コンビニ深夜規制論争、理由は「エコ」かそれとも「エゴ」か

2008年08月30日 12:00

討論イメージgooリサーチは8月29日、読売新聞社との共同調査企画として、コンビニエンスストアに関する調査の結果を発表した。それによるとコンビニの深夜営業規制について、全体では賛成する人は29%だったのに対し、反対する人はそれを上回る42%であることが明らかになった。また、年齢階層別に見ると、利用頻度の高い若年層から中堅層ほど規制反対の意向が強い一方、壮齢層では「若者の溜まり場になるから反対」とする意見も多く見受けられている。地球環境への問題云々よりは、コンビニに対するジェネレーションギャップこそが、コンビニ深夜規制論争の「隠れた中心」であることが再確認できるデータといえよう(【発表リリース】)。

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今調査は7月末にインターネット経由で13歳以上の男女に対して行われ、有効回答数は1056人。年齢階層比、男女比などは非公開。

一部地方で論議されている、原油高騰をきっかけにした「省エネ」や「周囲環境の改善」などを理由とする深夜のコンビニ営業規制制度の導入について、賛成か反対かを尋ねたところ、全体では42%が反対を示している。

深夜コンビニ営業の規制に対して賛成・反対どちらか
深夜コンビニ営業の規制に対して賛成・反対どちらか

30代までは反対派が過半数を示しているが、それ以降は次第に減少。50代になると賛成・反対の票数が逆転し、60代にもなると半数近くが反対するようになる。年齢を経るにつれて反対派が増える状況は、別の調査機関による結果(【コンビニの深夜営業規制、高齢者ほど賛成の意向・利用の多い若年層ほど反対多し】)でも導き出されており、この傾向が不偏的なものであることが分かる。

先の調査ではデータを提示できずに「若年層はコンビニを良く使う」という一般論で説明したが、それをデータ的に裏づけしたのが今項目。年齢層別のコンビニの深夜時間帯の利用状況について。

コンビニの深夜時間帯の利用状況
コンビニの深夜時間帯の利用状況

10代より20代・30代の方が利用頻度が高いという結果も興味深い。職種別階層分けがされていないのが残念だが、恐らくは学生以上に若年サラリーマン・サラリーウーマン(しかも未婚の場合が多数)、そして体力を使うため必然的に若年層が多くなる夜間営業の仕事の人が、深夜コンビニを重宝しているのだろう。

一方で年齢を経るにつれて利用率は低下し、むしろ「利用できるコンビニはあるが、深夜に利用はしていない」という人の割合が増えてくる。60歳以上になると8割が「利用しない」と回答するほど。

この時点で「若年層:利用する頻度が多い=深夜営業規制に反対」「壮齢層:利用する頻度が少ない=深夜営業規制に賛成」という構造が明確に把握できる。

先の【コンビニ深夜営業規制を前提とした「市民会議」開催に反発・業界団体が出席拒否と営業継続を明らかに】にもあるように、規制を検討している地方自治体や「市民団体」の大義名分は「深夜に明かりをつけているとエネルギーの無駄」で、それゆえにコンビニの深夜営業を規制するというのが主張するところ。一方で規制反対派は「不便」「防犯」「省エネ効果が疑わしい」などをその理由に挙げていると聞く。今調査ではどうだろうか。まず規制反対派の意見を見てみる。

コンビニ深夜営業規制に反対する理由は
コンビニ深夜営業規制に反対する理由は

利用者が多い反対派にとって、やはり一番の理由は「買い物ができなくなると不便になる」というもの。次いで防犯の役割、そしてさらに「省エネ効果への疑問符」が挙げられている。防犯効果の程や省エネ効果への疑問はコンビニ業界側も主張しており、【深夜営業自粛の動きは「シンボル的なもの」で実益はあまりナシ!? コンビニ団体が反対を表明】などでも取り上げているが、具体的な検証をした上で規制反対の旗を掲げている。

一方、深夜営業規制賛成派について、年齢階層別で見てみると、全体的に「エコ」が前面に押し出されているのと共に、壮齢層で「若者らのたまり場になることが防げる」「コンビニ強盗などの事件を防げる」など、「エコ」とは別の次元の理由を大いに掲げていることが分かる。

コンビニ深夜営業規制に賛成する理由は
コンビニ深夜営業規制に賛成する理由は

また、30代以降は「生活習慣の見直しに役立つ」の意見が増えているのも傾向の一つ。「若者のたまり場云々」と根ざすところは同じといえる。

もっとも「コンビニ強盗云々」の選択肢は多少間が抜けている感もある。深夜営業だからという事由もあるだろうが、「事件が起きる可能性があるから規制しろ」というのならATMや自動販売機そのものの撤去も検討しなければならなくなる。言い換えれば「自動車を使った犯罪が多発しているから自動車の使用を自粛しろ」といった主張と大して変わらない。

やはり賛成派意見の肝は、壮齢層において「若者らのたまり場になることが防げる」が大きく票を伸ばしていることだろう。特に40代においては、「エコロジー」の観点を上回る数字をはじき出している。


コンビニの深夜営業規制への賛成派・反対派の特徴をまとめると次のようになる。

深夜営業規制賛成派
・40代以上の壮齢層が多数
・自らの(深夜)コンビニ利用率は低い→規制されても自分に影響は無い
・省エネにプラスとなると考えている
・夜間の生活活動には反対。特に若者が集まるのは勘弁ならない

深夜営業規制反対派
・10代~30代の若年・中堅層
・自らの(深夜)コンビニ利用率は高い→規制されたら大いに影響がある
・大義名分の「省エネ」には懐疑的
・深夜営業で防犯効果などが期待できる


「コンビニの深夜営業規制、高齢者ほど賛成の意向・利用の多い若年層ほど反対多し」でも結論付けているが、このように箇条書きにすると、30代~40代の境界線で二分されるジェネレーションギャップ(世代間のへただり)でそれぞれ自分たちの利害関係から、コンビニの深夜営業規制への賛否を語っているのがよく分かる。

昨今においてコンビニの深夜営業規制が声高に叫ばれるようになったのは、ひとえに原油高による電気量・燃料費の高騰と、二酸化炭素排出量や電力消費などの「エコロジー・地球環境保全」問題がクローズアップされるようになったため。しかし規制賛成派における御旗ともいえる「エコロジー」も、いざフタを開けてみると「見た目はそうかもしれないが実際のところ本当にエコロジーとなるかどうかは分からないし、効果がないとする反証をくつがえすものは無い」という状況にあり、むしろ各年齢層毎の「エゴイズム」が隠されていることが分かる。

このような「エゴイズムの代理戦争」状態が続いている限り、コンビニの深夜営業規制問題で、多くの人が納得の行く結論が出ることはない。まずは本当に「省エネ」になるのかどうか、メリット・デメリットを詳細に検証した上で、論議を交わすべきだろう。


(最終更新:2013/08/03)

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