バフェット氏いわく「米国株式を買おう。私はすでに買っている」
2008年10月20日 08:00
アメリカの著名投資家で投資会社【バークシャー・ハサウェイ(BERKSHIRE HATHAWAY)】を率いるウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)氏は10月17日にNewYorkTimes紙へ寄稿し、自分が今現在アメリカの株式を買っていること、今が買い時であるとコメントした(【Buy American. I Am.(アメリカの株式を買いなさい。私は買っている)】)。
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バフェット氏は寄稿の中で現状を「アメリカ国内外で金融だけでなく一般経済においても酷い状況だ」とため息混じりなごとくに説明した上で、今後原油価格の下落が続き、失業率は上昇し、景気は衰退し、新聞記事の見出しは暗い内容が続くとしている。
そして「法人のバークシャーではなく」バフェット氏個人の口座から、と前置きした上で、具体的な銘柄への言及は避けながらも現在アメリカの株式を買っていると述べている。いわく「これまでは米国債だけしか買っていなかった。しかし現状のように魅力的な株価水準が続くのなら、自分個人の資産はすぐにアメリカの株式で埋め尽くされることになるだろう」。
現状のような混乱の時期に、なぜ買い進めるのかという疑問には、
「自分の購入ルールはきわめてシンプルなもの。他人が熱心に買いを入れている時には慎重になり、他人が恐れている時には熱心に買いを入れるべきである(。自分はそれに従っているだけだ)。そしてご存知の通り、現状においては経験に長けた投資家の間ですら「恐怖」が市場にまん延しているではないか。(自分にとってこれほど「買い」のチャンスはない)」
(「A simple rule dictates my buying: Be fearful when others are greedy, and be greedy when others are fearful. And most certainly, fear is now widespread, gripping even seasoned investors.」)
と答えている。
そして競争力の弱い投機的な企業への投資に足踏みするのは正しいとしながらも、健全な企業が長期的には成長していく過程そのものに不安を抱くことは意味をなさないとし、「短期間では(現在の不況を受けて)収益を減らすだろうが、5、10、20年という中長期の目で見れば(これらの健全な企業の)利益はこれまで以上の額を記録するだろう」としている。
バフェット氏は自分をして「株価の短期的な動向を推し量ることはできない(I can’t predict the short-term movements of the stock market.)」とし、数か月や数年単位での予測は自分にはできないとしている。その上で、「市場心理や実体経済が上向く前に、市場そのものが上昇に向かい、その勢いはすさまじいものになるはずだ。(春を告げる)こまどりを待っていたら、春は過ぎ去ってしまうだろう」とし、春が来る前にその喜びを楽しむための準備をしておくべきだ、自分はそうしていると言及。
さらに歴史的な事実をいくつか挙げた上で、色々な危機・難局を乗り越えてアメリカ経済と共に株価が成長を続けたことをコメント。その上で、今、現金を抱えている人は「株の下落から逃れることが出来た」との爽快感を得ているかもしれないが、そうすべきではないと断じている。
その理由についてバフェット氏は、政府が今後現状の金融危機を打開するためにインフレ誘導の政策を行うだろうから、彼ら「現金派」は実質的に資産価値が減少してしまうことを意味すると説明。そして今後の10年間、株式は現金よりもかなり優れたパフォーマンスを維持するだろうとしている。
●コメントを色々と検証
バフェット氏が今回述べた投資方針はこれまでの著書、さらには【「ウォーレン・バフェットの溜息」】などでも触れられている内容と同じであり、何らぶれているところはない。また、【昨今の市場混乱時におけるバフェット氏の投資三原則】における言及(「リスクを完全に掌握するまでは「落ちるナイフ」をつかむべきではない」)とあわせて考えると「そろそろこのあたりが底なのでは」と考えている節がある。もっとも、バークシャーでの買いには言及していないのが気になるが。
興味深いのはバフェット氏は今後アメリカ政府が意図的なインフレ誘導を行うと言及していること。あるいは【ZAR大好きの忘ビログ】で詳しく説明されている「マネタリー・リフレーション(Monetary Reflation)」あたりを確信しているのかもしれない。
先日【主要各国の経済成長率をグラフ化してみる】で挙げたIMFの経済成長予測では、今後のアメリカのGDP成長予想として
2009年……0.1%
2010年……2.0%
2011年……3.1%
2012年……2.7%
2013年……2.3%
という値を算出している。IMFの予想が当たるかどうかはまた別として、今後5年のうちに「こまどり」がやってくるのかどうかを見極めるのは少々難しいかもしれない。
ちなみにバフェット氏の投資会社バークシャー・ハサウェイ(BERKSHIRE HATHAWAY)のポートフォリオを追いかけている【Warren Buffett's Stock Portfolio】によれば、買い注文サイドでは
●新規購入
・CarMax Inc.(中古車販売業者)
・WABCO Holdings Inc.(自動車の部品会社)
●買い増し
・Burlington Northern Santa Fe Corp.(貨物輸送会社)
・Dow Jones & Co. Inc.
・Johnson & Johnson(製薬メーカー)
・US Bancorp(銀行持ち株会社)
・Wells Fargo & Company(銀行などの金融総合会社)
などの動きが見られる(もちろん持ち株の減少や売り切りのもあるがここでは省略)。手堅いインフラ系銘柄への買い増しを続けると共に、今株価が急落している金融系・自動車系への買い増し・新規買いを行い、これらの業種が必ずや復活すると見込んでいるようでもある。
(最終更新:2013/08/02)
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