5ポンド紙幣しか引き出せないATM、イギリスに登場

2008年08月13日 08:00

ATMイメージ銀行はもちろん今やコンビニやスーパー、デパートなど街中のいたるところで見られるATM(現金自動預け払い機)。それぞれの端末にストックがある限り、そして引き出し上限枠内ならどんな紙幣でも(場合によっては貨幣も)引き出せるのが常識。ところがイギリスで、最低額面の紙幣である「5ポンド紙幣」(約1000円)しか引き出せないATMが登場した。利用者の消費を抑えるための「心配り」からの特別仕様なのだという(原文【Mail Online】)。

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5ポンドしか引き出せないATM(Mail Onlineより)
5ポンドしか引き出せないATM。画面の注意書きには「5ポンド紙幣でしか引き出せませんよ。しかも最大50ポンドまでですよ」とある。……単に使い勝手が悪いATMなのかも。(Mail Onlineより)

イギリスでは現在5ポンド、10ポンド、20ポンド、50ポンドの4種類の紙幣が一般的に流通している。一番額面が低いのが、今回取り上げられている5ポンド紙幣。

この「5ポンドATM」は8月11日東ロンドンに第一号機が設置された。そして数か月のうちにイギリス全土に配置されるとのこと。「イギリス国内の、ロンドン市内と主要都市、合わせて20か所以上の場所で設置予定。現在選定中です」とこのATM開発・設置を行う会社の担当者Ron Delnevo氏は語る。「この『5ポンドATM』を設置することでお金の消費を抑えることが出来、効用を享受できるような場所こそ、優先的に設置しなければいけませんからね(。じっくりと検証をしなければいけません)」。

5ポンド紙幣イメージまたDelnevo氏はこの「5ポンドATM」の効用を次のように説明している。「利用者のサイフが5ポンド紙幣で一杯になれば、レジでお金を差し出すときに時間がかからなくて済むし、両替の手間も省けますよ。経済と社会全体に与える影響は絶大なものとなるでしょう」。両替の手間はともかく、レジでの面倒くささが減るかどうかは保証の限りではない。

この動きはイギリスの中央銀行側でも諸手を上げて歓迎されているようだ。なぜなら「5ポンドATM」が普及すれば、銀行がストックしなければならない5ポンド紙幣の量も必然的に増え、さらに国内で循環する5ポンド紙幣も増えるからだ。現在イギリスに出回っている5ポンド紙幣の大部分は古く、従来の耐久年度を越えたしわくちゃ状態のもの。印刷に問題が生じて新札の供給が不足しているわけではなく、銀行側による市場への供給が十分でないのが原因だという。

イギリス中央銀行の頭取Mervyn King氏は語る。「市場にはもっと(きれいな)5ポンド紙幣をたくさん流通させねばならない」。この「5ポンドATM」で5ポンド紙幣が大量に出回れば、新札の流通量も増えるだろう、というのが中央銀行側の狙いのようだ。ちなみに現在流通している5ポンド紙幣のほとんどは、従来の紙幣の寿命の2倍もの使用期間を経ているとのこと。

……似たような話は【郵便局のお釣りで二千円札が多い件について】で触れた、郵便局内のオートキャッシャーでも見受けられた。こちらは二千円札を流通させたいという意図があるわけではなかったが、結果としてそれを促進する効用が生み出されてしまっている。

(たまたま)似たような機能を持つATMに遭遇した人の話が【ヤフーブログ(海外での日常)】に掲載されていたが、いわく「ATMで5ポンド紙幣を見たのは初めて、全部5ポンドというのももちろん初めて」「イギリス人同僚に聞いてみたところ、そんな馬鹿な、と言われたが数十枚の5ポンド紙幣を見て笑っただけ」という言い回しがあることから、イギリスでは「ATMで5ポンド紙幣を引き出す」ことは滅多にないことなのだろう。

周囲に「5ポンドATM」以外のATMがなければ、選択肢がそれしかないのだから、おサイフを5ポンド紙幣でふくらませるしか手がない。しかし中央銀行やATM提供会社の思惑は別として、「5ポンド紙幣でしか引き出せないATM」が果たして世間一般に歓迎されるのか。日本で仮に「千円札でしか引き出せないATM」があった場合、使いやすいかどうかを考えれば、答えはおのずから導き出せるような気がする。

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