【更新】自家用車よりも効率的・建機世界もハイブリッド車両の時代に
2008年08月26日 06:30
先に【ハイブリッド自動車の知名度、ナンバーワンはやはり●●●●】で、もっとも知名度の高いハイブリッド自家用自動車は[トヨタ自動車(7203)]のプリウスだという話を取り上げた。そう遠くない将来、建機(建設機械)では【コマツ(6301)】の社名そのものがそれと同じ立ち位置につくかもしれない。同社では5月13日、一般販売用としては世界初となる、建機のハイブリッド油圧ショベル「PC200-8 ハイブリッド」の発売を発表しているからだ(【発表リリース】[トリガー記事:読売新聞])。
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PC200-8ハイブリッド
「ハイブリッド」とは言葉通り、複数(ハイブリッド)のエンジンを動力として走る自動車などの仕組みを指す。通常ではガソリン・ディーゼルエンジンのみだが、ハイブリッド自動車は(現行ではそのほとんどが)ガソリン・ディーゼルエンジンと電気モーターの組み合わせで走る。ブレーキをかける時などの運動エネルギーを電気に替え、その電気をバッテリーに充電。通常走行時にはモーターを動かしエンジンを補助する仕組み。
ガソリン・ディーゼルの消費量を節約できるが、構造が多様化する(ガソリンなどの燃焼タイプのエンジン以外にバッテリーやモーターなどが必要)ため、本体価格が割高になるというデメリットがある。ただし建機の場合は自動車ほどサイズを気にしなくても良いため、「小型化のための苦労」はさほど必要ない。
コマツが発売を開始した「PC200-8 ハイブリッド」の場合(コマツ・ハイブリッド・システムと命名されている)、車体旋廻(せんかい)の減速時に発生するエネルギーを電気エネルギーに変換(要は減速時のブレーキをモーターに連動させて回転、電気エネルギーを生み出す)、キャパシタータイプの蓄電器に蓄える。この電気を発電機モーターを通じて、掘削など力を大きく使うためにエンジンを加速する時の補助エネルギーとして活用する。本来ブレーキをかけるために失われるだけだった運動エネルギーを電気エネルギーに替え、別の機会に再利用するという「エネルギーの貯金と引きおろし」ができるわけだ。
コマツ・ハイブリッド・システム
この「コマツ・ハイブリッド・システム」を導入することで燃料消費量は市場平均試算(PC200-8の通常機比)で約25%削減できたとのこと。さらに実際に利用した上で計測したところ、旋廻が多い(=エネルギーの蓄電・蓄電器への充電機会が多い)作業現場では最大で41%もの燃料低減が認められたという(※つまりそれと同じ比率の二酸化炭素削減にもつながる)。
燃料消費量の削減率。汚泥処理では一か所にとどまって何度も泥をすくい上げ、トラックなどに載せる必要があるため、旋廻機会が多くなる。そのため、燃料低減率も高くなる。
なお「コマツ・ハイブリッド・システム」の蓄電器は、通常のハイブリッド自動車のそれとは仕様が異なる「キャパシター」タイプのものが用いられている。ハイブリッド自動車の場合は「発進加速の時に大きなエネルギーを使う」「通常走行はエンジンは安定回転」なため、蓄電している電気を使う・エンジン回転の変動機会はさほど多くない。そのため化学反応を伴うごく普通のタイプのバッテリーが用いられるが、放電・充電に時間を要することになる。
一方建機の場合は短時間で頻繁にエンジン回転の変動が生じるため、自動車と同じバッテリーでは充電も放電も間に合わない。そこで「コマツ・ハイブリッド・システム」などの建機の場合は、キャパシタ(別称:コンデンサ)と呼ばれる「化学反応を用いずにそのまま電気を充放電できる」蓄電器が用いられる。これならば、急な動きの多い建機にも対応できる。
価格は2700万円。通常モデルのPC-200-8N1が1670万円のため、6割強ほど高めになる。ただし自動車の利用スタイルと異なり、ハイブリッドとしての燃料効率が高いため、「元が採れる」までの時間は結構短いだろう(トリガー記事では約5年という試算が出ている)。
独特の使用方法が行われ、自家用自動車よりもハイブリッドの仕組みを効率よく使える建機に対しては、コマツ以外にも大手が開発に取り組んでいる。【日立建機(6305)】は6月から受注生産タイプを、【住友重機工業(6302)】も年内には発売するという([日経新聞より])。
利用者がわざわざ特別な動きをせずとも、通常の使用方法で「節約できる」仕組みこそが、多くの人に受け入れられるものとなる。ハイブリッドの仕組みはまさにこれに相当する。また、今まで無駄に捨てられていたエネルギーを貯めて再利用する仕組みは、「もったいない」の精神を貫いているともいえよう。初期投資が多少高くなるのが難点だが、建機の世界で大いに広まることを期待したい。
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