「生保大手の保有株式含み益ゼロライン・グラフ化」を仕切り直してみる
2008年10月13日 12:00
先に【生保大手の保有株式の含み益ゼロラインをグラフ化してみる】で、昨今の株価低迷で色々と財務的に大変な事態となってきた生命保険会社大手の、保有株式の含み損益に関する考察とグラフ化を掲載した。その直後に読者の方から「もっと詳しい資料がある」との提示をいただき、グラフを再構築する機会を得ることが出来た([産経新聞の記事]など)。今回はその資料を基に、グラフ化を仕切り直すことにする。
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先日更生特例法の適用を申請し、経営破たんした大和(やまと)生命保険の破たん原因の一つは、保有株式の株価急落によるもの。生命保険各社は顧客から預かった保険料をいくつもの手段で運用しているが、その一つが株式。当然資産として各上場企業の株式を大量に保有している。株価が下がるということは株式の含み益が減り、それは生命保険会社の経営体力を削り取ることになる。
生命保険大手9社では3月末時点の「日経平均株価ががここまで下落したら手持ち資産(株式による)の含み益が無くなります」という額を提示している。実際には日経平均株価に連動するETF(上場投資信託)だけを買っているのではないので日経平均と正比例で上下するわけではなく、4月以降の売買状況で額の上下が起きている可能性もあるが、公開データではもっとも参考になる値といえる。
現時点では「含み益ゼロ」のラインが変わっている可能性もあるが、最新の公開データがこれらであるのも事実なので、これを元に図を作ることにする。9月以降の日経平均株価の動向と、生保大手の「損益ゼロライン」を重ね合わせたのが次の図。
2008年9月以降の日経平均株価推移と、生保大手の3月末時点の保有株式による損益ゼロのライン(10月10日時点)(クリックで拡大表示)
表記方法を幾分変えたこと、対象となる生保の数が増えていること、一部生保のデータが詳細化されていることなどの違いはあるが、根本的なところは前回のそれと変わらない。ただし今回の形式の方が、より「今後の事態」に迅速に・明確に対応できるはずだ。
念のために書き記しておくが、含み損が多いように見える(=図上で上のほうにある=含み益ゼロのラインが高い)からといって、即財務的に問題が発生している、リスクをかかえているとは断じ得ない。先日のグラフを挙げた直後にも聞かれたのだが、破たんした大和生命の直下にあるアリコでもソルベンジーマージン(比率保険金の支払い余力を表す値。200%を切ると行政から指導が入る)は913.3%と高い値を示している。
ただし昨今の株価急落で、このソルベンシーマージン比率が大幅に下落している可能性はある。件の大和生命の場合、3月末では555%だった値が9月末においては26.9%にまで急落している。今回の大和生命の件もあり、あるいは他の保険会社も「9月末」あるいは「最新の」含み益ゼロライン、ソルベンシーマージン比率の開示が求められる雰囲気がわきあがってくる可能性はある。むしろ逆に、(このような異常な株価の低迷状態であるからこそ)それらの開示を自発的に行うことが、顧客への安心感の提供につながるのかもしれない。
データ上で開示されている生保大手の「含み益ゼロライン」の最下層は日経平均株価が7400円。仮にそこまで到達することになれば、顧客を安心させるために、情報開示に関して新たな動きも出てくることだろう。
※図内表記を修正しました。ご指摘ありがとうございました
(最終更新:2013/08/02)
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