今件について「非現実的だ」「ありえない」という反論もあるが、研究グループ側は「確かに現実問題として、そして生理学的・遺伝子学的に100％全員が肥満体という現象は置き得ない。しかし計算上、数字上の動きとしては『起き得る』という結果が出ている。これは現状に対する警告を意味する。何しろ現時点ですでに人口の2/3は『やや肥満』かそれ以上に属しているのだから」と言及している。

ちなみに『やや肥満』とはBMI値を基にした区分。計算式は「体重÷身長÷身長」。日本肥満学会ではBMIが22で平均的体格・体重、25以上を太り気味、18以下をやせ気味としている。そしてアメリカでは

と区分。『やや肥満』は元記事では「Overweight」と表記されている。なお今記事では「やや肥満」「肥満」を合わせて「肥満体」と表現することにする。

アメリカ人全体を細分化した場合、いくつかのグループでは肥満傾向がスピードアップしている傾向もあるという。「例えばアフリカ系アメリカ人の女性に限ると、78％の人が『やや肥満』か『肥満』に属しています」。実に5人に4人が「肥満体」。

今回の予測は1970年代から2004年までのデータに基づいて行われたもの。具体的な検証結果としては次の通り。

あくまでも「今後数十年の動向がこれまでと変わらない」という仮定のもとにおける推測だが、逆にこれは「今後何も変化がない、変化を起こそうとしない限り、十分起き得る話として認めねばならない」と研究グループでは警告している。

ただし絶望的な話ばかりではない。例えばウエストラインを細くするため(≒ダイエット)に用いられる費用が、今後10年間毎に倍増していくだろうとも予想している。そしてその額は2030年には9570億ドル(105兆円、原文ママ)に達するとのこと。さらにこの数字ですら「過小評価(huge underestimate)かもしれない」という。

この予測から研究グループでは、アメリカ人のライフスタイルの改善をはかり、特に体重を減らすべくありとあらゆる手を打つべきだとしている。現時点においてもそれなりに各方面での動きは活発だが、食事制限・運動の面でまだまだ十分ではない、とのこと。さらに「個人の努力も必要。そしてさらに社会的方面からの援助体制がもとめられている」と締めくくっている。

ちなみに「2030年には肥満対策に9570億ドルが費やされる」との話だが、2008年度のアメリカの国家予算総額は2兆9020億ドル。国家予算と比べて実に1/3近い額がダイエットに使われることになる(もちろんこれは金額上の比較での話。アメリカの国家予算そのものの1/3がダイエットに向けられることを意味しない)。もちろん日本の国家予算(歳出が約83兆円、2008年度)をはるかに上回る額。

「ダイエットに費やす金を他方面に振り向けばどれだけ世の中は幸せになるのか」「太るために浪費して、そしてダイエットのためにまた浪費なんてナンセンス」「どれだけダイエット関係の産業が伸びるんだよ」というッツコミが入りそうだが、あくまでもこれは予測の一つに過ぎないことを書き記しておく。ただし【世界の肥満度がビジュアル化されると……】などの別所データを見る限り、「四捨五入をすれば100％はありえるかもな……」と思わざるを得ないのも事実ではある。

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(最終更新:2013/08/03)