ゴールドマン・サックス、総計1兆円強の増資へ
2008年09月25日 08:00
ゴールドマン・サックスは9月24日までに、総計で100億ドル(1兆円強)の増資を行うと発表した。またそのうち50億ドルについては著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いる投資会社【バークシャー・ハサウェイ(BERKSHIRE HATHAWAY)】が引き受けることも明らかにしている(【バークシャー分リリース】、【公募分リリース】)。
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今回ゴールドマン・サックスが資本増強を行ったのは、業態を証券銀行から一般銀行に変更したため。証券銀行より一般銀行の方が財務基盤に関する規制(いわゆるBIS規制)がキツいなど、今までより強固な財務状態を構築する必要があった。今回の増資もそのためのもので、具体的な増資内容は次の通り。
●対バークシャー・ハサウェイ……50億ドル(5250億円)
・配当利回り10%の優先株
・ゴールドマン側が10%のプレミアム付で買い戻せる権利を有する
・1株あたり115ドルで50億ドル分の普通株式を購入できる権利(新株予約権・ワラント。期限5年)付
●対一般株主……50億ドル(5250億円)
・当初は25億ドル分だったが倍増。
・1株123ドルで4065万株を発行。
・需要があれば610万株を追加発行。
今回の増資の直接の起因は上記に挙げたようにゴールドマン・サックス側の財務基盤強化のためのもの。しかし実にさまざまな意味を持っている。まずかつての証券銀行トップの座についていたゴールドマン・サックスですら1兆円規模の増資が必要であるという、金融市場の現状をまざまざと見せ付けられたこと。業態の変更やBIS規制との絡みもあるが、市場における事態の切迫感を再認識させられる。
そしてオマハの賢者ことウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)が大規模な救済に応じたことも注目に値する。1割の確定利益をゴールドマン側から保証された利回り10%の優先株というとてつもない有利な条件ではあるが、あのバフェット氏が増資に応じたことは、氏が「資金の投入に値する」と判断した相手・タイミングであったことを意味する。バフェット氏は過去にも保険会社のガイコや投資銀行のソロモン・ブラザーズなど似たような事例において大規模な「手助け」を行い、救済に成功している。これはゴールドマン自身はもちろん、市場全体に大きな安堵感を与える効果がある(同時に「これほどの好条件をつけないとバフェット氏ですら腰を上げなかったのか」という厳しい現状の再認識にもつながるが)。
・「バフェット氏出動」のインパクト
・「バフェットプレミア」を利用した
一般公募というGS側のしたたかさ
最後に、バフェット氏への優先株発行と同時にゴールドマン・サックスが(最終的に)同額の50億ドルにも及ぶ公募増資を行ったしたたかさにも着目すべき。先のバフェット氏の事例では、ガイコ救済の際に大きな助力となったソロモン・ブラザーズの資金助力は、「バフェット氏が投資していた」というプレミアによるところが大きい。つまり今回の一般公募においてゴールドマン・サックスの株式を手に入れた人は「バフェット氏と同じ日に同じ選択をしてこの株を購入した」という、目に見えないプレミアを得ることができるわけである。ゴールドマン側もこれを考えに入れた上で、バフェット氏が増資を引き受けるようあらゆる好条件を提示したのだろう。
先に【ゴールドマン・モルガンの一般銀行入りで大きく変動する米銀行序列】で記事にしたが、アメリカ国内では第4位の「一般銀行」に生まれ変わったゴールドマン・サックス。証券銀行時代のしたたかさも継承されている状況を見る限り、今後の荒波にも耐え、生き残ることはできるだろう。
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