甘みが砂糖の300倍・低カロリー天然甘味成分「グリチルリチン」大量生産への道が開ける

2008年09月10日 08:00

医学イメージ理化学研究所は9月9日、甘味料として使われる「グリチルリチン」を作り出す鍵となる酵素遺伝子「CYP88D6」の同定(特定すること)に成功したことを発表した。グリチルリチンを抽出するのに使われるカンゾウ(甘草)の品種改良や、他の植物・酵母から甘味成分生成の可能性も期待できるとして、注目を集めている(【発表リリース】)。

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カンゾウ(甘草)植物(左)と、生薬として使われる甘草根・それをきざんだもの(右)
カンゾウ(甘草)植物(左)と、生薬として使われる甘草根・それをきざんだもの(右)

マメ科の多年草であるカンゾウ(甘草)はその地下に生える根や茎の部分を甘草根と呼び、そこから抽出されるカンゾウエキスの主成分「グリチルリチン」は砂糖の150~300倍もの甘さを持つ。逆算すると砂糖の150~300分の1の量で同じ甘さを見出せるため、低カロリーの天然甘味料として人気が高い。最近では肝機能補強機能や抗ウイルス作用などの薬理効果から、医療品原料としても大きな人気を集めている。世界市場の甘草根の年間輸出額は4200万ドル。今後メタボリックシンドローム対策・予防や、がん予防食品としてますますの市場拡大が見込まれる。

ところが栽培されたカンゾウではグリチルリチンの蓄積量が低く、高まるニーズに対応しきれずに野生のカンゾウが乱獲されているのが現状。そこで理化学研究所ではグリチルリチンについての研究を進めていたところ、グリチルリチンを作り出す鍵となる酵素遺伝子が「CYP88D6」なるものであることを特定。さらにこの遺伝子から作り出されたものが、植物の二次代謝産物の生合成で重要な働きをするチトクロームP450と呼ぶ一群の酸化酵素の1つであることも突き止めた。

グリチルリチン周りの遺伝子情報が特定できたことで、今後栽培に適した(たくさんのグリチルリチンを抽出できる)カンゾウの品種改良、栽培条件の最適化に関する研究が可能となり、乱獲に歯止めがかけられる可能性が出てきたことになる。さらにこの酵素遺伝子情報を元に、他の植物や酵母を用いて、天然甘味成分の工業生産化も期待されている。

要は「低カロリー天然甘味成分のグリチルリチンを量産化できるかもしれない遺伝子情報の特定に成功した。今後研究を進めることで、原材料のカンゾウの乱獲を防ぎつつ、たくさんの量を取れるようになる(=価格低下や普及率向上)可能性が見出せた」ということ。今後の研究成果に期待したいところだ。

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