イギリスで半世紀ぶりに新造の蒸気機関車「A1」完成
2008年08月03日 12:00
【Mail Online】によると、先日イギリスで「新造」の蒸気機関車が完成し、お披露目の運転が行われた。元々1948年から1949年に建造され、1966年まで稼動していたA1タイプ(Peppercorn Class A1 Pacific 60163 Tornado)の車両を出来うる限り忠実に再現したレプリカで、ダラム州の州都ダーリントン(Darlington)にて建造された。1990年にボランティアグループによって計画がスタートし、実に20年近い歳月と300万ポンド(6.3億円)もの費用が費やされている。
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お披露目式の様子。短い距離ではあるが「新造の」蒸気機関車の雄姿が確認できる。
今回新造された蒸気機関車A1は、国立鉄道博物館に保存されていた1966年まで稼動したタイプの図面を元に建造されたもの。もちろんそのまますべてを再建造したわけではなく、ブレーキなどの安全装置をはじめ随所に新しい仕組みが追加採用されている(現在の生産技術などを応用し、高速化にも寄与している)。ただし肝心の「蒸気機関」の部分は昔のまま。燃料である石炭をスコップでくべる部分などは今世紀になっても変わらない。
スコップで石炭をくべる様子は昔と変わらず(Mail Onlineより)
全体的なスペックは19.05メートル、高さ3.9メートルでオリジナルの機関車より1インチ(2.54センチ)ほど低くなった。幅は2.6メートル、重さは170トン。最高時速は160キロとなかなか速い。なお通常使用時には1日で8トンもの石炭を使用していたのこと。吐き出す二酸化炭素は1キロメートルの走行あたり15キログラム(軽自動車90台分)。
建造のために用いられた労力は全部で15万時間・人力。今回建造されたレプリカは300万ポンドかかったが、当時は1.5万ポンドで作れた。これは現在の価格で37.6万ポンドに相当し、ディーゼル機関車の建造費150万~200万ポンドと比べると案外お買い得。ちなみに建造費はスポンサーからの援助や個人を中心としたファンからの寄付金(「一週間にビール1杯分(1パイント)の1.25ポンドをA1建造のために寄付しよう(当時の価格。現在では1.25ポンドは265円)」という運動が展開された)でまかなわれている。
軸配置は4-6-2。要は横から見ると「(前)○○●●●○(後)」という車輪配置で「●●●」の部分が大きな動輪となる。この動輪部分は直径約2メートル、それぞれの重さは約2トン。
内部、左側にいる人と比較してもその大きさが分かるはず。
この建造プロジェクトのリーダーであるMark Allatt氏は、蒸気機関車について次のように語っている。
蒸気機関車は人類が今まで作った創造物の中でもっとも”生き物”に近い、素晴らしいモノに違いない。迫力ある動きと蒸気を吐き出す様子はまるで生きているようで、今の機関車には出来ない芸当だ。子どもが最初に描く列車はディーゼル機関車ではなく、蒸気機関車だろう? それが(蒸気機関車の素晴らしさの)すべてを表しているんだよ。
と。
蒸気機関車の雄雄しさや迫力、魅力は世界共通のものであるが、特にイギリスにおいてファンの熱烈度が高いのに気がつく。これはひとえにイギリスが世界有数の蒸気機関車が普及していた蒸気機関車先進国であると共に、蒸気機関車発祥の地という事情もあるのだろう。
ちなみにこの「A1建造プロジェクト」の公式サイトは【こちらになる】。さまざまな映像やデータを閲覧できるので、(英語が分からなくとも)楽しめるに違いない。
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