700年前のストーブで暖房費を1000円にした人の話

2008年08月10日 12:00

昔のストーブイメージ【食費9.5%、燃料費19.09%~ヨーロッパでもっとも物価高に悩む国、イギリスの場合】でも触れたように、物価高が進む昨今において、ヨーロッパ地域ではイギリスが一番物価高が進行している。特に燃料費代の高騰には頭を悩ませている人が多いようだ。そんな中、700年前・14世紀にハンガリーで使われていたタイプのレンガ造りストーブを導入し、暖房費を1か月あたり最低額で5ポンド(1050円)にまで節約できた人が現れた(【Mail Online】)。

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Peter Breuer氏と700年前のハンガリー式スタイルを採用したストーブ。
Peter Breuer氏と700年前のハンガリー式スタイルを採用したストーブ。

この「時を越えたストーブ」を利用しているのはPeter Breuer氏(80)。元弁護士で今は勇退し、悠々自適な生活を過ごしている。彼は元々セントラルヒーティングシステムを利用した住宅に住んでいるが、この「ハンガリー式ストーブ」を使ったところ非常に効果的に室内が暖まったので、それだけで暖房は済んだとのこと。

ストーブの材質は石とレンガ。写真を見ればお分かりの通り、中央部には燃料(木材や雑草など)を入れる場所が、下には燃えかすを取り除くためのフタがある。そして上部には料理に使えるオーブンが用意されている。発火した燃料で加熱された空気は密封されたまま、循環する形で長い距離を経て煙突口にたどり着くので、多くの熱量を室内に残すことになる。一日に使う燃料は一日あたり木材一束分。Breuer氏はその木材ですら、しばしば地元のお店の人からタダで貰ってくるという。

Breuer氏はこの「14世紀のハンガリー式ストーブ」を利用した感想として、「同じような(現在発売されている鉄製の)ストーブの場合、同じ量の木材をくべるとやはり火がついて温かくなるが、すぐに火は消えて寒くなってしまう。しかしこのハンガリー式ストーブなら、熱が内部のタイルや石工部分に伝わるので、ストーブ自身がヒーターの役割を果たすから、温かいままでいられるんだ」と語っている。いつも用いている一束分の木材で、12時間ほどの暖かさが維持されると共に、上部のオーブンを使ってじゃがいもなどの料理を楽しむこともできるとのこと。

この「ハンガリー式ストーブ」の設置費用は3000ポンド(63万円)。通常のセントラルヒーティングシステムを導入するのと同じくらいの費用で済んだ。なおこの形式のストーブを作れる人がイギリス国内には皆無だったため、Breuer氏は去年、ハンガリーにいる職人たちを材料込みで呼び寄せ、自宅(3つの寝室付一戸建て住宅)に設置をお願いした。設置には2日かかったという。

燃料の木材をくべる部分。今や「初めて見る」という人も多いのでは?
燃料の木材をくべる部分。今や「初めて見る」という人も多いのでは?

元記事の試算では1年間に平均的な家族が使用する暖房用のガス料金は750ポンド(16万円)。この「ハンガリー式ストーブ」を使えば、1年あたりの暖房費は250ポンド程度で済み、500ポンドが節約できる計算になる。つまり 3000÷500=6 で、6年間で元が取れる。なおこのストーブ、イギリスでは稀有な例だが、ハンガリーはもちろんドイツやスイス、北イタリア、スカンジナビアなどではポピュラーな存在との事。元々Breuer氏の祖父母がハンガリーに住んでいて、その家でも「ハンガリー式ストーブ」を使っていたので、このストーブに詳しかったという。

実際にはメンテナンスや換気、さらには二酸化炭素排出の件、燃料に使う木材の調達方法(Breuer氏はたまたま近所に親切なお店の人がいるから良いが……)など、通常のセントラルヒーティングシステムやストーブとは別の問題があるため、一概に「便利極まりない」と評することはできない。しかしここまで燃料費が高騰している昨今において、相対的に値が落ち着いている昔の暖房機器が見直されているのも事実。ましてや今回の「ハンガリー式ストーブ」のように、「昔の人の知恵」が施されて、それが実際に役立っているとなれば、注目されるのも当然といえよう。

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