言葉の乱れ、感じる人は8割・30代~40代に「世代の壁」も

2008年08月07日 12:00

言葉イメージ文化庁は8月1日、2007年度における「国語に関する世論調査」の結果を発表した。それによるとほかの人の言葉使いが(おかしいのではないかと)気になる人は全体で7割を超え、歳を経るにつれてその割合が増加する傾向があることが明らかになった。一方で間違った使い方をしていても「言葉は乱れていない」と考えている人の多くは「そもそも言葉というものは時代によって変わっていくものだから」と認識しているいることも分かった。間違いを間違いと断じるか、変化と見なすかの違いのようにも見受けられる(【発表ページ】)。

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今調査は毎年文化庁が、日本人が用いるさまざまな言葉の意味の理解度や意識に関する調査を行い、国語の施策を進める上での参照データとするために行われているもので、全国16歳以上の男女を対象にしている。調査方式は個別面接調査で、今回の調査は3月1日から20日までの間に3445人に対して行われ、回答数は1975人だった。

ほかの人の言葉使いが気になるか否か、気になるのならどの程度気になるかについて尋ねたところ、全体・年齢階層別・性別では次のような結果となった。

ほかの人の言葉使いが気になるか否か、気になるのならどの程度気になるか
ほかの人の言葉使いが気になるか否か、気になるのならどの程度気になるか

男女別では男性よりも女性の方が「他人の言葉使いが気になる」と答えている。また、40代~50代に達するまでは歳を経るにつれて「気になる」派、特に「非常に気になる」の割合が増えるが、60歳以上になると急にその割合は増え、むしろ「あまり気にならない」人の割合が急増する。

60歳代以降に
「他人の言葉使いが気にならない」が
増えるのは、周囲環境が自分と同年代の
人たちで占められるようになるため?

この「60歳以上になると気にならない人の急増」にはいくつか理由が考えられる。その一つが、定年退職を迎えて自分の所属するコミュニティが「色々な年齢層の人から構成される会社中心」から、「同じ年齢層との会話が多くなる地域社会」に変化するからだと思われる。設問中の「他人」は単なる「他人」であり、「若者」や「世代の違う人」とは聞いていないからだ。また、歳を重ねていくことにより達観視できるようになった、というのもあるのだろう。

それでは「気になる」だけでなく「今の国語は乱れている」とまで感じている人はどれくらいいるのだろうか。

今の国語は乱れているか
今の国語は乱れているか

全体的には「気になる」人の割合よりも多くの人が「乱れている」と感じているのが分かる。また、男女別の差異はここでは見られないものの、「歳を経るごとに『乱れている』と感じる人が増えている」傾向は変わらない。さらに「60歳以上になるとネガティブな意見が減る」傾向も同じ。理由もやはり、本人がおかれるコミュニティ環境の変化によるものと思われる。

30代~40代の間に
「言葉の乱れ」の認識に関する
ジェネレーションギャップが

ただし「乱れている・乱れていない」では、「非常に乱れている」とする意見において、30代までを境にしたジェネレーションギャップ(世代間の断絶)が起きているのが分かる。言葉の使われ方について非常にピリピリしている人たちは、40代を境に急増するのだろうか。あるいは言葉・国語そのものの大きな変化がこの世代間にあったのかもしれない。


社会の仕組みや時節の問題、文化芸能の流行りすたりなどさまざまな要素を変数として、使われる言葉や国語は変化していく。江戸時代の歌舞伎のセリフ回し、近いところでは戦前の漫画で登場人物の話し言葉を見れば、今の言い回しとは違うことが分かるはず。正しい・間違いは別として、言葉そのものが生物の進化と同様に変化を続けることだけは間違いない。

実際、今回の設問で「国語は乱れていない」と回答した人の多くは、「言葉は時代によって変わるものだと思うから」と回答している。

国語が乱れていないと回答した人に、その理由を聞いた結果
国語が乱れていないと回答した人に、その理由を聞いた結果

前回調査と比較した限りでは、「細かいところは変わってるかもしれないけど、真髄は変わっていない。細かいこと言わないでよ」という意見が減り、「変わってるのは分かってる。でも時代に沿った言い回しはこっちが主流なんだよ。時代の流れを知ってね」と認識する意見が増えているのがわかる。

使っている本人も「言葉の変化」を実感している昨今。何が原因なのかはデータからだけでは推測しにくいが(インターネットや携帯電話が大きな要因であることは違いない)、今現在は言葉・国語そのものに大きな変化が生じている最中にあるのだろう。

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