電通9月度売上にみる広告売上の変化をグラフ化してみる
2008年10月08日 06:30
日本国内における広告代理店最大手の[電通(4324)]は10月8日、9月単月度の売上高を発表した。それによると全社売上は1307億9000万円となり、前年同月比で83.0%の値にとどまったことが明らかになった。既存四大メディアとされる新聞・雑誌・ラジオ・テレビいずれも-8~-15%ほどの規模縮小を見せる一方で、新メディア媒体の売上高が伸びるなど、「時代の流れ」を感じさせるデータとなっている(【発表リリース、PDF】)。
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9月単月度の売上高総計は1307億9000万円。テレビの売上がもっとも大きく533億6400万円を占め、テレビという媒体が(既存四大メディアの中でも)いかに大きなメディアであるか、そして多くの広告費を展開しているかが分かる。
電通・9月単月度売上高(億円)(既存四大メディアは赤で着色)
ちなみにいくつか解説を加えておくと、
・「テレビ」にはタイム広告とスポット広告の合計
・「OOHメディア」とは「Out of Homeメディア」のことで、交通広告や屋外広告などのこと
・「インタラクティブメディア」とはインターネットやモバイル関連メディアを意味する
・「クリエーティブ」とは制作部門によって考案、計画、制作された(独自)コンテンツのこと
・「その他」には衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツの業務を意味する
である。
9月単月となるが、全体に占める各項目の売上構成比を見ると、テレビだけで4割、既存四大メディアが合わせて6割近くを占めているのが把握できる。逆にいえば「6割しかない」とも表現できる。
電通・9月単月度売上高(全体に対する構成比)(既存四大メディアはチェック模様)
このデータを、同時に公開されている前年同月比で見ると、違った印象を受けることができる。
電通・9月単月度売上高(各項目ごと・前年同月比)
既存四大メディアがいずれも大きく前年からその値を減らしているのに対し、新メディアに属する「インタラクティブメディア」、そして旧態依然の立ち位置にあるが意外と新技術や斬新なコンセプトで努力を続けている「OOHメディア」などが健闘・躍進していることが分かる。【ネットやケータイ増やしてテレビや新聞、雑誌は削減・今年の広告費動向】をはじめ、これまでに何度となく「広告費の効率的な投入への意向や消費者のニーズの移り変わりへの対応から、広告費の投入先に変化が生じている」ことはお伝えしていたが、9月度はそれが特に現れたことになる。また、非常に気になるのが「その他」部門の縮小ぶり。前年同月比で半分以下の削減を見せている。
これらの傾向について過去半年ほど電通の月次報告に目を通してみたが、「四大メディアへの広告費の減り方」は9月ほどではなかったし、「その他部門」はむしろ横ばいの傾向にあった。10月・11月分以降のデータも合わせて検証する必要があるだろうが、
・9月に至り景気の急速な悪化、及びオリンピックの終了から企業が広告費を明確に削減するようになった。
・そのような中、より少ない予算でより効果的なレスポンスが期待できるインタラクティブメディア、手堅いOOHメディアなどに予算が多分に配分される傾向が見られる。
・オリンピックへの注力分がなくなったことに加え、優先順位が低いと見なされた「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツ」(≒「その他」項目)への広告予算が優先的にカットされた。
ものと思われる。
景気動向の変化はメディアのあり方の変革に、さらなる加速をもたらすかもしれない。電通の9月分売上高データからは、そんな雰囲気すら感じられるといえよう。
(最終更新:2013/08/02)
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