大気汚染を解決するかもしれないコンクリート敷石、日本の技術で開発・オランダで実験開始

2008年08月20日 12:00

コンクリート敷石イメージオランダのトウェンテ大学は8月8日、オランダ東部にあるHengeloの道路に「排気ガスに含まれる汚染物質を無害な物質に変える」仕組みを持つコンクリートの敷石「空気清浄敷石」を設置し、その効果を推し量る実験をはじめたと発表した。来年の夏までにデータを取得し、その効果のほどを確認したいとしている(【発表リリース】)。

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この敷石は、日本の企業が開発した技術をベースに作り上げた、二酸化チタンによる添加物を含む特別性のもの。二酸化チタンは日光に照らされると、排気ガスの中に含まれる有害物質で酸性雨・スモッグの原因とされている「酸化窒素」の粒子と結合し、無害な「硝酸塩」に変換する働きを持っている。そしてその硝酸塩自身は、雨で洗い流れてしまう。

「空気清浄敷石」
「空気清浄敷石」

この「排気ガスの有害物質を吸い込んで無害なものに換える働きを持つ」コンクリートの敷石の効果はすでに研究所レベルでは実証済み。今回実験が行われているHengeloは、自動車の交通量が多いことで知られており、道路に設置されることで大気汚染対策として役立つか否かという観点ではぴったりの場所。道路工事が行われているエリアが半分に分割され、その片方に今回の「空気清浄敷石」、もう半分にこれまで利用されていた通常の敷石が用いられる。

この実証実験にはオランダのOverijssel州も補助金を出しており、「大気汚染がいちじるしい場所において、環境を改善させる手法になりうる」と期待している。道路そのものは今年の末までに完成し、大気浄化の効果測定は来年初頭から行われる。そして来年夏には第一回目の実証実験成果が発表される予定とのこと。

光触媒を利用した
空気浄化の仕組みは
10年以上前から存在。
それが大規模に
展開されていないのは
何らかの問題が
あるものと思われる。

リリースには「日本の企業」とのみ記載されており、具体的にどの企業が今回の「空気清浄敷石」に関係しているのかまでは明記されていない。コンセプト的には先に【日本製紙(3893)、光触媒を利用した「空気清浄カレンダー」を今春に発売へ】などで紹介した、酸化チタンによる光触媒機能を活用したものだろう。この技術をコンクリートに応用して環境保全に役立てるという手法は多数の企業で古くから見受けられ、例えば【三菱マテリアル(5711)】【環境保護用コンクリート】という名前で特許を申請しているし、ポーラスコンクリートに応用したものは【IHI(7013)】【ポーラスコンクリート】で申請している。

気になるのは、それこそ10年以上も前から「モノ」になっている技術であるにも関わらず、日本ですら大規模に展開されていないこと。それこそ「電力もエサも水も要らず、置いておくだけで大気汚染対策になる」ものなら、猫も杓子も飛びつきそうなものだが、今現在ですらも導入されているという話はほとんど聞かない。先の「空気清浄カレンダー」もまたしかり(問題がなければ多くの住宅の障子や壁紙に使われているはずだ)。それが未だになしえていないのは、環境上・コスト上・メンテナンス上のいずれか、あるいは複数(またはそれ以外の)ハードルがあるものと思われる(例えば硝酸塩そのものは水に溶ける性質を持っているが、水棲生物に悪影響をもたらすなど周囲の水質環境を悪化させるリスクが生じる)。

もっとも、太陽光発電や太陽熱発電同様に、「黙っていても効果を発揮してくれる」ありがたいアイテムになる可能性を秘めていることには違いない。実証実験の結果は来年夏以降に発表されるとのことだが、日本の技術がオランダで活かされ、かの地の大気汚染対策に少しでも役立つことを心から祈りたいものだ。


(最終更新:2013/08/03)

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