落ち込むCD、支えるネット配信~音楽CDの販売動向などをグラフ化してみる

2008年08月18日 12:00

音楽イメージ先の【日本著者販促センター】提示のデータを元にグラフ化を行う際、補完データを色々と探していたところ、書籍・音楽などの現状が非常によく分かるデータ(7月24日に公正取引委員会で公開された、著作物再販協議会議事録など(【報道発表資料ページ】))を見つけることができた。以前から関連する業界で雰囲気的に「そうらしい」と思われていたことの傾向を、公的な数字で確認できる貴重なものだ。今回も含めて何回かに分けて、特に気になったデータを抽出、あるいはさらにグラフ化し、状況を把握しやすくしてみよう。今記事は「音楽CDの販売動向」について。

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携帯電話やiPodをはじめとするデジタルモバイル音楽端末の普及で、音楽CDの売上は落ち込みつつあるといわれている。以前と比べて「音楽CD」のミリオンセラーをニュースなどで聞かなくなったことからも、雰囲気的に同意する人は多いだろう(※ミリオンセラーそのものについては別の機会に)。

そこでまずは1998年以降の日本における、邦盤・洋盤の音楽用CDの生産金額と生産枚数を上記資料の「資料3」に掲載されていたデータを元にグラフ化したのが次の図。

音楽用CDの生産金額
音楽用CDの生産金額
音楽用CDの生産枚数
音楽用CDの生産枚数

年によってややばらつきがあるが、洋邦共にきれいな右肩下がりで枚数も金額も減少しているのが分かる。元資料補足文章によれば掲載したデータの一番古い年1998年がピークで、以降はマイナス傾向が継続しているとのこと。

10年間で音楽CDの
生産金額は
44.4%減少している

直近データでは邦盤は2002年~2003年の落ち込みが特に厳しい。生産金額で概算すると、前年比で2002年は14.9%、2003年は12.4%のマイナスを示している。むしろ最近の方が減少幅が小さくなっているほどだ。一方洋盤はばらつきが大きく、邦盤が苦戦した2002年~2003年はそれぞれ1.1%・3.5%の減少で済んでいるものの、最新データの2007年では前年比17.4%という大きな下落を見せている。洋盤の方が、流行による影響が大きいということなのだろうか。

ちなみに概算すると1998年から2007年までの10年間で、音楽CDの生産金額は44.4%の減少、生産枚数は邦盤が45.6%・洋盤が33.3%の減少を示している。減少の理由について元資料では触れていないが、消費者の利用性向の多様化や、インターネットの普及、そして冒頭でも触れた「携帯電話やiPodをはじめとするデジタルモバイル音楽端末の普及」などが原因として挙げられよう。

「事業主力商品の音楽CDの売上がここまで落ち込んでいるのだから、音楽業界全体の売上、業績そのものも大変なことに……」と思う人も多いはず。しかし少なくともここ数年の間は全体の売上は逆に増加する傾向にある。

音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移
音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移

音楽ソフト、つまり音楽CDやカセットテープなどの媒体販売の売上は毎年鈍化する傾向に変わりはない。しかしその分を補ってあまりあるほどの有料音楽配信(ダウンロード販売がメイン)が成長しつつあり、全体の売上は前年比でわずかずつではあるが上昇の傾向を見せている。有料音楽配信だけを見ると2006年は前年比56%、2007年は41%と大幅な伸びを示しており、今後も大きな成長が期待できる。


日本におけるインターネット経由の音楽配信は1998年前後にはMP3形式によるものが普及し、誰でも気軽に曲をアップロード・ダウンロードすることが可能となった。インディーズレーベルを自ら掲載してアピールするミュージシャンが雨後のたけのこのように登場したのもこの時期。しかし海賊版問題などが横行し、ビジネスとしての市場が形成されたのは、2001年~2003年における「携帯電話の普及(着メロ・着うたなど)」やアップル社のiPodシリーズに代表される「携帯音楽プレイヤーの普及」以降と見なしてよいだろう。

音楽CDの売上減少は
音楽業界そのものの衰退を
意味しない

音楽CDの生産数・金額減退と、インターネットなどでの音楽配信の普及との間には、確実に浅からぬ関係があると見てよい(CDの販売ピークと、ネット上の音楽配信の仕組みの普及時期がほぼ一致する)。同じ娯楽(この場合は曲)を楽しめるのなら、消費者はより気軽に、より素早く、より便利で、より分かりやすいものを選ぶ。かつて曲を聴く媒体がレコードからCDにとって代わられたように、消費者はより良い媒体を選ぶ傾向を強めていくだろう。

実物とデータ上の違いもあり、レコードとCDのような「ほぼ完全な乗り代わり傾向」は見られないが、今後も音楽CDから有料音楽配信などのデジタルデータによる音楽の視聴傾向は強まるに違いない。ただしそれは音楽業界の衰退を意味するものではなく、単に「媒体が変わった」「時代が変化した」だけの話。

もし仮に曲が売れない、という問題があるのなら、それはインターネットのせいではない。その他の部分(曲の内容やユーザーニーズの把握)に目を向けるべきだといえよう。

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