2008年6月の新設住宅戸数、前年同月比16.7%減

2008年08月01日 06:30

住宅イメージ国土交通省は7月31日、2008年6月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると6月の新設住宅着工戸数は前年の同月比で16.7%減の10万0929戸に留まり、12か月連続して前年同月比で減少したことが明らかになった。先月と比べると前年同月比のマイナスポイントの割合が大幅に増大し、「再び状況の悪化」傾向が大規模に進展した形となった(【発表リリース、PDF】)。

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具体的な内訳は持家が6.6%、貸家は15.1%、分譲住宅は27.2%の減少。先月の反動からか、分譲住宅の下げ幅が著しい。地域別ではすべての地域でマイナスの値が出ているが、特に近畿圏の前年同月比30.1%減という数字が目立つ。

改正建築基準法の施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が昨年夏以降の住宅市場における混乱と、新設住宅戸数の減少をもたらしている(俗にいう「官製不況」)のはいうまでもない。さらに昨今の資源高・賃金上昇、金融機関の貸し渋り傾向の強化などの要因も強まる傾向にあり、状況はより悪化している。さらに主な購買層である消費者の消費性向の低下も、住宅需要を押し下げている。

新設住宅戸数の変遷
新設住宅戸数の変遷(2008年6月分まで)

昨年8月~10月の大低迷から上昇傾向を継続していていた前年同月比割合だが、今年に入ってから一進一退の攻防……というより、前年同月比マイナス5%あたりを天井とし、上げては弾かれて下げ、また上げては下げを繰り返す状況が続いている。資源高の状態も高止まりの傾向にあるし、購買層の購入意欲もポジティブに転じる様相を見せないことから、このまま自然調整による淘汰や回復を待つしかない状態。上場企業はもちろん帝国データバンクの倒産データを見ても、先月以上に不動産関連企業の破綻(特に連鎖型倒産)が相次いでおり、予断を許さない状況。

豪快に下げた着工床面積概要(前年同月比29.0%減)では、先月まで増加傾向を見せていた事務所もついに四か月ぶりに減少を見せ、店舗・工場・倉庫とあわせてすべての使途別でマイナスとなった。用途別では金融・保険業用がリバウンドからか373.2%と大きく増加した以外はすべてマイナスで、前年同月比40~50%の用途がざらにある状態。先月「医療・福祉用が42.8%減と大きく減らしているのが気になるところ」というコメントが可愛いくらい。

耐震強度偽装問題を教訓にした
「改正建築基準法」の施行

・行政の不手際などで
新築戸数などが激減
・昨年夏で底打ちに見える。
・3月再び下落・失速感。

周囲環境の急速な悪化から
回復どころか再び転落の
危機迫る

国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【「最近の建築確認件数等の状況について」発表リリース】)。これによると今回発表された6月分データでは6.1%マイナスとなり、5月分データの11.5%からは幾分改善しているようにみえる。来月分の住宅着工は少なくとも、今回発表分よりは良いことが期待できる。

国土交通省から今回発表されたデータも含め、いまだに前年同月比がプラスにならない状況を観る限り、改正建築基準法施行の影響の大きさ、そして資源高、さらには需要縮小による供給過多などタイミングの悪い時にやってきた連鎖的なマイナス要因が、不動産業界を大きく揺れ動かしていることが分かる。そして昨年秋以降最悪期から順調に立ち直りつつあった状況も、足踏み状態、むしろ後退気味となっているのが現状だ。【改正建築基準法で影響を受ける周辺業界たち】で挙げた周辺業界にとどまらず、不動産業の軟調さは多くの業界にマイナスの影響を与えつつある。

先月言及した【スルガコーポレーション(1880)、民事再生手続き申し立て・上場廃止へ~負債総額約620億円】が序曲であったかのように、今月に入り上場・非上場を問わず多くの不動産・建設業者が相次いで破綻している。独自の破綻もさることながら、ある不動産会社が倒産し、そこの債権を持っていた建設・不動産会社が回収困難となり窮地に追いやられてしまうという「連鎖型倒産」があちこちで見られるようになった。財閥系や大きなバックボーンを抱える老舗の不動産・建設会社はそのふところの大きさから何とかしのいでいるが、中堅以下の不動産・建設会社は非常に厳しい状態にあるのが現状。

これから秋口にかけてどれだけの業者が耐えられるのか。単なる「需給関係の流れで生じうる自然淘汰」とは説明がつきにくい昨今の環境悪化の中で、今後とも該当企業のIRを含め、定期発表される当データを注意深く観察し、動向を見守らねばならないのはいうまでもない。

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