銀行からの貸し渋り・貸しはがし、不動産売買業では45%に達する
2008年09月04日 08:00
帝国データバンクは9月3日、銀行などの金融機関による貸し渋り(融資条件のハードルを高めて融資が受けられにくい状況にする)や貸しはがし(現在貸している資金を、借り手の意に反して返却させる)に関する調査結果を発表した。それによると、2008年に入ってから貸し渋り・貸しはがしにあった経験のある企業は全体で7.8%に達することが明らかになった。特に建設・不動産業の割合は高く、不動産売買業では44.3%と、ほぼ2社に1社が貸し渋り・貸しはがしにあった経験があると答えている(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は8月20日から31日までの間、全国の企業に大して行われたもので有効回答企業数は1万0751社。
2008年度に入ってからの貸し渋り・貸しはがし経験のある企業は全体では7.8%と、約13社に1社が受けたことがあると回答している。経験のある企業を業界別に見ると、やはり不動産・建設業界が上位を占めているのがわかる。
貸し渋り・貸しはがし経験のある企業の属する業界(上位5位)
さらに、一番貸し渋り・貸しはがし率の高い不動産業について、その細部業態別に区分して見たところ、大きな金額が動くことが多い「売買」の率がずば抜けて高く、半数近い44.3%を占めていた。
貸し渋り・貸しはがし経験のある区分詳細(不動産業)
不動産売買業では大きな金額が一度に動くため、どうしても多額の資金の借り入れが必要になる。少しでも売買のプロセスが遅れると、機械仕掛けの時計で歯車の一部が止まったのと同じ状況になり、全体の動きが停止してしまう。それだけに、物件の需要が低迷している昨今では銀行などの金融機関側が躊躇(ちゅうちょ)してしまう状況も理解できなくはない。
しかし当の貸し渋り・貸しはがしを受けた側からすれば「たまったものではない」「そんな話は聞いていない」というのが本音だろう。何しろ銀行からの借り入れによる「輸血」を前提としたビジネスモデルで経営をしているのに、その輸血が止められてしまうのだから。
案の定、貸し渋り・貸しはがしを受けた企業の多くは、経営を圧迫していると答えている。
貸し渋り・貸しはがし上位5業態の、経営への影響
不動産業界の14.7%は
危機的状況に陥っている
これだけを見ると、不動産業界が大変なのは事実だが、他の業界とさほど変わりはないように見える。しかし圧迫の度合いでは「金融」が「多少経営を圧迫している」が63.6%に達しているのに対し、「不動産」では「危機的状況」が14.7%・「かなり経営を圧迫している」が42.6%と、圧迫度が極めて高いことが見て取れる。
貸し渋り・貸しはがしの経営への影響(不動産業、項目細分化)
繰り返しになるが、金融と不動産とでは金額は同じでも、業態の特性上貸し渋り・貸しはがしされたときの影響は不動産の方が極めて大きい。その実体が「危機的状況……14.7%」に現れているといえる。
大手不動産・建設業者の破綻後に相次いで金融機関から発表される債権の回収に関するリリースを見ると、特に不動産・建設業に対する、金融機関側のリスク軽減のための貸し渋り・貸しはがしも仕方ない面があるようにも見える。しかし発表リリース内でも「業界全体で引締められている」「公的金融機関までも建設業界に対する与信が大変厳しく、新規融資に応じてもらえない」など、企業自身の業績以前に所属している業界で貸し渋り・貸しはがしを判断されるとの話がある。
「輸血が必要な患者に『このままだと助からない”かも”しれないから』とばかりに、輸血用血液がもったいないからという考えで輸血を止めてしまう」行為が正しいものかどうか。考え直す必要はあるに違いない。
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