ニート・フリーター問題は社会のせい? 自分のせい? 立場で異なる責任所在への意見

2008年09月03日 19:40

フリーターイメージ野村総合研究所は9月1日、若年層の生活意識に関するアンケート調査の結果を発表した。それによるといわゆる「ニート・フリーター」問題への対処法について、自らの立場によって大きく意見が異なることが明らかになった。世間一般には「社会問題として公的機関や企業が積極的に携わるべき問題」として認識されているが、実際には個々の属性によって考え方が多少なりともことなっていることが分かる(【発表リリース、PDF】)。

スポンサードリンク

今調査は8月2日から3日にかけてインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。男女比は1対1で、年齢階層比は20代・30代で均等割り当て。

まずは「ニート・フリーター」の定義について。【都内の「引きこもり」最低でも2万5000人、女性も29%……「ひきこもり」調査結果を読んで(1)】【フリーター・ニートは減少中、ただし年長フリーターは……労働経済白書から】にもあるように、

・「ニート」
……「NEET(ニート、Not in Employment, Education or Training)」の日本語読みで、直訳すると「就業、就学、 職業訓練のいずれもしていない人」。内閣府の定義によれば「高校や大学などの学校及び予備校・専修学校などに通学しておらず、配偶者のいない独身者であり、ふだん収入を伴う仕事をしていない15歳以上 34歳以下の個人」。

・「フリーター」
……パートやアルバイトとして働いている15歳から34歳。厳密には「パートかアルバイトとして勤めていて、男性ならば5年未満、女性ならば未婚」「無職で家事も通学もせず、アルバイトやパートを希望している」「卒業者」


である。一部社会問題化している「年長フリーター」は該当しないので注意が必要。

さて、今調査結果のうち「ニート・フリーターの増加に対する味方と対処法」の結果項目の中から、「ニート・フリーターが増加することによって生じうる問題」を除き、「増加の責はどこに・だれにあるのか」に絞ってグラフ化したのが次の図。

ニート・フリーターの増加について、その原因・対処(複数回答)
ニート・フリーターの増加について、その原因・対処(複数回答)

「全体では」社会責任であるとする意見が多く、特に企業側の責を求める意見が目立つ。自己責任によるところも個々の意見としては同意数がそれなりにあるものの、一つ一つを見れば社会責任にはかなわない。世間一般のイメージとしてもこのようなものだろう。

さてこれを、回答者側の現在の職種的立ち位置で区分し、それぞれの意見を積み重ね式のグラフにしたのが次の図。複数回答であるため、個々の職種で全体が長ければ長いほど(回答率は高く)、責任の矛先はともかく問題意識が高いことを意味する。

ニート・フリーターの増加について、その原因・対処(複数回答)
ニート・フリーターの増加について、その原因・対処(複数回答)

このように職種別に区分して見ると、「派遣・契約・嘱託社員」「アルバイト・パート」「無職」など、ニートやフリーターに該当する、あるいは該当する可能性がある人たちほど「ニート・フリーターの増加」への問題意識が高いことが分かる。当事者であればもちろん、それに近しい人にとっても「身近な問題」であるから当然といえば当然。

また、「自営業」の割合も高いが、これは自営業の中にはニート・フリーターと区分がしにくい職種があることや、正社員などと比べるとニートやフリーターとなる可能性が高いことから、「対岸の火事ではない」ことを意識している結果だと思われる。逆に言えば「正社員」「学生」「専業主婦」にとっては、ニート・フリーター問題は切羽詰った問題と認識されていない可能性もありうる。

ただしこの図では、どの項目にどの職種区分が強い意識を持っているのかが分かりにくい。そこで社会責任と自己責任に区分し、それぞれをグラフ化する。まずは社会責任のみ。

ニート・フリーターの増加について、その原因・対処(複数回答)(社会責任)
ニート・フリーターの増加について、その原因・対処(複数回答)(社会責任)

正社員を増やさない企業に責があるという意見は全般的に高く、特に派遣や無職の人に多い。ただし「社会全体の問題であり個人の労働意欲の問題ではない」とする意見はほぼ二分され、先のグラフで「ニート・フリーター足りうる」とした3職種の割合が高い一方で、他の職種は低いことが分かる。特に自営業では23.3%と、派遣などの47.9%の半数ほどしかなく、自ら職を立てている自営業者から見れば「ニート・フリーターの責任は個々の労働意欲にも問題があるのではないか」とする考えがあることがうかがえる。

一方、自己責任のみでまとめてみると、やや違った結果が見えてくる。

ニート・フリーターの増加について、その原因・対処(複数回答)(自己責任)
ニート・フリーターの増加について、その原因・対処(複数回答)(自己責任)

先の「社会責任」のところで厳しい意見がかいまみれた自営業の意見が高めなのが分かる。やはり「自ら努力して自営している人」にとって、ニート・フリーターは甘えに見える部分があるのだろうか。しかしその一方、先の「社会責任」で声高に意見をしていた3業種も、自営業に負けず劣らずに「自分たちの責任」を強く感じていることが分かる。

特に「無職」のポジションにいる人は(自らもニート・フリーターである可能性が高いからか)「ニート・フリーター増加問題」に対して自己責任を強く感じているのが良く分かる。


今回の調査結果のグラフ化からは、ニート・フリーター問題に対して「由々しき問題である」という認識では世間一般論としてほぼ一致しているものの、

・「正社員を増やさない企業姿勢が問題」は全般的な意見
・「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」と他の職種区分との間には、問題意識に大きな差異が見られる
・「正規雇用者」「学生」「主婦」などは、問題意識が薄め
・「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」は社会責任を強く感じる一方、自己責任への思いも強いものがある
・特に「無職」は自己責任への思いが大きい


などの傾向を見つけることができる。

ニートやフリーター問題には、正社員などの間から「個人の労働意欲に問題があるのでは?」という意見も少なからず見受けられる。実際には個々の事例によって理由はさまざまでひとくくりにまとめることはできないのだが、そういう局面も否定はできまい。

とはいえ「派遣・契約社員など」「無職」「アルバイト・パート」など、ニートやフリーターと隣り合わせ、あるいはその区分に当てはまる当本人たちも、社会責任(とそれに伴ういきどおり)を強く感じつつ、同時に自己責任をも心に抱き、両挟みの状態にあることが分かる。

「ニート・フリーターの増加」を問題だと自認している当本人ならば、その問題な状態から脱するために、そして自分の心の中の「自己責任」のもやもやを断ち切るために、自ら努力を重ねるべきだろう。そして社会(企業や公的機関、そして近隣の人たち)は彼らの努力を無にしないような、手助けの道しるべを用意する必要がある。それこそが「社会責任」を果たすことに他ならないのだから。


(最終更新:2013/08/03)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ