主要各国の経済成長率をグラフ化してみる
2008年10月18日 19:00
国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)は10月8日、最新のデータに基づいた主要各国における実質GDP(Gross Domestic Product、国内総生産)の今後の伸び率を発表・更新した。それによると日本の成長率は2008年の0.7%から2009年にはさらに落ち込み0.5%になるという予想が立てられていた。主要各国も軒並み経済成長率を落としており、金融危機(「金融工学暴落」「金融工学危機」)が世界経済に大きな影を落としていることが分かる。今回はこのデータをグラフ化することにする(【発表ページ】)。
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多種多様なメディアによって報じられているように、去年の夏以降露呈された「金融工学」による各種金融商品の暴走が原因で引き起こされた金融危機は、世界各国の経済に大きなマイナス影響を及ぼしている。体力のそれほど大きくない国にいたっては、全金融機関の事実上の国有化が図られるほど(アイスランド)。アイスランドほどではないにせよ、多かれ少なかれ銀行やその他金融機関が体力をすり減らし、国有化のうめきにあっている。
このような状況を受け、更新されたIMFによる経済成長見通しも、非常に厳しいものとなっている。まずは2009年における最新データに基づいた経済成長見通し。
2009年の経済成長見通し(世界地図)
全般的に赤が濃いほど成長率が高く、緑が濃いほど成長率が低い。また、以下のグラフにも共通して言えることだが、これらはあくまでも「成長率」を表しているに過ぎない。カントリーリスク(例えばデフォルトの可能性)や経済規模そのものとは別問題であることに注意してほしい。例えば南アフリカのアンゴラにおける成長率は12.8%ときわめて高い値を占めているが、だからといってアメリカやヨーロッパ諸国などより経済規模が大きいわけではない(成長率の高さそのものは素晴らしいものがあるのもまた事実だが)。
カラーリングでぱっと見た印象では、南アメリカ・アフリカ・中央アジアに成長率の高い国が集まっていることが分かるだろうか。
続いてこれを先の10月11日にアメリカ・ワシントンで開催されたG20(主要20か国財務相・中央銀行総裁会議)の出席国のみ抽出し、2008年データと比較してみることにする。ちなみにG20はG8(主要国首脳会議、ロシア、カナダ、日本、フランス、アメリカ、ドイツ、イギリス、イタリア)(順不同、以下同)に、新興経済諸国12か国(中国、ナイジェリア、インド、インドネシア、イラン、ポーランド、韓国、ブラジル、南アフリカ、オーストラリア、メキシコ、スペイン)を加えたもの(【参考:G20ちば2008】)。
2009年の経済成長見通し(世界地図)
便宜上G8諸国とG8以外のG20諸国に区分し、その上で2009年の経済成長率の高い順に並べなおしてみたが、非常に特徴のあるグラフとなった。
これらの図・グラフから把握できることをまとめてみる。
・元々G8諸国は経済規模が大きいこともあり高い成長率は期待できないが、金融危機のダメージは大きく、ロシア以外のほとんどの国がゼロ前後の低成長にとどまっている。カナダが前年比プラスなのは奇跡に近い。
・G8以外のG20加盟国は、やはり経済規模がG8と比べると小さめなこともあるが、元々成長率が高いこともあり金融危機による影響はさほど大きくないように見える。
・それでもごく一部の国をのぞき、(G8以外の)G20諸国においても成長率の鈍化は否めない。
・G20加盟国の中でも、ポーランドやブラジル、スペインなど、G8との結びつきが大きい国は影響も大きく受けており、2009年による経済成長率の鈍化度が高くなっている。
繰り返しになるが、これらの図・グラフはあくまでも「経済成長率」の比較に過ぎない。デフォルトをはじめとした各種カントリーリスクや、経済規模は対象外となっている。
例えばアイスランドは金融立国として成長を続け、2004年以降7.7%・7.4%・4.4%・4.9%と高い成長率を誇っていた。ご存知の方も多いだろうが同国の利回りはきわめて高く、多くの投資信託に「高利回りでリスクが低めの国」としてもてはやされ、組み込まれていた。しかし2008年には0.3%と急速に比率を落とし、上記にあるように全金融機関の国有化がなされ(当然預金はブロックされ、全額補償は現在のところ明言されていない)、2009年においては-3.1%という値が予想されている。
また、世界的権威を持つIMFの予想ではあるが、あくまでも「予想」に過ぎず「確定事項」ではないことにも注意してほしい。これらの留意事項を気にせず、各種投資判断を行うのはあまり得策ではないといえよう。
投資判断云々はともかくとして、事実上アメリカ発の金融危機が世界経済に多大なる影響を与えていることや、各国が成長率を落としていること、新興国はそれでも高い成長率を見せている国が多いことが理解できるはず。
ちなみにIMFのデータでは2013年までの予測がなされている。日本は2009年以降やや回復するも、2012年以降再び下落傾向を見せている。G8諸国、特にアメリカに依存するところが大きいことや、内需活性化が果たされていないのが主原因だろう。
対外取引により富を得る経済スタイルを確立しているのは事実だが、最終的に国そのものを支えるのはその国に住む国民の活力に他ならない。「国破れて山河あり」ならぬ「国民疲弊して企業あり」では、結局企業そのものも体力をすり減らしてしまう。
低成長が続くと予想される状況においては、「自国民の、自国民による、自国民のための」足元をしっかりさせる政策が求められよう。
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