ニート・フリーター問題対応策は「自助努力」が最多意見、無職は「わらにもすがりたい思い」
2008年09月03日 19:40
野村総合研究所は9月1日、若年層の生活意識に関するアンケート調査の結果を発表した。それによるといわゆる「ニート・フリーター」問題への具体的な対処法について、「本人自身の努力が重要である」とする回答がもっとも多くを占めていることが明らかになった。一方でニート・フリーターに近い、あるいは自身がその立場にある職種にいる人たちは公的機関の働きかけにも大いに期待しており、特に無職の人はあらゆる手立てを講じるべきであると考えていることがうかがい知れる(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は8月2日から3日にかけてインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。男女比は1対1で、年齢階層比は20代・30代で均等割り当て。
ニートやフリーターの増加傾向に関する問題については先に同一資料を基にした【ニート・フリーター問題は社会のせい? 自分のせい? 立場で異なる責任所在への意見】にもあるように、「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」など自分自身がニートやフリーターに近い、あるいはそれ自身である者の方が強い意識を持っている。
それでは問題視した人(878人)に対し、どんな対処法をとるべきなのか複数回答で尋ねたところ、一番多かったのは「本人自身の努力が重要である」で、全体では6割強を占めていた。
ニート・フリーター増加問題への対処法(複数回答)
全体では「本人自身の努力が重要である」が一番、次いで「公的機関が経済界に正社員雇用拡大の働きがけをすべき」「経済団体が傘下企業に正社員雇用拡大の働きがけを強化すべき」など、公的機関や経済団体からの支援を求める声が多い。
これを回答者の職種別に区分したのが次の図……なのだが。
ニート・フリーター増加問題への対処法(複数回答)(職種区分)
細かすぎて「分かりやすくするための図式」の意味がない。そこで先の記事でもデータ上から明らかな区分が出来た、「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」と、「常勤正社員」「自営業等」それぞれに分けて各データを抽出してグラフ化する。
ニート・フリーター増加問題への対処法(複数回答)(「常勤正社員」「自営業等」)
ニート・フリーター増加問題への対処法(複数回答)(「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」)
先の記事同様に、半ば以上傍観者である自営業や正社員は「自己責任」と考える割合が高い。一方で当事者、あるいは当事者予備群の「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」も自己責任論はそれなりであるものの、公的機関や経済団体の支援を強く求めていることが分かる。特に「無職」の場合はほぼすべての項目で強い思いを持ち、特に自分の努力よりも他所からの支援に期待する気持ちが強いことが分かる。
最後に、今回のグラフの元表データを次に示す。
ニート・フリーター増加問題への対処法
50%以上の項目を赤、40%以上を黄色で塗りつぶしてみた。この表と、これまでの図から「ニート・フリーター増加問題」への対処法に関し、推測できることは次の通り。
・「本人自身の努力が重要」は皆の総意。特に正社員・自営業者に強い。また、無職以外の予備群、あるいは自身の人も、それは強く認識している。
・自分自身がニートやフリーターに近い、あるいはそれ自身である「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」は、自助努力と共に公的・経済団体などの支援を強く望んでいる。
・「無職」に限るとむしろ「他人に頼る」傾向が強い。
・コミュニティ形成、学校などの就職「支援」はあまり期待されていない。
・企業に対する「状況改善」が強く望まれている。
先の記事「ニート・フリーター問題は社会のせい? 自分のせい? 立場で異なる責任所在への意見」ほど職種上の立ち位置による差異は見られなかったものの、やはり「自助努力」の点では「他人事か自分事か」により意見の差が見受けられる。一方この項目でも「無職」の立ち位置の人が必至になって今現在の立場から脱しようという意図を持っていることが分かるだろうか。
今後、ニート・フリーター問題を少しでも改善していくためには、特に予備群足りうる「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」の人たちが持つ対処法への思いを注視しながら、方策を手がけていく必要があるのだろう。
やや余談になるが、気になることを一つ。「自助努力」以外で強く望まれている項目は、いずれも「企業に対する正社員雇用拡大の強化」。呼びかけが公的機関であるか経済団体であるかの違いに過ぎない。これらの項目に「指導を与えられる立場からの指導」に大きな期待が寄せられているということは、逆に考えれば現時点で「正社員雇用に関し企業に強い不信感が生じている」ことを意味する。それぞれの企業にもそれなりの理由があるのだろうが、現状では多くの人が正論とは見なしていないようだ。
社会の多様化や環境問題への関心の高まりから、現在は企業の「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」が問われ、それに基づいた「社会的責任投資(SRI:Socially responsible investment)」に注目が集まる時代でもある。環境やボランティアへの貢献に流されがちだが、「国内における」雇用の確保も立派なCSR活動の一つといえるのではないだろうか。
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(最終更新:2013/08/03)
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