世界初の核シェルターホテル

2008年10月20日 08:00

ホテルイメージ20世紀の米ソ(「ソ」=ソ連、現在のロシア)冷戦構造時代には両国間の全面核戦争が懸念され、両国及びその関連国では核シェルターが相次いで建造された。永世中立国のスイスでは、自治体が率先して核シェルターを準備し、また個々の住宅にもかつては核シェルターの設置が義務付けられていたため、その普及率は100%に達している。現在ではその「実用」可能性も低くなり、半ば以上無用の長物と化しつつあるスイス中部にあるSevelenの核シェルターが、世界初の「夜空の見えないホテル(no star hotel)」として生まれ変わった(【Mail Online】)。

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スイスにオープンした、世界初の(と自称している)夜空の見えないホテル。核シェルターを流用している
スイスにオープンした、世界初の(と自称している)夜空の見えないホテル。核シェルターを流用している
大部屋を皆で使うため、気分は修学旅行(いずれもMail Onlineより)
大部屋を皆で使うため、気分は修学旅行(いずれもMail Onlineより)

元々が核シェルターを利用している……というよりそのまま流用しているため、一般ホテルにあるようなルームサービスは無く、テレビなども設置されていない。もちろん窓は皆無。お湯の量も制限され(早起きすればお湯のシャワーが使えるが、順番が遅いと冷水を使う羽目になる)、空気清浄機がむき出しの状態。冷暖房設備もなし。ただし高級ホテルが多いスイスにおいて、宿泊費の安さ(一泊17ポンド=3000円)が受けているという。核シェルターホテルには最大54人までが宿泊可能(ただし合宿所のように利用者全員が同じ部屋を使う)。

「それ以上でもそれ以下でもなく(単純に泊まる場所をご提供するだけ)」とは、この核シェルターホテルを提供しているRiklin兄弟。法律上核シェルターの整備を義務付けている公的機関側も「常にメンテナンスをほどこし、いざという時に使えるように整備している限りにおいてはホテルとしての利用も問題なし」とのお墨付きを与えている。また、監視カメラが用意され、外部からモニターが行われているので、何かトラブルがあった時の対処も用意されている。シェルターが閉鎖空間にあるからといって、閉じ込められているわけではないのでご安心を。

かつて法律上すべての住宅に核シェルターの装備を義務付けられていたスイスも、今ではそのシェルターの多くがワインセラーやきのこ栽培所に姿を変えている。今回の「夜空の見えないホテル」はホテル利用としては初のものになる。

このホテルを報じている別の海外紙【ドイツのSPIEGEL ONLINE】によると、すでに中国、ベトナム、アメリカ、トルコ、そして日本から問い合わせが来ており、予約は一か月先まで一杯。Riklin兄弟はすでに英語とドイツ語でこの「夜空の見えないホテル(no star hotel)」の商標を登録し、大規模な展開を計画しているという(元々が住民が利用しているシェルターを利用するため、11月にプロジェクトを拡大するかどうかについての住民投票が行われる)。いわく「少ない経費で新たな観光名所を生み出すことが出来る」とのこと。

少なくとも次の「本来の目的の利用」が無ければ無用の長物と化すこれらのシェルター。言葉通り「平和利用」としても注目されるに違いない。

……日本のカプセルホテルやネットカフェの利用状況を見たら、Riklin兄弟はどんな感想を抱くだろうか。

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