今年倒産した上場企業をグラフ化してみる
2008年10月04日 12:00
10月2日にマンション開発・分譲を行う【エルクリエイト(3247)】が自己破産を申請すると共に上場廃止が決定した。これで上場企業の倒産(破産・民事再生・会社更生)は今年に入って20社目となる(【エー・エス・アイ(元アスキーソリューションズ)が民事再生法適用申請、負債総額9億1600万円】にもあるように、上場廃止後に倒産したエー・エス・アイを含めれば21社)。帝国データバンクによれば、この倒産社数は2002年の29社に続き、戦後2番目の多さとなるという。不動産関連市場の軟調さに加え、さまざまなマイナス要因が重なった不運があるとはいえ、少々常軌を逸しているように思えてならない。そこで今回はいくつかのグラフを作成し、現状を把握できるよう試みることにした。
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まずは今年に入ってから、10月3日時点の上場企業における倒産企業一覧。エー・エス・アイは上場廃止後なので取り入れておらず、合計で20社となる。
2008年における上場企業の倒産一覧(10月3日時点)
なお「不動産」には直接の不動産売買以外に不動産投資、不動産関連事業も含めてある。詳細に分類しても今件においてはあまり意味をなさないからである。
さて次に、セクター(業種)ごとに負債総額を累計し、負債総額全体に占める割合をグラフ化する。
2008年に倒産した上場企業の負債額区分
不動産だけで8割、建設も含めると9割近くが「不動産・建設」という不動産事業がらみの企業の倒産で生じていることになる。いかに今年の上場企業の破たんが、不動産業界と深い関係があるかが分かるだろう。
負債総額の上位10位を並べてみても、不動産業界の苦境が見て取れる。
2008年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)
上位10位中、7社が不動産、2社が建設。それ以外のセクターは6位のニイウス コー1社にしか過ぎない。
また、上場企業の倒産は今年後半にかけてペースを上げている。これは元々改正建築基準法絡みで審査が通りにくくなり新規建設物件の量が少なくなったことに加え、去年秋以降の資源高によるコストの高騰、さらには不景気による需要縮小で需給バランスが大きく崩れたこと、その上今年春先以降顕著になった金融信用収縮で資金の借り入れが難しくなったどころか貸しはがしを受ける企業が相次いでいることが要因として挙げられる。
2008年における上場企業倒産件数(10月3日現在)
特に9月後半は6件も相次いでリストに名を連ねるなど、半ば倒産ラッシュ状態となり、結果として「現在のところ」月間倒産件数では最多の7件を記録する事態におちいっている。
最後に「市場から失われた資金」を計算してみる。これは上場廃止告知日におけるその企業の株価に、その企業が発行している株式総数(ヤフーファイナンスから取得)をかけた、いわば「倒産告知時の時価総額」。倒産≒上場廃止となればその企業の株式の流動性はほとんどゼロとなるし、破産ならほぼ資産価値はゼロ、民事再生や会社更生でも上場廃止後に何らかの資産価値を得られる可能性は極めて低い(まれな例外として、上場廃止に清算された分配金が、上場廃止時の株価を上回る場合もある)。
そこでここでは、上場廃止告知日のその企業における時価総額を、株価がゼロ=時価総額がゼロになると仮定し、その資金が市場から失われてしまうと考え(少なくともそれに近い額がそれぞれの株主から失われるのは確かだ)、計算してみることにした。仮に倒産告知前に何らかの「気配」が感じられていれば、投資家はそれに気づき手持ちの株式を売り抜けようとするので、自然に時価総額も下がることになる。
2008年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)
プロデュースの「突然死」によるもの
不動産・建設セクターの割合が大きいのは当然なのだが、「その他」セクターの比率が異様に高い。これは先日【プロデュース(6263)、民事再生法適用申請・10月27日に上場廃止】でもお伝えした【プロデュース(6263)】に寄るところが大きい。株主が異変に気がつく、あるいは気がついても逃げ切る余裕なく倒産の告知がなされたため、株価が高い水準のまま破たんし、結果的に「時価総額」に大きく貢献することになってしまった。
ちなみにプロデュースの倒産告知当時の時価総額は160.7億円。負債総額ではトップのアーバンコーポレーションの140.8億円ですら上回る値である。プロデュースの事例がいかに異様であるかがあらためて理解できよう。
今年もあと3か月を切ったが、不動産業界をはじめとする景気・市場動向はますます厳しさを増している。国内要因だけでなく国外要因も大きくのしかかってくるから始末が悪い(先のバブル崩壊は大部分が国内要因によるところだった)。
残り3か月であと10社を積み増し、2002年の29社を超えて歴代最悪の事態に達する可能性はゼロとはいえない。特に体力の無い不動産関連企業に対しては、これからの動向を注意深く見守らねばならない。そして必要があれば今回の記事・データも更新することになるだろう。
出来うることなら年末に「あれからデータは更新されることもなく年を越すことができました」と「株式市場雑感」あたりでコメントできると嬉しいのだが。
(最終更新:2013/08/02)
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