国連気候担当者いわく「お前ら肉食うな」

2008年09月08日 19:40

食肉イメージ二酸化炭素削減や資源の節約などおおごとに見える「地球環境を守ること」「温室効果ガスを減らすこと」も、案外身近な行動から貢献できる。【BBC News】によると、国連などの専門機関が共同で設立した「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)の議長Rajendra Pachauri博士は「食肉の生産工程は、自動車などの移動機関よりも温暖化に与える影響が大きい」とコメントしている。言い換えれば「肉を食べる量を減らせば供給量も減るため生産量も減らせる。そうすれば自動車に乗る回数を減らすより、はるかに効率的に地球の温暖化を防ぐことができる」ということだ。

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国際連合食糧農業機関(FAO)によれば、世界の温室効果ガス(二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素)の実に18%が食肉生産の工程で生まれるとのこと。それを踏まえたうえで Pachauri博士は「肉食という食習慣へ注目してもらい、それを変化(ダイエット)させることこそが、地球温暖化防止策になりうるという事実を喧伝していきたい」とコメントしている。

ちなみにFAOが発表した「食肉生産過程で全温室効果ガスの18%」とは、牛や羊の肥料、農場の各種機器・輸送機器の燃料や排気ガス、畑を開拓するために切り崩された森林などのマイナス面すべてを含んでいる。一方で人間自身が「自動車などの移動機関などで」排出するガスは13%に過ぎないとIPCCは算出。そしてPachauri博士はこれらの数字を根拠に、「肉の消費量を減らせば食肉の生産量も減らせる。そうすれば温室効果ガスを効果的に減らせる」と主張している。

またイギリスの畜産動物保護団体CIWF(Compassion In World Farming)も「温暖化防止という視点は、非常に効果的に人々に、我々の主張を後押しするだけの効用がある」と述べている。いわく「人は地球温暖化のことを気にして、自動車旅行などを控える傾向がある。しかしもっと簡単に、肉食を減らすだけでそれと同等の、さらにはそれ以上の効果を望めると知ったら、どのような判断をするだろうか」とのこと。

・自動車などの輸送機関で
生じる温室効果ガス……全体の13%
・食肉の生産工程全体で
生じる温室効果ガス……全体の18%

食肉生産においてはすでに「肉食を減らそう」という消費量減少のアプローチ以外に、もさまざまな方面から、温室効果ガス削減の手立てが試みられている。例えば牛の遺伝子操作を行い、メタンガス発生の少ない牛を作り出したり、食べさせる草を色々と変えてみて牧畜からのメタンガス発生が少なくなるように工夫するなど、だ。イギリスでは1990年以来、これらの工夫によって、農場からのメタンガス放出量は13%も減っている。

しかし一方で食肉の需要が高まっているために行われる農地の開墾、特に熱帯雨林地域の開拓は温室効果ガスの増大に大きく寄与してしまっている。中には「政府が率先して肉の生産量と消費量を減らすガイドラインを設定し、温室効果ガスの削減に寄与すると共に、食料が不足している地域にもっと食料がいきわたるような施策をとるべきである」と主張するグループもあるほど。

食肉イメージPachauri博士は次のようにも述べている。「自分にそんな権限などないが、例えば食肉に二酸化炭素税(カーボンオフセット的なもの)を導入してはどうだろうかと思う。当然食肉の価格は上がるだろうし、結果として人々は肉を今までよりは食べなくなるだろう」「しかし仮にそのルールを律儀に人々が守っていけば、食肉の消費量は減っていき、健康にもプラスとなる。そして同様に温室効果ガスを減らすことも可能になるに違いない」と。

「二酸化炭素税」の設定などは別にしても、「肉食の軽減」が自身のダイエットと共に温室効果ガスの削減、しいては地球環境の保全に貢献することとなるというのは面白い話。「風が吹けば桶屋が儲かる」の話のごとく、めぐりめぐって効果が発揮するという、典型的な事例といえよう。

「排気ガスを吐き出す自動車の利用を控える」のように、直接的な効果が見えてこないので今ひとつ焦点がぶれているようにも思えるが、理論としては納得がいくものといえる。今後「地球と身体に優しいダイエット」と銘打ち、肉食を抑えるような食生活を心がけるスタイルの、ダイエット方式が流行るかもしれない。

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