ダチョウが新型インフルエンザから人類を救うかもしれない
2008年10月24日 19:40
NHKの公式サイト上に記事が掲載されていないのでうろ覚えと事後調査によるところでしかないのだが、10月24日早朝の放送で「ダチョウの卵」を使った新型インフルエンザの感染を最小限に防ぐマスク(正確にはマスクのフィルター)の開発話が放送された。非常にシンプルで興味深く、将来性も期待できそうな話なので、ここで簡単に紹介しておくことにする。
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そのマスクを作成したのは、京都府立大学の塚本康浩教授。科学技術振興機構の支援の元に、7月にベンチャー企業の「オーストリッチファーマ株式会社」を設立している。【科学技術振興機構発のリリース】に詳細が記載されているが、簡単にその仕様を箇条書きにまとめると次のようになる。
・ダチョウは寿命も長くウイルス耐性も強い鳥類で、大きな卵を産むのも特徴。その卵には親鳥の特性(免疫システム)も受け継がれる。
・そのダチョウに新型インフルエンザへの進化が想定される鳥インフルエンザの、毒性を除いたものを投与する。ダチョウの体内では「毒性のウイルスが侵入した」と勘違いし、そのウイルスへの抗体が生成される(免疫機能が働く)。
・そしてそのダチョウが産む卵にも、同様にウイルス対抗の性質が備わることになる。
・その卵の黄身を用いることで、鳥インフルエンザを中和するダチョウ抗体を作成。
・その抗体をフィルターに取り付けることで、低価格で高品質の鳥インフルエンザ(≒新型インフルエンザ)感染防御用マスクフィルターが作れる。
というもの。マスク用フィルターだけでなく、検査薬なども生成できるという。
メリットは多々あるが、もっとも大きなものは容易に量産が可能なこと(卵が大きいため)。1羽のダチョウから作れる高純度の抗体量は400グラム/半年。これはウサギの800羽分に相当するもの。さらにダチョウの寿命は60年・産卵期間も40年以上であることから、継続的に同質の抗体供給が期待できる。
リリースによれば今年の秋(!)にも【CROSSEED】から今工程を使ったマスクが製品化され、医療系機関や自治体などに対し、新型インフルエンザのパンデミックに備えた備蓄品として大量販売されるとともに、大手メーカー経由で一般向けにも販売されるという。さらにダチョウ抗体を用いた新インフルエンザのリスク回避用途の開発に着手するとのこと。
「新型インフルエンザのリスク回避用途」詳細は書かれていないが、検査薬以外にワクチンかその類のものを作るのだろう。さらに新型インフルエンザに対してだけでなく、ノロウイルスや結核菌など他の病原体の感染予防用素材、さらにはダチョウ抗体を用いた検査キットなども展開する予定。
そう遠くない将来、ダチョウの抗体を利用した新型(あるいは鳥)インフルエンザ備蓄品としてのマスクを見かけることがあるかもしれない。「ダチョウの卵を使った」という表記は無いだろうが、もしそのマスクであることを確認できたら、恩人ならぬ恩鳥となるかもしれないダチョウのことを想いながら手に取ってみよう。
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