来訪者の検索用語から考える・「なぜガソリン価格は落ちてきたのか」
2008年10月15日 12:00
先日「9月24日分のデータ復帰はまだか※」とばかりにアクセス解析をしていたところ、気になるキーワードが目に留まった。いわく「ガソリン価格 下落 なぜ」というものだ。検索をした人は「先日まで大騒ぎしていたガソリン価格が、どうして少しずつながらも落ちてきたのか」が知りたかったのだろう。せっかくだから、ここで簡単にまとめてみることにする。
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●なぜガソリン価格が上昇したのか
「ガソリン価格下落の”なぜ”」を知るには、まず「”なぜ”ガソリン価格が上昇したか」を知る必要がある。これはひとえに、ガソリンを作る元となる原油が値上がりしたから。
原油価格決定の指標となりやすいNY原油(WTI)の直近半年間の動向。7月を天井に、少しずつ下落していることが分かる(【商品先物取引でおなじみのフジフューチャーズから】)
では、原油が値上がりした理由はなんだろうか。いくつかの理由が考えられるが、おおよそ次のような複数の理由が重なって大きく値上げしたと考えれば良いだろう。
・中国やインドなどの中興国の消費増大
・オリンピック需要
・生産国の政情不安定化による供給量減少
・サブプライムローン問題などで景気が怪しくなってきた株式市場から逃げた投資マネーが、商品先物市場に流れ込み、それらが先物先導で値を吊り上げた
特にここ一、二年の間の価格急騰は、一番最後の原因に寄るところが大きい。実際、2007年1月には50ドル前後だったのが、同年12月には100ドルにまで達しており、他の要因ではここまで急な値上がりはしない。
ただでさえハイレバレッジ(元金を担保に数倍もの資金を運用する方法)でふくらんだ投資(投機)マネーが、株式市場の数分の一の規模でしかない商品先物市場、特に原油に飛び込んだのだから、乱高下を繰り返しながら急上昇を続けるのも仕方の無いところ。上から三つ目までの理由も、投機マネーによる買い付け・価格上昇を裏付ける理由になるのだから始末が悪い(つまり「中国やインドの需要が伸びるらしい」「原油のニースが高まる、奪い合いになる」「値がつりあがるだろう」「ならば先手を打って先物を買っておけば儲かる」という理由付けが出来る)。
●なぜガソリン価格が下落したのか
「上昇理由」を考えれば、下落理由もおのずから分かるというもの。似たようなスタイルで並べていくと次のようになる。
・オリンピックの終結による特需打ち止め
・ガソリン価格高騰に対する買い控えで需給バランスが崩れた
・世界的な景気後退による節約志向の高まり。それに伴う(ガソリンも含めた)石油商品の消費量減少
・商品先物市場の規制強化
・商品先物を取り扱っているファンドなどへの契約解除や株式などの損失を穴埋めするために、現金が必要となったための換金化
値段が割高になれば消費量を抑えようというのは世の常。さらに当サイトでもいくつか記事に挙げているが、ガソリン価格が高騰したことで自動車の利用をひかえたり、自動車そのものを売り払ったり、燃費のよい車両に買い換えるなど、ガソリンの消費そのものが抑えられる傾向が強まった。一方でガソリン供給側は相変わらずの量を供給するので、値を引き下げざるを得なくなった次第(実際にはガソリンスタンドが値を決めるのではなく、元売が決めるのだが)。
また、先物市場で大暴れをし、原油価格をはじめとした商品相場を高騰させた投機マネーにも変化が訪れる。【原油価格の今後「下は40ドル上は150ドル」複雑に絡む要素が予想を困難に】でも指摘されているが、単にガソリン高だけでなく、景気そのものが悪化することでガソリン消費量が減少し、需給バランスが崩れていく。売り手が多くなれば、売り手側は値を下げてでも買い手の関心をひかねばならない。かくして石油・ガソリン価格は値を落としていく。
足元がゆらぎ手を引きはじめ
原油市場は正常な形に
戻りつつある
さらに原油価格の高騰のもっとも大きな要素だった、投機マネーを操るファンドにも変化が訪れる。商品先物でいくら儲けても、元々株式市場と比べれば市場規模は数分の一に過ぎないのだから利益は限定される。しかも株式市場をはじめとする金融商品市場はサブプライムローン問題やCDS問題で大混乱・大暴落におちいり、目も当てられない状態に。金主(契約者)からはファンドの解約と預入金の返還を求められ、運営側も泣く泣くポジションを整理して現金を作らねばならなくなった(先週起きた相次ぐ株価暴落もこれが主要因)。
相場観や損益を無視した売りが続けば、市場は段々と「投機マネーでふくらんだ部分」を縮小し、本来の生産側と消費側の需給にあった関係で値をつけるようになる。現在はその「本来の姿」に戻りつつあるわけだ。
先の「原油価格の今後「下は40ドル上は150ドル」~」の中では「だから2008年は原油価格は75ドル程度で落ち着くだろう」というブローカーのコメントが寄せられている。また同じ記事中でもふれているが、ある報道では「需給による純粋な原油価格は60ドル前後」という話も語られていた。先のフジフューチャーズのデータによると、10月10日時点で77ドル09セントをつけている。このままの価格で推移すれば、かのブローカーの予想はズバリ的中したことになる。
実際には事故や政治的要因による供給増減などもあり、今後原油価格は60~80ドルくらいのボックス圏で推移しながら、経済状態と連動する形で値を形成するだろう。経済悪化がさらに声高に叫ばれれば、そして実在のものとなれば、下抜けする可能性もある(経済悪化=石油商品の需要縮小=売り手は値を下げないと買ってもらえなくなる)。
それに伴いガソリン価格も少しずつではあるが値を下げるはず。しかし正直な話、企業によっては「値上げする時は即効で、値下げする時にはじわじわと、忘れた時にこっそりと、しかも少額で」という動きを見せるところもある。
もしそのような態度を取る企業を見つけたら、「注視」を続けると共に、各自の判断で「賢い消費者」となるような選択をするのが望まれよう。
(最終更新:2013/08/02)
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