「最近ミリオンセラーって減ってない?」の「ミリオンセラー作品数」を仕切り直してみる
2008年08月20日 08:00
最近シリーズ化している感がある、書籍や書店、音楽CDなどの著作物に関する各種データの展開やグラフ化、考察シリーズだが、身近な存在であることから多くの読者から反響が寄せられている。中には「もっと詳しいデータがある」との話もいただくことがあり、記事の精密化やデータの価値を高めるために役立つものとして、大変重宝している。今回のミリオンセラーに関するデータも、匿名の投稿で寄せられたもので、【日本レコード協会のデータページ】には、1989年度分からのデータがそろっているよ、というものだった。
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指し示されたデータページを上にさかのぼって見ると、実に多種多様で興味深いデータが掲載されている。片っ端からグラフ化して分析して見たくもなるが、今サイトは音楽専用でなければ、当方もこの分野にはさほど知識が無くボロが出そうなので止めておく(笑)。
ともあれ、先の【「最近ミリオンセラーって減ってない?」趣向の多様化と大ヒット音楽CDの減少】で、公正取引委員会発表の資料を基に成型した「音楽CDのミリオンセラー推移」について、1989年以降のものにまで拡大したのが次のグラフ。
音楽CD・ミリオンセラーの推移(1989年~)など。ダブルミリオン(200万枚)以上のものは棒グラフで表記、ただし1991年以降
1991年以降については別途データで200万本以上の売上作品は100万本単位の成績も見つけることができたの、「ダブルミリオン以上」つまり「超ヒットセラー」の作品数を棒グラフとして並載した。
↓
有力アーティストの新譜
↓
有力アーティストの
新譜とベストアルバム
↓
趣味趣向の多様化や
配信メディアの多角化で
勢いが衰える
先の公取委のデータでは右肩下がりの部分しか見られなかったが、むしろそのグラフにおけるスタート年の1998年前後が、音楽CD(アルバム)の絶頂期だったことが分かる。
音楽CDの歴史を調べて見ると、1982年には日本で初のCDプレイヤー・CDソフトが販売を開始し、1986年時点で販売枚数ベースでCDがLP(レコード)を追い抜いている。浸透が進みつつある1980年代後半から、音楽CDにもミリオンセラーが続出するようになったのだろう。
また、具体的なラインアップを斜め見すると、シングルのミリオンセラーが続出した1990年代前半から後半にかけては、映画やテレビドラマの主題歌が顔を見せるパターンが多い。しかし1990年後半以降はその傾向も薄れ、むしろ有力アーティストの新譜が中心となっていく(もちろん「主題歌」「有力アーティストの新譜」が重なる場合もある)。
また、1990年後半からはシングルCDの代わりにアルバムCDのミリオンセラーが増えてくる傾向があるが、こちらは有力アーティストが新譜集と共にベストアルバムの類を次々と世に送り出し、それらがファンのハートをわしづかみにした結果といえる。単にミリオンセラー数が増えただけでなく、ダブルミリオン・トリプルミリオン(300万枚以上)のセールスを記録した作品が登場したのもこの時期。ちなみに最高峰の1999年には宇多田ヒカルの初アルバム『First Love』が初回出荷280万枚、この年だけで800万枚を超えるヒットを記録している。
しかしその後、21世紀に入ると趣味趣向の多様化や音楽配信メディアの多角化などが原因で、ミリオンセラー数は減少の一途をたどっている……のは先の記事にもあるとおり。
ちなみに今年(2008年)についてだが、【デイリースポーツオンライン】などで伝えられているように、安室奈美恵のベストアルバム『BEST FICTION』がミリオンセラーを達成している。今年は少なくとも音楽CDのミリオンセラーがゼロになるということだけは避けられそうだ。
(最終更新:2013/09/06)
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