イオンが漁協から直接鮮魚を買い付け

2008年08月15日 08:00

ひらまさイメージ大手スーパーの【イオン(8267)】は8月14日、全国漁業協同組合連合会の協力のもと漁業協同組合JFしまねと直接取引きを行い、産地直送の生鮮魚を販売することを発表した(【発表リリース、PDF】)。現状では休魚日の8月16日にイオン専用の水揚げが行われ、翌日イオン直営のジャスコで販売されることのみが決定されている。今後イオン・JFしまね間の直接取引きは、定期的に継続して実行される。

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先に【7月15日は日本の漁業が眠る日】でも解説したように、燃料費高騰などで漁業生産者は採算がとれないと頭を抱えているが、実は店頭小売価格のうち流通コストにほとんどを取られ、生産者に回ってくる手取額がきわめて小さいのも大きな要因。

生鮮水産物の小売価格(リリースより)。むしろ小売諸経費の節約を図るべきとも見えるが……構造的に難しいのだろうか
生鮮水産物の小売価格(再録)。

販売店側が直接漁業者と取引を行うことで、漁業者は(中抜きがなくなるので)手取りを増やすことができる。イオンは新鮮な魚を店頭に並べることができ、仕入れ値を抑えることも可能となる。政府側もこのような直接取引きを間接支援策として推進しているが、今回の事例が具体的には初めてのものとなる。

すでに養殖魚を直接取引し、新鮮さの確保と中間マージンの削減を図る方法は他の企業も行っている。しかしいわば「当たるも八卦、当たらぬも八卦」とばかりに漁獲高が保証できない天然捕獲の魚の買い取りを、事前に約束する取引は企業側のリスクが大きくなるため、ほとんど行われていないのが実情。

今回の取引は、JFしまねが8月16日(本来休魚日)に加賀漁港、多古漁港、塩津漁港、十六島漁港でイオン専用の定置網の水揚げを実施。獲れた魚(つばす(ぶりの子供)、ひらまさ、かますなどが期待されている。漁獲量は2~3トンを見込む)を8月17日に、大阪府や京都府、山陰エリアを中心としたイオン直営のジャスコで販売する。漁獲量が多ければ近畿・山陽エリアなど最大60店舗ほどに展開される予定。

上の構造図にもあるように、漁業生産者の現状が極めて厳しい背景には、原油高同様に複雑な流通機構による中間マージンの大きさも原因とされている(むしろそちらの方が大きいかもしれない)。今回のイオンの「直接取引」はイオン側が「収穫量が少ない時には店舗供給量が減ってしまう」というリスクを背負いながら、それ以上に鮮魚の価格が上昇し、リスクを考慮しても直接取引きは実施する価値があると判断。さらに漁業生産者の現状を手助けしなければならないという責務もあってのものだろう。試みがうまく行けば成功事例のモデルケースとなり、他の大手スーパーも同様の取引を行うようアプローチをしてくるに違いない。

流通機構は商品の全国展開を容易にするためにシステム化されているものだが、昨今の漁業のように、場合によってはデメリットがメリットを上回るように見える場合もある。大手スーパー以外の魚屋や一般店舗の鮮魚コーナーを滅ぼすことになるので、「すべての魚を大手スーパーの直接買い取りで」というわけにも行かないが、臨機応変に対応していく柔軟性が求められよう。


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(最終更新:2013/08/03)

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