金融資産1億円以上は90.3万世帯・254兆円……拡大する資産格差
2008年10月02日 08:00
野村総合研究所は10月1日、2007年における純金融資産保有額別のマーケット規模を推測すると共に、2025年までの相続マーケットの将来予想レポートを発表した。それによると2007年時点で金融資産を5億円以上保有する世帯「超富裕層」、及び1億円から5億円の世帯「富裕層」をあわせた「富裕層・超富裕層マーケット」は90.3万世帯、金融資産総額は254兆円に及ぶことが明らかになった。これは全体に占める割合としてはそれぞれ1.8%・21.6%に相当する。また10年前の1997年のデータと比較すると、富の集中化が進んでいる様子がうかがえる(【発表ページ】)。
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今調査結果では「預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命・年金保険などの純金融資産の保有額」を足し、負債を差し引いたものを「(純)金融資産」とし、この保有額で世帯を「超富裕層」「富裕層」「準富裕層」「アッパーマス層」「マス層」に分類。それぞれの構成世帯数と保有金融資産を推計した。それによると2007年の時点で「富裕層」と「超富裕層」をあわせたマーケットは90.3万世帯・254兆円に達していた。2005年の86.5万世帯・213兆円と比べるとかなりの上昇傾向が見られるが、これは「不動産価格の上昇」「株価の上昇」が大きく寄与したものと思われる。
さらにこれらの金融資産の多くを高齢者が保有していることから、今後人口構造の高齢化(【50年前16.5人、今3.5人・高齢化社会を表す一つの数値】参照)に伴い、それらの人たちが持つ資産の相続対象額・被相続人の数も右肩上がりで増加すると研究所側では見ている。さらにこれらの金融資産の少なからずの額が投資にまわされる可能性があるとし、マーケット側がそれを受け止めるだけの商品・サービスを開発提供する必要に迫られていると主張している点は興味深い。
今レポートでは2007年の金融資産の保有額別マーケット規模の推計だけでなく、1997年・2000年・2003年・2005年と、2~3年おきのそれぞれの推計データも併記されている。そのうち、2007年からちょうど10年前に相当する1997年のデータと、2007年のデータを比較するためにグラフ化したのが次の図。
金融資産と構成人口(1997年)
金融資産と構成人口(2007年)
上記二つのグラフを見ると、最多構成世帯数を占める「マス層」の世帯比率はこの10年間でさほど変化していないのに、保有金融資産総額の比率が大きく減っているのがひとめで見て分かる。
上記説明にもあるように、この10年間で株価や土地価格が上昇したこともあり、手持ちの金融資産の目分量が増えたのは事実。元々富裕層・超富裕層の金融資産の多くは土地や有価証券だから、それらの資産価値が増え、全体に占める割合が増加するのは道理ではある(ちなみに世帯数そのものの絶対数はすべての階層で増加している)。
多少ではあるがマス層の割合が減っていることから「全体的に見れば金融資産的に豊かな世帯が増えてきた」と見るべきなのか、世帯比率以上に金融資産比率のかたよりが大きくなってきたことから「資産格差が拡大した」と見るべきなのかは、判断に迷うところがある。少なくとも「マス層」が保有する金融資産の総額割合が、この10年間で9ポイント近く減ったことから「富の集中化が進んでいる」ことだけは確かだろう。
今後遺産相続が相次ぎ、金融資産の移動が進んだ場合、この構成がどのように変化していくのか。ますます富の集中化が進むのか、あるいは分散の傾向に流れるのか。現時点ではその流れを推測することは難しい(元レポートでは投資へ進むと予想しているが……)。市場や経済の動向とも深く関わる事象だけに、非常に気になるところではある。
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