「リーマン・ブラザーズショック」前後の相場展開を信用売方買方の状況からグラフ化してみる

2008年09月20日 19:30

株価急落イメージ9月15日に起きた、アメリカの証券銀行リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとした市場の大暴落と、その後に相次いで発表された対抗策による相場の持ち直し。直近の二週間は非常にダイナミックな値動きが市場で見受けられた。この乱高下に伴う個人投資家の動向を、【松井証券(8628)】が毎営業日に発表している信用取組などを元にグラフ化し、スポットライトを当ててみることにした(【メルマガ発行スタンド(まぐまぐ)】)。

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元々【リーマン・ブラザーズ社員の憂鬱……株価急落で失われた1兆円】にもあるように、破綻発表以前からリーマン・ブラザーズの経営状況への不信は高まり、株価は急落状態にあった。それと共に金融市場全体も軟調化を見せ、相場は下落の一途をたどり、マイナスのエネルギーを溜め込んでいる状況が続いていた。それが9月15日の破綻発表で弾けとび、9月16日・18日の大幅急落へとつながった。

「リーマン・ブラザーズショック」前後の日経平均株価動向
「リーマン・ブラザーズショック」前後の日経平均株価動向

松井証券では2002年7月17日約定分から、信用取引に関する残高や評価損益率などを当日公開している。今データは松井証券に口座を開き専用ツールで閲覧するか、誰でも無料で購読できるメールマガジン「松井証券マーケットプレゼンス」で確認できる(【サービス開始リリース、PDF】)。対象データは松井証券の顧客に関するもののみだが、各種信用取引に関する同社発表データは、相場全体の様相を確認するのには役立つ指標となる。そこでそのデータを元に、いくつかグラフを形成し、(主に信用取引をしている)個人投資家の動向を確認してみることにする。

「信用評価損益率」とは、個人投資家などが信用取引を使って株式を購入した場合における、その株式の含み損益を表す。要は「借金をして買った株の評価損益」。マイナスなら含み損、プラスなら含み益という具合。信用取引では一般に半年間で売り方(信用取引で株式を売っている人)も買い方(同じく買っている人)も取引を精算する必要があるため、損切りラインの設定も現物取引と比べるとシビアな場合が多く、通常はマイナス10%を超えると「損切り」、つまり損失確定売りが増えるといわれている。

「リーマン・ブラザーズショック」(以後「リーマンズ・ショック」と略)をはさんだ前後一週間において、信用売り方・買い方それぞれの残高と評価損益率をグラフ化したものは次の通りとなる。

信用残の変化
「リーマン・ブラザーズショック」をはさんだ前後一週間における信用残の変化
評価損益率の変化
「リーマン・ブラザーズショック」をはさんだ前後一週間における評価損益率の変化

これらのグラフを見ると次のような傾向が推測できる。

・「リーマンズ・ショック」で大きく値を下げた市場に対し、信用買い方の評価損は大きく増加している。特に9月16日当日は1日だけで評価損が5%近くも増加し、以後しばらくの間最悪の値「マイナス30%」にほぼ匹敵する水準を維持している。それに対し信用売り方の評価益は増加している(ごく当たり前の話)。
・信用買い方は9月12日の時点で大きく残高を減らしている。連休に向けて「何かマイナスの要素が出るのではないか」と懸念してポジションを整理したものと思われる。一方売り方は同じような期待をしたからか、ポジションを積み上げている。
・「リーマンズ・ショック」当日の場が引けた時点で、買い方、売り方共に残高が減少している。買い残りが減っているのは損切りによるものだろうが、売り方も大きくその値を減らしている。これはあまりにもの急落で翌日の反発を想定し、利益確定(買戻し)をしたものと思われる。
・相場が乱高下をしたのち、急回復を見せた19日において、ようやく信用買い方の評価損益の回復が見られる。しかし18日の時点で買い残り残高が増えているのにも関わらず、19日の時点で大きな減少が見られる。これはそれぞれ「18日……市場回復の期待から買い増し」「19日……週末を越えたポジション維持は危険と判断&中期的な保有はリスクが高いと見て、上昇した時点でポジションを整理」したものと思われる。
・同じく18~19日において売り方は評価損益がマイナスに転じているが、売り残り残高は急激な増加を見せている。これは買い方の思惑同様「週末に何かネガティブなニュースが起きて週明けの市場は大きな波乱を見せる」という期待からの行動と推定される。


信用取引の
売り方も買い方も
次週は先週同様に
ひと波乱があると予想?!

ダウ・ナスダックの2008年9月19日終値イメージ特に19日の時点で大きく株価が上昇したにも関わらず、「信用買い方は買い残りを減らし、売り方は積み増す」という状況は注目すべきものといえる。少なくとも信用売り方の投資家たちは、(その時点で評価損益がマイナスに転じてしまっても)今週後半の市場対策発表に伴う株価上昇が一時的なものであり、そう遠くないうちに……早ければ来週頭にも……大きなマイナス要素が発現し、再び大きな下落を見せると読んでいるフシがある。

また信用買い方の残高が減少しているのも、このまま株価がさらに上昇する=利益拡大を狙えるから今のポジションを維持する・買い増しするよりは、むしろ今週の上昇が一時的なものである可能性が高く、今のうちに「利益確定」や「損失が減った時点で撤収」しておいた方が安全だと判断した人が多かったと考えられる。

彼らの判断が正しかったのかどうかは、次週の相場展開で明らかになることだろう。……少なくとも19日の日本市場が引けたあとのアメリカ市場においては、状況改善のための手法が次々打ち出されたことを好感し大きく続伸している。日曜に何か特別なことが起きない限り、月曜の東京市場は続伸を見せることと思われる。


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(最終更新:2013/08/03)

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