鳴らない、防犯ブザー
2008年10月10日 12:00
国民生活センターは10月9日、子ども向けの防犯ブザーにおいて、かなりの割合でささいな衝撃などで故障する商品があることを発表した。関連業界団体の推奨した「優良防犯ブザー」であるにも関わらず1度の衝撃でブザーが作動しなくなるものもあり、同センターでは業界・消費者・行政に注意と改善をうながしている(【発表リリース】)。
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今回調査対象となった防犯ブザー(原産国はすべて中国)
防犯ブザーは子どもに何かトラブルが発生した際に作動させ、大きな音で周囲の注意を集めると共に、子どもへの対抗者を驚かせる働きを持つ。ところが関連業界団体である全国防犯協会連合会が推奨しているブザーの中で8種類を選び、国民生活センター側で衝撃テスト(それぞれの種類につき10個ずつ。1メートルの高さから計6回、コンクリートの床の上に落下させる)をした上で作動チェックをしたところ、「最初の2回までで6種類に故障が発生」「全種類でブザーが小さくなった、ならなくなったなどの故障が発生」するという結果が出た。中には試験をした10個すべてで故障が発生した機種もあった。
試験対象ブザーにおける故障事例
故障の原因はコードの断線や部品の変形、部品のはがれなどによって生じた断線もしくは接触不良及び圧電ブザーのはがれによるものであったとのこと。さらに一部機種では同じ種類にも関わらず内部構造が異なるものも確認されている。
これらのブザーは学校やPTAなどが配布したり、自治体が配布・貸与しているものがほとんどだが、配布した市の8割以上で「故障の苦情」を受けた経験がある、としている。
配布された防犯ブザーの故障状況
これらのような状況(関連業界団体推薦の防犯ブザーであるにも関わらず耐久性に問題がある、実際に苦情が多数寄せられている)を受けて国民生活センターでは関係する人たちに対し、次のようなアドバイスをしている。
1.消費者に対して
・強い衝撃を与えるなど乱暴な扱いをしないように
・定期的に動作確認
2.業界に対して
・あまりにも柔すぎるので耐久性の改善を要望
・推奨規格そのものが甘いので改善を要望
3.行政に対して
・業界への「耐久性の改善」「推奨規格の改善」の指導を要望
つまり事実上「防犯ブザーの業界に対する厳しい指導」ということになる。
色々と物騒になった昨今において、子どもたち自身や保護者にとって、防犯ブザーは心と安心感のよりどころともいえる。市や学校から配布されたから安心だ、と思って肌身離さず携帯し、いざという時に鳴らないとなれば、信頼できるものは何もなくなってしまう(いわば自動車のエアバッグが、事故の時に作動しないようなものだ)。
今回の国民生活センターの試験は、特異な事例を想定したものではなく、「1メートルの高度からコンクリートの床に落とす」という、日常生活で使われうる防犯ブザーなら、十分ありえる状況のもの。その動作チェックにおいて、業界からのお墨付きをもらった商品がここまでの「成績」を上げた現実がある。これは国民生活センター側の姿勢にも見られるように、業界側に何らかの「気のたるみ」「甘え」「軽視感」があったと指摘されても否定はできまい。
子どもに安心感を与え、「大人は信頼できるもの」という期待感を撃ち砕くことのないよう、早急な対策を願いたいものだ。
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