スクエニがテクモに対しコーエーとの経営統合案について「株主利益の面」から問い合わせ

2008年09月05日 06:30

株式イメージ【スクウェア・エニックス(9684)】は9月4日、先に同社が【テクモ(9650)】に対して提案した友好的な公開買い付けへの条件提示についてテクモ側が賛同しない旨を表明すると共に、【コーエー(9654)】との間で経営統合に向けた協議を開始したことについて、各種問い合わせをしていることを明らかにした。スクエニ側ではテクモ側から回答が得られ次第、対応方針を決定する予定(【発表リリース、PDF】)。

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テクモに関する直近の情勢について箇条書きにすると次の通りとなる。

・開発チームの板垣伴信氏離脱に伴う内紛。
・相次ぐ自社株買いで株価急騰(【テクモがものすごい勢いで自社株買いをしている件について】)。
・板垣氏との騒動の報道に対し意見表明(【テクモ、昨今の報道・提訴に見解を発表】)。その後株価も軟調に。
・紛争の当事者の一人とされていた安田善巳元代表取締役社長が代表取締役社長及び取締役を辞任(8月20日)。株価急落。
・スクエニがテクモに対し友好的公開買い付けの提案(【スクエニ、テクモに対し子会社化を前提とした友好的公開買い付け提案】)。回答タイムリミットは9月4日。
・テクモ、スクエニからの提案を断る。コーエーとテクモとの間で経営統合に向けた特別委員会設置を正式発表(【コーエーとテクモ、経営統合に向けた経営統合委員会設置を正式発表】)。
・スクエニ、テクモの決定に対し「株主利益」に反していないかどうかの確認。←今ここ



今回、スクエニ側がテクモに対して照会をしている事項は次の通り。

・テクモの取締役会が本案への賛同をしなかった理由は、コーエーとの経営統合に向けた協議を決定したためかどうか、ご教示いただきたい。
・もし、そうだとした場合、コーエーとの経営統合の条件(統合の態様、統合の前提となる株価、統合比率等)が本案よりもテクモ株主にとって有利であることを具体的にご教示いただきたい。
・もし、そうでない場合、本案よりもテクモ株主にとって有利である代替案を具体的にご教示いただきたい。

なおテクモ・コーエーから発表された経営統合委員会設置に関するリリースなどでは、合併統合の具体的な手法(株式交換によるものか否か)や統合比率については、一、二か月の間に同委員会で決定する予定であるとしている。よって、スクエニが求めている回答の一つ「スクエニ提示案よりテクモ・コーエー経営統合案が、テクモ株主にとって有利であるか否か」において、具体的な統合比率をテクモ側が即答するのは事実上不可能ということになる。また、経営方針や今後の展開戦略の点で、スクエニ提示案よりテクモ・コーエー経営統合案が、明らかに「テクモ株主にとって」有利であることを「客観的視点から」説明することも難しい。


スクエニ側ではこれらの回答が「得られ次第」、同社としての対応方針を決定する予定だとしている。

スクエニの案も、10月の同社における新体制化(スクウェア・エニックス・ホールディングスの新設と持ち株会社化)にあわせて慌てて提示した感が否めない(特に買い取り価格920円の設定の面で)。しかし今回発表されたリリース文面の端々からは半ば「何でうちの好条件を拒否するのか、信じられない」的なニュアンスが見て取れる。仮にテクモ側がテクモ株主にとって有利であることを合理的に説明することが出来なければ、スクエニ側が次なるステップ(例えば敵対的買収)に移行する可能性も否定できない。

現時点ではスクエニが
敵対的買収に移行する可能性は
低いものと思われる。
ただし100%否定は出来ない

ただし日本では敵対的買収は市場全体、そして各株主から敬遠され、あまり馴染まない傾向がある。浮動株数も10.1%と低めで、大株主へのアプローチをしている余裕もないだろう。また、企業そのものの版権と共に、内部スタッフがその企業の財産価値として高い傾向があるゲーム業界では、敵対的買収がもたらすデメリットは相当なものがあると思われる。さらに前述したようにスクエニ自身も10月の新体制移行に向けて色々と忙しい時期であり、多数派工作をしている余裕はないものと思われる。今回の問い合わせはあくまでも、アプローチをしたスクエニ側の意地のようなもので、さらなるアクションを取る可能性は低いものと見てよいだろう。

……仮に本当に敵対的買収に乗り出すとしたら、それはそれで非常に興味深いものがあるのだが。

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