ポーランド・アメリカ間のミサイル防衛構想合意・ロシア大いに反発

2008年08月16日 12:00

MDミサイルイメージ【BBC.news】などが伝えるところによると、8月14日に東ヨーロッパのポーランドがアメリカとの間で、アメリカが展開交渉中のミサイル防衛構想(MD)計画を基本的に受け入れることで合意し、両国の交渉担当者が合意文書に署名したことに対し、ロシア政府は激しく反発の意を示したことが明らかになった。ロシアのメドヴェージェフ大統領は「このMD構想がロシアをも目的としている」と反発の意を示し、またロシア軍のノゴビツィン参謀次長も「許されざる事態」と警告を発している。

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今回ポーランドが基本合意したのは、アメリカが東ヨーロッパに展開を模索しているMD計画の一環。チェコに統括レーダーを設置、2012年までにはポーランドのバルト海沿岸に10基の弾道弾迎撃ミサイルを配備し、ヨーロッパ全域とアメリカ本土を、イランなど西欧諸国に敵対しうる国の弾道ミサイルから防衛する役割を果たす。

チェコの専用ウェブサイトに掲載されていた、ヨーロッパ地域・ポーランドとチェコが対象となるMD構想。チェコのレーダーで接近する敵性ミサイルを追尾し、ポーランド領内からの迎撃ミサイルで撃破するというもの。
チェコの専用ウェブサイトに掲載されていた(【該当ページ】)、ヨーロッパ地域・ポーランドとチェコが対象となるMD構想。チェコのレーダーで接近する敵性ミサイルを追尾し、ポーランド領内からの迎撃ミサイルで撃破するというもの。

今計画および合意した内容には、ポーランドが迎撃ミサイル基地を設置した見返りとしてポーランド国内の防空能力の強化を求めていたことに対し、アメリカが広域防空用のパトリオットミサイルを配備、さらにアメリカ軍基地の設置やポーランドが「第三国」から攻撃を受けた時の軍事協力なども含まれている。

チェコ側はすでに4月にアメリカと合意に達していたが、ポーランドでは見返り部分の詳細について意見がかみ合わず、交渉は難航していた。しかし先日のロシアによるグルジアとの南オセチア紛争がポーランドに危機感をもたらし、交渉が加速。今回の合意にいたることとなった(※一応ポーランド側では「南オセチア紛争とは関係ないペースのスケジュールで進められた」と説明している)。

ミサイル防衛構想イメージFrom http://www.mda.mil/建前上は上記図にあるように「中東地域などから発射された敵性弾道弾の脅威からヨーロッパやアメリカ本土を守る」のが今回のMD構想の目的。だが、容易に他方向からの「脅威」にも対応しうること、そしてポーランドの「見返り」が第三国からの攻撃(つまり中東地域「以外」の国からでも該当する)に対する軍事協力をうたっていることから、当然のごとくロシアは激しく反発している。

ロシア軍のノゴビツィン参謀次長は金曜のモスクワでの記者会見の中で、今回の合意について「許されざる事態(cannot go unpunished)」と言及。さらに「ただでさえ米ロ間は難しい状況下に置かれているというのに、今回の決定はさらに事態を悪化させる原因となり、アメリカを後悔させることだろう」と説明している。またロシアのメドヴェージェフ大統領も「MD構想の対象は(中東だけでなく)ロシアをも含まれている」とし、ヨーロッパ地域の軍事的均衡を大きく崩す(ロシア側に不利となる)ものになるとして反発している。

イラク問題で深く足を突っ込みすぎて軍事的パワーバランスが低下し、サブプラ問題で金融的にも力を減じているアメリカ。原油高を背景に経済力をつけ、プーチン大統領(現在は首相)のもとに主に軍事力の面で攻勢を続けるロシア。いつのまにか両国の関係は冷戦時代に近い状態に戻りつつある。

グルジアの騒動に続き今回のポーランドにおけるMD構想問題は、大きな火種となる可能性は否定できない。アメリカに例えるなら、キューバにロシア製の防空ミサイルを配備し、キューバが何らかの攻撃を受けた時にはロシアが守るという条約を結んだのと同じことを意味するからだ(攻勢的なミサイルとの違いはあるとはいえ、「キューバ危機」に近い状況ともいえる)。

今後も今件に関連するニュースには注意深く耳を傾けた方がよいかもしれない。

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