イギリスが予算不足で引き取り困難のユーロファイター戦闘機、日本などに「代わりに購入して」と打診
2008年08月21日 08:00
イギリスのフィナンシャルタイムズ紙は8月19日、イギリスの国防省が発注したものの財政上の問題から引取りが難しい状況になった新鋭戦闘機ユーロファイター「タイフーン」(Eurofighter Typhoon)88機について、日本やサウジアラビア、インドなどに「代わりに購入をしてほしい」と打診していることを明らかにした(【該当記事】)。
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ユーロファイター
タイフーン(ユーロファイター)は西側ヨーロッパ諸国などで共同開発された新型戦闘機で、一応航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の候補にも挙がっている機体。イギリス空軍では現在トーネードF3型戦闘機を主力戦闘機として用いているが、これに差し替えられる形で2006年3月から逐次装備変換が行なわれている。先の2007年8月にはロシアの長距離戦略爆撃機が偵察行動としてイギリス領空付近を通過した際、初の「非訓練上の出動」が行われている(【ロシア戦略爆撃機の長距離偵察に英ユーロファイター戦闘機が初スクランブル発進】)。
元記事によればすでにイギリス国防省では20億ポンド(4000億円)の規模の赤字を抱えており、受領した144機のユーロファイターに加え、発注済の88機の購入を行うのは非常に難しいと判断。しかしこれを断ると、多額のキャンセル料を取られるため「機体は受領できず出費も増える」という二重損な状態におちいる。そこで国防省側では「この購入権を代わりに引き取ってくれないか」と各国に打診しているという。現状ではこの提案に興味を示している国の中に、日本・サウジアラビア・インドが含まれている。
このうちサウジアラビア・インド両国ともすでにユーロファイターの購入経験を有しており(【サウジアラビア、ユーロファイター戦闘機72機をまもなく受領】)、運用上の問題はないものと思われる。特にサウジアラビアでは政府筋の話として、(今件とは別に)追加で48機から72機の購入を検討し、関係当局者間で会談を進めているという話もある。
今件について国防省側は「たとえそのような交渉が事実であったとしても、コメントは差し控えさせていただく」とし、否定も肯定もしない態度を貫いている。
なお、元記事では今年に入ってからのイギリス国防省と財務上の苦境を伝える報道の一覧が掲載されているが、そのタイトルを斜め読みすると「空母竣工が遅れるかもしれない(参照:【イギリス海軍の新型空母、2隻で8000億円ナリ】)」「イラクとアフガニスタンへの派兵でぼう大なコストがかかっている」「戦闘車両と重砲整備の予算確保のため、駆逐艦2隻の新造を断念」「予算不足のため60%の戦力が緊急展開に支障をきたす可能性」など、まさに「軍隊の最大の敵は自国予算」という言葉が当てはまる話が相次いでいる。
さて、日本の「ユーロファイターお買い上げ」の可能性だが、興味を持つのはタダなのでまったく支障はなく、ライセンス問題も【三菱重工業が欧州の主力戦闘機ユーロファイター・タイフーンの生産ライセンスで交渉中との報道】にあるように、いざとなればどうにかなるレベルのもの。ただし、イギリス側が(購入権のキャンセルをどうにかしたいのが事実だとすれば)比較的速やかな決断を求めていること、今後のメンテナンスや現行他機種との迎合性、装備の互換・適応性などを考えると、すでに導入しているインドやサウジアラビアと比べて「引き受けの可能性」は低いものと思われる。
恐らくはイギリスから見れば日本はインドやサウジに対する当て馬、日本から見ればイギリスのユーロファイターはF-35やF-22などに対する当て馬として、両者とも納得した上で「駆け引き」が行われることだろう。
(最終更新:2013/08/03)
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