満足な人はより満足に、そうでない人はより不満を……若年層に広がる意識格差とその増幅

2008年09月02日 06:30

格差意識イメージ野村総合研究所は9月1日、若年層の生活意識に関するアンケート調査の結果を発表した。それによると若年層の間には「生活の満足度」について現在・将来の観点で意識格差が存在している可能性が高いことが明らかになった。また、年齢階層別では歳を経るごとに悲観的な意見が多くなり、年齢によっても意識の違いが見受けられるようである(【発表リリース】)。

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今調査は8月2日から3日にかけてインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。男女比は1対1で、年齢階層比は20代・30代で均等割り当て。

現時点における生活満足度は「十分」が8.1%、「まあ満足」が49.7%、「あまり満足していない」32.1%、「まったく満足していない」10.1%で、属性別に見ると「無職」において「不満足」の割合が大きい以外はそれほど大きな違いはない。

それでは現在の生活満足度によって、「将来の見通し」はどれほど変わるのか。それを調べた結果が次のグラフ。

現在の生活満足度から見た将来見通し
現在の生活満足度から見た将来見通し

全体ではやや好感派が多いが、現時点での満足度別に区分すると「今生活に満足している人は将来もっと満足できるようになる」と考え、「今不満足な人は将来もっと状況が悪化するようになる」と思っている人が多いことが分かる。気持ちの問題も多分にあるが、現状の経済状態や見通しなどを見据えた上での回答であることを考えると、元リリースでも指摘されている「意識格差の存在」だけでなく、今後「意識格差の拡大」が生じることも懸念される。

また、年齢階層別に見ると、若年層ほど先行きを明るく見ていることが分かる。

年齢階層度別の将来見通し
年齢階層度別の将来見通し

これらの意見は例えば「年収●●●万円」のような絶対的な評価基準ではなく、「自分の現在の立ち位置から見て将来はどうか」という相対的な評価基準で尋ねている。現在の立ち位置が比較的悪い場所にあれば、将来はそこから上に向かえる領域が(現在良い立ち位置にある人より)広いはずであり、明るい見通しを持てるという考え方もある。しかし、今調査では「現時点で悪い人は将来『もっと』悪くなる」と考えている人が多数であり、俗にいう「ネガティブスパイラル」におちいっていることが分かる。

現状が満足な人はより満足に
不満な人はより不満足な状態に

また年齢階層別では高年齢ほど収入も高く満足度・将来感もよくなるように思えるが、調査結果ではまったく逆の結果が出ている。これはある程度手取りが増えても、「なんとかできる・する」時間が経年と共に減っていくことからだと思われる。

先日発売された『週刊ダイヤモンド8月30日号』では「下流の子は下流? 格差世襲」とのタイトルのもとに、格差意識・格差実態の継承と、それによる格差そのものの拡大が語られており、一部で話題に登っていた。今調査を見ると、同一世代間においても意識的・実態的な格差の時間経過による格差拡大の可能性が見えてくる。

生まれや成長過程、それぞれの個性や能力、考え方などは別個のものであり、それを差し置いて完全に公平な状態は、逆に不公平足りうる。まさに「すべてが完全に公平な世界は地獄でしかない」という言葉通りといえる(ロールプレイングゲームに例えれば、体力勝負な人や魔術に長けた人など多種多様なパラメーターを持つパーティーメンバーすべての職種を、無理やり「戦士」にしてしまうようなものだ)。ある程度の「違い」は必要不可欠といえる。

しかし過度の格差意識は一方の区分に属する者に大きなストレスをもたらすことになる。個々の努力や意識改革は欠かせないが、一方で社会全体が「理不尽な不公平感」を減らすよう、努めねばならないのも事実だろう。


(最終更新:2013/09/06)

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