2008年8月の新設住宅戸数、前年同月比53.6%増

2008年10月01日 12:00

住宅イメージ国土交通省は9月30日、2008年8月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると8月の新設住宅着工戸数は前年の同月比で53.6%増の9万6905戸となり、2か月連続の増加を示したことが明らかになった。着工床面積も同じく2か月連続して増加しており、先月から続き景気のよい数字が発表されたことになる(【発表リリース、PDF】)。

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具体的な内訳は持家が35.6%、貸家は59.6%、分譲住宅は73.7%の「増加」。民間資金・公的資金双方の値が増加したため、全体として増加したというコメントが寄せられている。地域別ではすべての地域でプラスの値が出ており、先月やや出遅れていた中部圏でも45.7%増という大きな値が現れている。

改正建築基準法の施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が昨年夏以降の住宅市場における混乱と、新設住宅戸数の減少をもたらしている(俗にいう「官製不況」)のはいうまでもない。そして昨今ではむしろ資源高・賃金上昇、金融機関の貸し渋り・貸しはがし傾向の強化などの要因が強まると共に、主な購買層である消費者の消費性向のいちじるしい低下が住宅需要を押し下げ、業界全体に大きなプレッシャーとしてのしかかっている。その上、同業他社の破綻も、各不動産業者にとって(心理的、貸し倒れなど)少なからぬネガティブ要因となっているのは否定できない。

ただし今年の8月に前年同月比で比較される昨年8月は、昨年7月同様に改正建築基準法の施行直後で大幅に数字が下振れしていることもあり、その反動から「前年同月比」の値が大きく上に振れたように見えたものと推測される。

新設住宅戸数の変遷
新設住宅戸数の変遷(2008年8月分まで)

昨年8月~10月の大低迷から上昇傾向を継続していていた前年同月比割合だが、今年に入ってから一進一退の攻防……というより、前年同月比マイナス5%あたりを天井とし、上げては弾かれて下げ、また上げては下げを繰り返す状況が続いていた。今回発表分の2008年8月分は、昨月発表分同様に改正建築基準法の施行により大きく不動産・建設業が下向きを見せた2007年夏期からちょうど一か年が過ぎた月であり、反動を見せた感となっている。少なくとも「新築住宅戸数」においては、最悪期を脱する雰囲気が見られるということになる。

ただしこれはあくまでも「新築住宅戸数」であり、実際に売れた数ではない。需給の関係が(供給数は増えるばかりで需要側のニーズは縮小の一途をたどっている)大きく供給過多に傾いており、新築数そのものを抑える傾向が不動産業者に見受けられること、その不動産業者も在庫処分が出来ずに「倒れて」いくところが相次いでいる現状を見るに、油断は禁物。

さらに昨年同月比で大きくプラスを見せているが、その数も10万には達していない。改正建築基準法とは無縁だった2年前の8月分が11万件をゆうに超していたことを考えると、まだまだ全回復とは程遠い状態であることが分かる。

着工床面積概要(前年同月比45.7%増)も戸数同様に増加しており、全体では2か月連続の増加を見せた。先月の「情報通信業の708.9%増」ほどではないが、卸売業・小売業の114.5%増、不動産業の75.7%など、昨年同月と比べれば大きく値を伸ばしている用途区分もいくつか見受けられる。

耐震強度偽装問題を教訓にした
「改正建築基準法」の施行

・行政の不手際などで
新築戸数などが激減
・昨年夏で底打ちに見える。
・3月再び下落・失速感。

去年と比べれば幾分堅調に。
ただし一昨年との比はまだ弱いし
需給の問題も重くのしかかる。

国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【「最近の建築確認件数等の状況について」発表リリース】)。これによると今回発表された8月分データでは7.6%プラスとなり、7月分データの55.0%プラスからは上げ幅こそ縮小しているものの、いまだにプラスであるのが分かる。来月分の住宅着工も今月同様にプラスへの展開が期待できそうだ。

今回の8月分データは、先月7月同様に昨年夏の「どん底期」と比べれば現状はずいぶん改善されていることを見せるものといえる。しかし繰り返しになるが、これらはあくまでも「建築する住宅戸数」関連の数字に過ぎない。実際に各不動産企業はこれらの物件を完成させて買主に受領させ、代金を受け取らねばビジネスになりえない。

昨今の住宅の供給過多(要はだぶつき)状態を見るに、仮に来月以降も新築住宅戸数が堅調に推移しても、それらが「売れない」限りは、現場の企業たる不動産会社の不景気感は継続する。さらに昨今、とりわけ9月中旬以降の関連上場企業の倒産状況や、かの企業たちが流すリリースの文面の端々からは、金融機関によるし烈なまでの「貸しはがし」「貸し渋り」状況が見て取れる。需要側の財布のひもがゆるくなり、需給・価格共にバランスがとれたと確認されるまでは、各部門とも慎重な対応が求められよう。

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