年金や医療、「負担増でサポート維持」「負担そのままでサポート減」どっちを選ぶ?

2008年09月04日 12:00

ジェネレーションギャップイメージ内閣府は9月3日、「社会保障制度に関する特別世論調査」の概要を発表した。それによると社会保障の支払いの水準について、「現状維持のためには負担増加はやむをえない」と考えている人は、「水準が下がっても負担は維持、または負担減を」と考えている人よりわずかに多いことが明らかになった。しかし同時に「分からない」と答える人も1割強に達しており、「負担と給付」のバランス関係について多くの人が判断を決めかねている様子がうかがえる(【発表リリース、PDF】)。

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今調査は7月24日から8月3日、調査員による個別面接聴取方式を用い、有効回答数は1822人。年齢構成比・男女比などの構成データ詳細は現時点では未公開。

年金や医療制度などの社会保障について、現状をそのまま維持することは財政上困難とされている(高齢化で受け取る人、サポートを受ける人が増えて、支払う人の総数が減るため)。そこで、「社会保障の負担」と「給付」のバランスについて、今後どうすべきかを尋ねた結果が次のグラフ。

社会保障の給付と負担のバランスについて
社会保障の給付と負担のバランスについて

注意して欲しいのは、すでに現状で「負担もそのまま、サポートや給付もそのまま」という選択肢は存在していないこと。「現状維持」ですら「負担増」が前提となっており、「負担」と「給付」を両天秤にかけて、どちら一つを選ばねばならない状況といえる。続々発覚する社会保険庁の無駄使いなど「いくら負担を増やしても無駄な使い方ばかりしてるから、無意味じゃないか」という意見も理解できるが、今件においてはそれを「脇に置いておき」、その上で考えたもの。

結果を見る限り、「負担がある程度増えるのは仕方が無い」とする負担容認・賛成派が10ポイント近く多く、多数を占めているようにも見える。しかし「分からない」とする意見が15.9%存在しているのも注目に値する。これは例えば「どれだけの金額負担増となれば現状維持ができるのか」といった具体的な事例が提示されていないがため、「判断が出来ない」人が多いものと思われる。一言でまとめれば全体意見としては「現状維持のためには負担を増やしても仕方が無い。でもどれだけの負担増で済むのか教えて欲しい」というあたりだろうか。

一方、社会保障問題、特に年金問題でクローズアップされることが多いのが、「世代間のギャップ(ジェネレーションギャップ)」。現行の年金制度では若年層が「払い損」になる可能性が高く、しかもその損の割合は若いほど増えてくる。「社会の助け合い制度というけれど、今の年金給付者は得をしている。でも俺らは損をすることが分かっている。なのになぜ、払わねばならないのか」という疑問や不満が沸いて来るのは当然といえる。

そこで社会保障制度(年金や医療、介護だが、主に年金だろう)における高齢者と現役世代(若年層)の負担のあり方、要は「現在の払い手と受け取り手」の負担のあり方について尋ねたのが次のグラフ。

社会保障制度における高齢者と現役世代の負担のあり方
社会保障制度における高齢者と現役世代の負担のあり方

「高齢者と現役世代の双方の負担増はやむをえない」とする50.8%の意見を中心に、「高齢者の負担を増やすべきである」「現役世代の負担増を」の意見に二分されている。相対する世代の負担の有無を考慮せずに考えると、

現役世代の負担増はやむをえない……78.0%
高齢者の負担増はやむをえない……59.6%


であり、20ポイント近く「現役世代の負担増はやむをえない」と考えている人が多いことが分かる。


今回の調査結果だけを見ると「社会保障制度については、負担が少々増えても現状維持かそれ以上が望ましい、とする人がやや多め」「現役世代にもっと負担してもらおう、と考えている人がどちらかといえば多数」ということになる。もっと単純化すれば「若年層に負担を増やして(全体の)社会保障制度を維持しよう。高齢者への負担増はその後で」という表現になるのだろうか。

注意して欲しいのは、今回の調査が速報レベルのもので、回答者の年齢階層比及び各設問の年齢階層別のデータが用意されていないこと。この類の設問では、回答者の年齢によって(主に払う側と受け取る側)大きな違いが生じることが容易に想像される。例えば、これから年金を受け取る人が「受給額を維持するためには現役世代の負担を増やすべきだ」と考えるのは当然のこと。

よって今結果はあくまでも「概要から算出された、暫定的な総意の近似値」程度とみるべきだろう。

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