書店の減り具合をグラフ化してみる

2008年08月18日 08:00

書店イメージ先日【書店の経常利益率をグラフ化してみる】で紹介したデータ生成の際に参照元とした【日本著者販促センター】。書籍に関する事柄を中心に、書店動向や業界事情について色々と役に立つ話が掲載されている。今回グラフ化してみるのもその一つ、書店の増減動向についてまとめたもの。元ネタは【書店数の推移 2001年から2007年】【本屋の出店、閉店状況】

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書店数推移(2008年は2月現在のもの)
書店数推移(2008年は2月現在のもの)
新規開店・閉店書店数と、差し引きで求められる書店の「減少」数
新規開店・閉店書店数と、差し引きで求められる書店の「減少」数

元記事では数字の羅列のみで、何となく「ああ、減っているな」という程度の感想だったが、このようにグラフ化してみると改めて「本屋って減っているのね」という実感がわいてくる。思い返してみれば確かに自宅の近所(自転車で通常走り回っている範囲)でもここ数年間で2軒、正確には中規模のが1軒と家族で経営しているような小さな本屋が1軒、姿を消していた。

特に後者のグラフでは、データ範囲内ではすべての年において「開店数<<閉店数」なため、「書店の増減数」ではなく「書店の減少数」と銘打たねばならないのが物悲しい。

15年間で書店の
4店舗のうち1店舗が
店じまいをしている

別のデータによるとバブル経済が崩壊した直後の1992年には書店は全国で2万2500店ほどあったという。それが今データの最古年2001年には2万1000店ほどにまで減り、今や1万6000店を多少上回る程度(2月時点のデータなので、あるいはすでに1万5000店台に突入しているかもしれない)。15年間で約2割5分、つまり4店につき1店が店じまいした計算になる(実際には引越しや、大型チェーン店の支店統廃合もあるだろうが……)。

各年の開店・閉店数を見ると、開店数はさほど変化が無い一方、閉店数は2005年以降再び上昇の雰囲気を見せ、それに伴い(差し引きで当然ながら)書店の減少数も増加する傾向にある。日本著者販促センターには別所に書店の売り場面積分布もあるので、別機会にまたグラフ化する予定だが、大規模書店が増加する一方、中小の書店が減少の一途をたどっている。

街の個人経営的な本屋イメージ近所に個人経営のような小さな書店があれば、頭に思い浮かべてほしい。それらの書店で販売している商品の主役は、週刊誌などの「雑誌」。八百屋や魚屋のように新刊雑誌が平積みされている様子が容易にイメージできるはずだ。その主力商品たる雑誌を取り巻く環境は【2年間で「雑誌を購入しない」層は8.5%増加】【買うのが減った人は3割強・雑誌離れ進行中】にもあるように、携帯電話やインターネット(書店)の普及で厳しい状態にある。さらに「書店の経常利益率をグラフ化してみる」で解説したように、元々書店の利益率が極めて低いのも要因の一つ。

雑誌販売を支える
中小書店の閉店

(悪循環)

雑誌販売数の減少

元々「雑誌」は購入意欲がさほど高いものではない。気軽に手に入らない、ちょっとした機会に目に留まらなければ、あるいは近所の本屋で定期購読の手続きが出来なくなれば「まぁ、読まなくてもいいかな」と買わずに済ませてしまうことが多いはずだ(経験則だが、女性向け定期発刊紙は自宅近場の本屋で定期購読される場合が多い)。

そしてこれら「雑誌を中心に販売する小規模の書店」が店をたたむことで、雑誌を販売する拠点数が減り、消費者が雑誌に触れる機会が減る。そしてさらに雑誌の販売数が減ってしまうという悪循環が生じているのも事実。書店業界におけるリストラクチャリング・経営の合理化が進んでいると見るべきか、それとも出版業界全体の衰退を加速させる動きなのか、現状では判断がつきかねよう。


最後に。元記事では「この推移で行くと、向こう10年間で1万店を切るだろうと予想されています」という表記があった。書店を取り巻く環境は常に変化しているし、書店、さらには紙媒体の本そのもの増減に関わる技術やメディアの動向も、それこそ日進月歩どころか秒進分歩の度合いで動いている。このままのペースで書店数が減るとは思えず、あくまでも「数遊び」の域を越えないのだが、(中途なデータである2008年分を除いた上で)線形近似線を出してそれをさらに未来に向けて延長してみたのが次の図。

書店数推移(2008年以降は推定)
書店数推移(2008年以降は推定)

確かに10年間(=2017年)で書店数は1万店を切ることが予想される。ちなみにグラフは2022年までだが、2025年頃には5000店、そして2032年にはゼロということになる。

出版業界にとって2017年、そして2025年・2032年が本当に「節目の年」になるのか否か。周囲環境の変化はもちろんだが、出版・書店業界に属する人・企業の努力が大きく影響を与えることだろう。


(最終更新:2013/08/03)

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