「政府のお金でリーマンを助けるべき!?」アメリカ人も8割が「ノー」
2008年09月14日 12:00
先に【リーマン・ブラザーズ社員の憂鬱……株価急落で失われた1兆円】でも触れたように、経営危機におちいったアメリカ第4位の証券銀行リーマン・ブラザーズの命運は、この数日中にある程度の回答が出る可能性が出てきた。現時点でもアメリカ政府の財務関係者や、大手金融機関が走り回り、協議を続けているとの話が続々と、「噂話」として報じられている。アメリカ政府系住宅金融機関(GSE)のファニーメイとフレディマックのように公的資金を投入すべきとの意見もあるが、世間一般の目は非常に厳しく、事実上の「ノー」を突きつけた形だ(【CNBC.com】)。
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CNBC上のアンケート。「公的資金は使うべきではない」とする意見が8割を占めている
元記事のCNBCではリーマン・ブラザーズへの政府の具体的な資金介入についてアンケートを行っている。世間一般よりは多少なりとも経済への見地がある人が読むことが多い、経済コーナーの記事上のアンケートにおいても、8割の人が「するべきではない」と答えている。
現在のところリーマン・ブラザーズは三つほどに分割され、それぞれが異なる金融機関に売却される可能性が高いと伝えられている。具体的には投資銀行部門、投資運用部門、不動産部門である。噂が噂を呼び、事態は流動的な状況を継続しているため、「もしリーマン・ブラザーズの株式に手を触れようものなら、決定事項が公開されるまではジェットコースターに乗っているようなものだ」と表現する人すらいるほど。
ロンドンを基点とする同業他社のHSBCに買収されればリーマンの独自性と名前そのものは維持されるだろう、と踏んでいるのがリーマン・ブラザーズの経営陣の読み。もしその読みが外れても、バンクオブアメリカならまだマシだと考えている。彼らにとってあまり好ましくないのは、イギリスのバークレー銀行や、投資ファンドのJCフラワーズと中国系政府ファンド「中国投資有限責任公司」による共同出資による買収だ。
仮にバンクオブアメリカによる買収が成れば、「リーマン」の名前は消えてしまうかもしれないが、リーマン・ブラザーズとしての独立性はある程度保てることが期待できる。しかしイギリスを拠点とするバークレー銀行の手にかかければ、その期待はまったくできない。刻み込まれ、リーマン・ブラザーズは「かつて一時期存在していた金融機関」としてのみ、歴史に名前を残すことになるだろう。
現時点で、3月にベア・スターンズがJPモルガンに買収された時に政府が資金面での後押しをしたような「政府の後ろ盾」について、ポールソン財務長官は「そのような手段に使う金はない(公的資金は注入しない)」と言及したという話が伝えられている。
リーマン・ブラザーズにはどのくらいの価値があるのか、そして「買い手」がどれほどの魅力を見出せるのか。同社が持つ不動産証券や各種不動産にどれだけの価値があるかで大きな意見の食い違いが出ている。同社ではこれについて「400億ドルもの価値がある」と述べている。しかし直近の同社の株価は3.65ドルで、これを元にした時価総額(つまり不動産だけでなく投資銀行・投資運用部門を全部ひっくるめて)はわずか25.3億ドルに過ぎない。市場はリーマン・ブラザーズが所有している不動産関連の資産を「ほとんどあてにならない」と判断しているわけだ。
先日までにリーマン・ブラザーズは韓国の政府系金融機関KDB(韓国産業銀行)との間で資金調達のための交渉を続けていたが、これに失敗。三菱UFJFGが増資引き受けを検討しているとの報道もあったが、こちらも立ち消えになったまま。
リーマン・ブラザーズほどの大きな規模の金融機関に大きな動きがあれば、市場に少なからぬ影響を与えることは間違いない。同社の大株主が痛い目にあうのはもちろんだが、「次はどこだ」とばかりに市場不安がますます広まり、金融株が投売りされるからだ。これらの点を考慮し「与える影響が大きすぎるので、政府の支持を含め、あらゆる救済策を試みるべきだ」とする意見も根強い。しかし「自業自得」「自己責任」の声はそれをはるかに上回っており、公的支援を受けられる可能性は低そうだ。あとはいかにリーマン自身がうまく立ちまわり、そして幸運をつかめるかに、自らの命運がかかっていると見て良いだろう。
ちなみに類似例として、今年3月にJPモルガンがベアー・スターンズの買収を行った際には、当初1株2ドルとされていたベアー・スターンズ株の買取価格が10ドルまで引き上げられたという事例がある。リーマン・ブラザーズが仮に買収されることにでもなれば、これと似たような事例を期待する人もいるだろう。しかしベアー・スターンズの際には政府からのさまざまな支援が得られていたという裏づけがあったがためであり、今回ではそれは期待できないことにも注意しておく必要がある。
ともあれ、ここ一週間前後のうちに、リーマン・ブラザーズに大きな転機が訪れることは間違いないだろう。仮にもし何もなければ、事態はさらに悪化するだけなのだから。
(最終更新:2013/08/03)
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