第三者に広く知らせるための三要素
2008年08月14日 12:00
先の【周囲から注目を集める10の「タイトルの付け方」】に続き、【日本著者販促センター】で提起された題材をブログやサイトの運営に当てはめてみる話第二弾。今回はプレスリリースを作る時に必要とされる【広報素材の3要素】について。
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プレスリリースを作る際の素材、つまり広報素材には次の三要素が大切だと語られている。すなわち
1.社会性
2.公共性
3.話題性
これらの要素が無い場合には代替的な素材として
4.女性
5.赤ちゃん
6.動物
などの要素を含めた付加企画があるとよい、とのこと。この話も前回同様、『マスコミが思わず取り上げたくなるプレスリリースのつくり方・使い方』からの引用とのこと。【スーパーアピール】の蓮香尚文氏の言なのだという。
さて、この話をブログやサイトに当てはめて考えてみる。日記や随筆的なごく普通のブログの場合は、最低限の社会的ルールを守る限り、「社会性」「公共性」「話題性」などを考える必要はない。思うがままに書き連ねていけばよい。趣味の覚え書き的なサイトもしかり。
しかし少しでも読者数を気にしたり、ましてやニュースサイトをはじめ、「多数の第三者に読まれることを前提にした、あるいはそれを目的にした」ブログやサイトになると話は違ってくる。「一人でも多くの人に関心を持たれ、目を通して欲しい」という観点では、ブログ・サイトもプレスリリースも変わるところが無い。必然的に、プレスリリースの手法が応用できることになる。
●「社会性」
色々な定義がなされ、あいまいな使われ方をしているが、人間が一人ではなく多人数で構成される集団の中で生きていくために欠かせない力と見れば良いだろう。基本的な生活習慣(世間一般のルール)や、集団生活の中の一員であることの自覚、他人への思いやりなどが該当する。逆説的だが「反」をつけてみれば、その事例がすぐに思い浮かぶだろう。
「反社会性」を持つ内容は、(少数派ということもあり)インパクトはあるものの、共感は得られにくい。目には留まってもそこから先に進まない。社会性を持つ内容でないと多くの人には受け入れがたい。
●「公共性」
社会性に近いものがあるが、公共の持つ性質、共通認識、世間一般に共通する利害などを有する性質を指す。個人やプライベートと逆の立ち位置にある考え方。日記ブログなどでよくありがちなプライベートな話、例えば「今日髪の毛切ってもらったんだけど、切られすぎちゃって、似合わない髪型になっちゃった」は、公共性を持たないことになる。ごく普通の個人ブログでそのようなことを語られても、誰も見向きはしない。
一方、アイドルブログなど著名人ブログではむしろそういった「非公共性」が売り物のように見える(タレントブログで上のように髪型のことが書かれれば、大きな反響を呼ぶことだろう)。しかし彼らは存在自身が公知されていて、その一挙手一投足が公共性のあるもの。彼らはプライベートを公共性に転換し、それをアピールしているわけだ。
まれに公共性の無いものが注目を集めることがある。良い例が配偶者とのやり取りを日記風に描いたもの(例:【鬼嫁日記】)。これは継続して公開し続けることで、共通認識や同意(つまり「あるある感」)を読者から得て、公共性を確保した事例といえる。また、毎日のお弁当をひたすら写真に撮って公開しているブログなどは、資料性を持ち、興味関心を集めるようになり、これもまた公共性を身につけるようになる。ちなみにそれぞれの事例は後述する「話題性」も付与されるものとなる。
●「話題性」
普遍的なもの、というより「今現在」「タイムリーで」「ブーム的に」多くの人が見聞きし、その話を読めば「なるほど」と共感を得られるもの。例えば記事執筆時の8月14日現在、オリンピックが開催されているが、オリンピックそのものやそれに関連した事項なら「話題性」のあるもの、となる。
新聞やテレビなどの速報性の高いメディアの場合、「話題性」を特に重要視する。一刻でも早く多くの人に知らせたいプレスリリースや、ニュースサイト・ブログなども「話題性」に大きなウエイトを置くことが多い。流行り廃りが速いのが難点だが、その分瞬間最大風速は大きいからだ。そして配信側からすれば、「瞬間最大風速の風」を断続的に吹かせ続けることで、平均すれば「高い支持率」を得る計算になる。
●「代替的な素材」
挙げられている「女性」「赤ちゃん」「動物」は、特に社会・公共・話題とは関係なく、注目を集めやすい素材。例えば駅売りやコンビニの雑誌売り場に並べられた冊子の表紙を見て、これらの素材が掲載されているものが圧倒的多数を占めていることがわかるはず。どうしてもこの三要素は目に留まりやすいのだ。「動物」も、どちらかといえば成長した動物よりは子猫・子犬という「子どもの動物」が好かれる傾向がある。
これは当方(不破)の個人的な感想だが、この三要素が注目されやすいのは、見る人による「保護本能」、要は「守ってあげたいという無意識」が働いているからではないかと思われる。「女性」「赤ちゃん」「(子どもの)動物」いずれも社会的には弱い立場にあることが多い。「可愛いから」といったわき上がる想いも、その先にある「保護したい」本能から来るものだろう。
いわば「女性」「赤ちゃん」「動物」を使った方が良い、という話は、人間の本能をくすぐるテクニックといえよう。
多少マイナーな話になるが、かつて大ブームとなった「架空戦記小説」の世界においても、「多くの部数をさばく三要素」というルールがあった。いわく、「山本五十六」「零戦」「戦艦大和」のいずれか、あるいは複数を効果的に登場させることで、その小説の売上は格段に上がるというものだ。いわばマジックキーワード的な扱いを受けていた。
そんなバカな、と思う人もいるだろうが、実際のデータから裏づけされたものだと『決戦!! 日米機動部隊』の校正手伝いをした時に、関係者から聞いたことがある。思い返してみれば、確かにブーム終焉期には、やたらと戦艦大和や零戦が主役の話ばかりが発売されたものだ。「社会性」「公共性」「話題性」や「女性」「赤ちゃん」「動物」も、(特に後者は)性質的にはそれに近いものがあるといえる。
多くの他人に読ませることを前提に運営しているブログやサイト、特にニュースサイトにおいて、(「女性」「赤ちゃん」「動物」を強く意識するのはどうかと思うが)「社会性」「公共性」「話題性」は気に留めておいた方が良いだろう。「多くの人の目に留まるから」という直接的・俗っぽい理由もあるが、むしろ「良い内容のもの」ができる可能性が高まるからだ。むしろ「良い内容のものができるから、多くの人の目に留まる可能性が高まる」とポジティブに考えるべきなのかもしれない。
(最終更新:2013/09/06)
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