回の事例はネットワークゲーム上で運営側が規制する条項に抵触するようなソフトウェアを製作販売し、利用を助長した(、そしてプレイヤーの規約違反を後押しする)行為は、その企業から損害賠償を請求されうるという前例を作った点で注目を集めている。
さらにBlizzard側が賠償請求額を600万ドルから2倍、3倍に跳ね上げる可能性も指摘されている。2009年1月に再び開催される法廷(法的にクリアされていない部分を確定するために開催される。具体的にはMDYの行為が著作権法に抵触しているのかどうか、賠償額がMDY創業者のMichael Donnelly本人のポケットマネーで支払われなければならないのかどうか)で、賠償額についても再び討議されるかもしれない。
もちろん日本でも(未確認ではあるが)この類のツールの存在は噂されているし、海外に目を向ければ無数に見つけることができる。キーボードとマウスの動作についてマクロを組むこと自体は何の違法性もないため(本来はゲーム以外の一般作業に使われる)、言い逃れが出来ると考えている向きもあるのだろう。
しかし繰り返しになるが、「運営側が規制する条項に抵触するようなソフトウェアを製作販売」することは、プレイヤーの規約違反を手助けすることに他ならない。それが運営側の意図にマイナスをもたらすものであれば、損害を伴う営業行為の妨害に他ならず、法的な規制の対象になりうる。ましてや今回のように大規模なビジネスを展開しているとなれば、キツいお灸をすえられても当然といえよう。
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