物価高のイギリスで登場した古くて新しい営業スタイルのパブ

2008年08月16日 12:00

パブイメージ【食費9.5%、燃料費19.09%~ヨーロッパでもっとも物価高に悩む国、イギリスの場合】でも触れたように、ヨーロッパの中でも特に物価高が進むイギリス。大人たちが毎日の疲れをいやすために口にする一杯のビールですら、ちゅうちょするような状況にあるとのこと。そんな物価高を打開するためにとばかり、ある村に登場したパブ「THE PIGS」では「古くて新しい」画期的なシステムを提供し、好評を博している。そのシステムとは……(元記事:【Mail Online】)。

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パブの料理長で店の経営者でもあるTim Abbott氏(左)と交渉中(?)のお客
パブの料理長で店の経営者でもあるTim Abbott氏(左)と交渉中(?)のお客

「THE PIGS」で導入されたのは、国産(イギリス産)の食品などと、パブの食事・ビールを交換するというもの。新鮮な果物や野菜、魚、肉をはじめ、さまざまな食品が交換対象となる。その品質や量、大きさなどで、パブのビールや食事、あるいは食事券と交換してもらえる。写真にあるように「よう、いい魚獲れたんだがどうよ?」「んんん、これはなかなか。それじゃビールと、この魚で作ったつまみをちょっとだけ用意するよ」「うっしゃ、了解」という感じ。

パブ内に設置された黒板には、次のように書かれている。

パブ内の黒板
パブ内の黒板

「TIMの交換掲示板・あなたが育てたり飼っていたり、猟銃でしとめたり、または盗んだ(※不破注:イギリス的ジョーク)ものなどなど、うちのメニューに使えると思った食材があったら、声をかけてください。物々交換の交渉をしましょう」。

物価高を皮肉ったジョークのようにも見えるが、実際にすでに何度と無く物々交換は行われている。今のところじゃがいもやサバ、果物、そして猟師によってしとめられたうさぎやキジ、ハトなどがビールと交換されたとのこと。

この店THE PIGSのマネージャーCloe Wasey氏は、「実は物々交換の仕組みは2年前からこの店で実施されている。けれど最近になって利用する人が急増した。物価高や金融不安・貸し渋りなどで金欠になる人が増えてくるのと共に、物々交換を申し出る人が増えているようだ」とのことで、店側でも驚いているとのこと。

お客側は何か工夫をしてビールという「憩い」を手に入れたいという想いを果たし喉をうるおせる。そして店側でも良い品質の新鮮な食材を、店頭で販売している高い値より安価で手に入れることができる。ガソリンなどの燃料費の高騰が(運送費などで)ダイレクトに反映される中間マージンが除かれるため、「売り手」も「買い手」もお買い得になるわけだ。元記事では安い賃金で働いているドライバーが、放し飼いにしているニワトリの卵とビールを交換したことを語ると共に「ここの仕組みは本当に助かるよ」とコメントしている。

またこの「物々交換システム」は意外な、そしてパブ(酒場)が本来持っていた効用を生み出している。お客の誰かが「このうさぎ料理、良い仕事をしているね」と絶賛した時にお店では「そのうさぎを仕留めた人がここにいますよ、ぜひとも話をしてみて下さい」と出会いと会話のきっかけを与えてくれるのだ。

料理長で経営者でもあるTim Abbott氏の妻のWasey嬢は、パブ「THE PIGS」について、「物々交換がひんぱんに行われるようになったことで、このパブが地域社会の中心になったように思います。地元の人々のつながりが今までより深く、強くなった気がするんです」と感想を語り、この地域の人々の交流の場として「THE PIGS」がより大きな手助けをしてくれると自負している。

ロールプレイングゲームに登場する酒場(パブ)の描写を見れば分かるように、元々酒場はお酒や食事を提供する他に、その地方の人たちの憩いの場であり、集会場のような役目も果たしていた。物々交換が積極的に行われることで、交換された食品を通じた人々のつながりが強く意識され、連帯感がふくらんで行き、パブ本来の意義も再興したのだろう。

地域社会の建て直し、コミュニケーションの復権、小回りの利く食品の需給の充足という観点からすれば、一見原始的に見える物々交換も決して悪いものではない。そんな感すらあるイギリスのパブのお話である。

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