[更新]サブプラ暴落以前から「気配」があった・リース業界の動向をグラフ化してみる

2008年08月04日 08:00

土木建設機械イメージリース事業者らで構成されている【社団法人リース事業協会】は7月28日、6月分のリース統計を発表した。それによると、全体のリース取引高は5139億円・前年同月比で15.7%のマイナスとなった。これは2007年6月以降、13か月連続してのマイナスとなる。経済不況の波はリース業界にも顕著に現れているようだ(【発表リリース、PDF】)。

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「リース」とは英語の「lease」から来たビジネススタイルの一種。機械などの大型物品を利用者に代わる別の企業が購入して、利用者に一定期間の契約で有料で貸し出す事業のことを指す。物品そのものの所有権はリース会社にあり、契約期間は減価償却期間より短い設定が可能で、貸し出し料金(リース料)は経費扱いになることから、主に高額な機械(産業機械、工作機械、航空機、船舶など)やパソコン・高額コピー機、大企業における電話施設などの情報通信機器といった、技術進歩の速い機械の導入に利用されている。また先日【不況が変えるアメリカのカーリース市場】で紹介したように、アメリカでは自動車の利用にも大いに用いられている。

最新の6月分データも含めた直近3年間のリース月次統計の推移は次の通り。

リース月次統計推移
リース月次統計推移

去年まではほぼ一定額で推移していたリース高も、去年の夏以降減少傾向を見せていることが分かる。注意して欲しいのはこのような話をする時によく「きっかけ」として取り上げられる「去年8月のサブプライムローン暴落」よりも前の2007年6月・7月から下降傾向が見られていたこと。リース業界では株価に金融信用問題が大きく反映される前から、「気配」を感じた動きが生じていたことになる。

先にサービス産業全体の動向を【サービス産業の動向をグラフ化してみる】で見たときに「リース業界はかなりの苦境にある」と言及したが、このようにリース業界に限って詳細を見ると、それが改めて裏付けられた形。

部門別ではほとんどの業種向けで金額だけでなく、件数そのものも落ちていることが確認できる。

リース取扱高(2008年6月、前年同月比)
リース取扱高(2008年6月、前年同月比)

金額だけ下落しているのなら「リース業界における競争が激化したり該当商品そのものの単価が下落し、取引高も下がった」という解釈も出来るのだが、取引件数自体も減っている場合、対象業界そのものの「勢い」が減じていると見ることができる。要は「道具のリース数を増やすほど仕事は増えていない。むしろリースすらも減らさないと行けないほど仕事件数が減っているか、経費削減が求められている」ということ。

汎用性の高い「事務用機器」や「産業機械」「輸送用機器」の下落度が大きいところを見ると、不況の波は広範囲の産業に押し寄せていることが分かる。リリースではダイジェストとして分野別の特筆すべき動きを列挙しているが、それによると

・情報通信機器は全体では昨年6月以降13か月連続でマイナス
・事務用機器は5か月連続で2桁のマイナス
・産業機械が4か月連続で2桁のマイナス
・輸送用機器が昨年8月以降11か月連続でマイナス
・商業及びサービス業用機器は昨年3月以降16か月連続でマイナス


などマイナスばかりが並んでいる。

土木建機が強いのは
海外ニーズのおかげ?


下落傾向が続く他分野を差し置いて、一人気を吐いているのが「土木建設機械」。この分野は今年に入ってから逆行高の形で堅調な動きを見せており、6月のプラスで5か月連続してのプラスを見せている。国内の建設・不動産セクターはすでに多数の記事で触れているように縮小の様相を見せており、需要が伸びているとは考えにくい。【4トントラック82台分! コマツの超大型ダンプ「960E」導入】で紹介したようなダンプに代表される、海外向け建機のニーズが伸びているのだろう。


リース業はそのビジネスモデルから比較的「堅め」の業種として、地味ではあるが市場の変化にも強い銘柄として知られている。サブプライムローン関連のような本業とは関係の無い商品に手を出していなければ、昨今の株安状況においてもその下落幅を最小限に抑えている、あるいは業績の良さを見せつけ、逆に値を上げているところすらある。

市場全体の低迷や借り手側の景気の悪化に伴い、取引高が減少傾向なのは避けようがない。今後しばらくは取引高・件数共に減少の傾向は続くだろう。逆にリース業界のニーズが高まり、前年同月比でプラスの傾向が続く部門が現れれば、その部門の景気は回復に向かい、活性化の前兆ととらえることができる。いわばリース業界の動向は他業界の「先行アンテナ」としてみることができよう。


※追加補足(2008.8.4.)

今年の4月からリース会計の基準・リースの税制が変わったため、これまでリースを行うことで得られていた税制上の特典が得にくくなったため、本文で指摘しているように「リースの需要が落ち込んでいる」という指摘がありました。

具体的には「ファイナンス・リース(借り手がリース資産の利益すべてを受け取る。代わりにさまざまなコストも負担する)のうち、所有権が借り手に移転しないものについて、これまでは例外的処理として認められていた”賃貸借処理”が廃止され、原則”売買処理”として処理されるというものです。ごく一部の例外(1契約あたり300万円以下、1年以内の契約など)をのぞき、このルールが適用されます。要は「面倒くさくなるし、税務上の利益もなくなるからリースは止めよう」という動きとのこと。

と、なると今年4月以降の契約が減少しているのは不景気の面だけでなく、このルールの改正によるところも少なからずあるということになります。

※参考:【新リース会計税制の概要(リース事業協会)】
【ファイナンス・リース取引の処理変更(富士通)】

(Thanks a lot for MM!)

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