この1年でアメリカが失ったもの
2008年09月18日 12:00
先日のリーマン・ブラザーズの破綻やAIGの事実上の国有化などに見られるように、昨年夏以降継続している金融信用不信・市場低迷は、多くの企業に多大なダメージを与えている。中には市場からの退場を余儀なくされたり、同業他社に買収されたりしているところも数多く見受けられる。金融系上場企業の場合は特に、株価の低迷で時価総額(株式発行数×株価、要はその会社の「市場評価」)が大きく落ち込んでいるのが容易に理解できるはず。先日NewYorkTimesに登場したのは、それがひとめで分かる仕組みの図だ。題名は【A Year of Heavy Losses(アメリカにおける一年間の巨大な損失)】。
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2007年10月9日時点の主要金融企業の時価総額
ページを開くと登場するのは、2007年10月9日時点のアメリカの主要金融系29企業の時価総額を、その大きさに比例した四角形で表した図。色はその企業の業種を表していて、左から「投資銀行や委託売買業務企業(茶色がかったオレンジ色)」「国立商業銀行(薄い水色)」「金融サービス企業(薄いオレンジ)」「地方商業銀行(こげ茶色)」「資産管理投資会社(紫)」。当時は全部で1兆8600億ドル(186兆円)の時価総額を有していた。
実際の絵ではカーソルを合わせるとその企業の2007年10月9日と2008年9月12日時点の時価総額、時価総額の減少比率、そして何が起こったのかを概略的に説明する文章が表示される。ここでは日本でもよく知られている企業の名前を上書きしてみた。2007年8月17日の急落からまだ間もないがため、多くの金融系企業がぶいぶい言わせている様子が分かる。
次にほぼ一年後、2008年9月12日時点の株価を元に算出された、29社の時価総額の図を見てみることにする。画面左のボックスの上側にカーソルを合わせてクリック。
2008年9月12日時点の主要金融企業の時価総額
にょろーんとそれぞれの企業の四角形が入れ替わり、新しい長方形を形成する。まずはじめに気がつくのがその小ささ。先の四角形と比べると半分程度にしか過ぎない。それもそのはず。全体の時価総額は9800億ドル(98兆円)に激減しているのだから。あるいはこれが「本当の姿」で、1年前はバブル的な姿かたちだったのかもしれない。
また、ぱっと見で色の配置が随分と変わっているのも分かるはず。これは29社の中でも時価総額の減少割合に差があり、大きく株価を下げたところは時価総額も下がり、結果として左下から右上に向けて場所を移動してしまったからだ。
時価総額は株価に連動するが、株価はその企業の業績を100%反映するわけではない。噂や思惑、投資家の投資心理、はやりすたりなどでも大きく変動する。そのため、時価総額がそのままその企業のすう勢を完全に表現しているとは限らない。とはいえ、市場がこのような判断を下しているのもまた事実。
二つの図から個別の企業の推移を見ると、意外に健闘している会社、大きく時価総額を落としてしまった会社などがある程度つかめてくる。また、投資銀行系・金融サービス系企業が大きな下落を見せている(左側から右側へ移動)しているのが分かる。
来年の今頃、再びこの図が描かれた時、各企業の勢力図、そして全体の四角形の大きさはどのような姿を見せてくれるだろうか。何かと気になるところだ。
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