食料自給率1ポイント増加の40%にまで回復。されど理由は……

2008年08月06日 19:40

農業イメージ農林水産省は8月5日、2007年度分の食料需給表を発表した。それによると同年度の日本における食料自給率は供給熱量ベースで前年度(2006年度)から1ポイント上昇し、40%になった。食料自給率は昨今においては減少の一途をたどっており、上昇に転じたのは実に13年ぶり。小麦や砂糖の原材料である「てんさい」が豊作だったほかに、お米の消費量が増加したことが自給率向上に大きく貢献した(【発表ページ】)。

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日本の熱量ベースでの食糧自給率は低下する一方で、詳しくは【7年間で39%から45%へ・食料自給率向上計画】にもあるが直近10年間ほどの間は40%を維持していたものの2006年には39%に減少。自給率の低下は国家戦略レベルでの問題という認識から、2015年には45%にこの値を引き上げる計画が発動している。

日本と諸外国の食料自給率の推移
日本と諸外国の食料自給率の推移(2006年分まで)
2007年における主要項目の熱量ベース自給率変移(前年比)
2007年における主要項目の熱量ベース自給率変移(前年比)

今回発表された2007年度分において食料自給率が上昇した要因として

・豊作で小麦生産量が大幅に増加(前年比+13%)
・自給率の高い項目である米の消費量が増加(一人当たり61.0キロから61.4キロ)した
・原材料の「てんさい」「さとうきび」の収穫量増加のため砂糖類の生産量が増加(+3.5%)
・春植えのばれいしょの生産量が増加(+9.2%)
・みかんが表年だったため生産量が増加(+27%)


などが上げられている。一方魚油や乳製品の生産量の減少などが低下に寄与している。一部報道ではこの発表の後、太田誠一農林水産大臣が記者会見において(食料自給率が上昇ことに対し)「上昇傾向の芽が出ていると思わせる結果だ」と述べている。

食料自給率は1ポイント増加したが
そのほとんどは天候良好などの
「運」を起因とするもの。
自発的な食糧増産や
国産品消費による結果ではない。

しかしデータをよく精査してみると、今回の自給率上昇の要因の大部分が天候が良かったことによる豊作を起因とするもの。小麦にいたっては作付け面積は前年比で4%も減少している始末。食料自給率向上計画上にある項目に該当するものはわずかに「米の消費拡大」が挙げられるだけだが、これも間接的には小麦などの穀物類の価格上昇に比して米の価格が安いからといった「外部的要因」以上のものではない。いわば自給率が上昇した原因の半ば以上は「運によるもの」と判断して良いだろう。

「上昇傾向の芽」が本当の「芽」であることを確認し、その「芽」を育てあげるには、2007年の1ポイント上昇に喜ぶばかりではなく、「天候に左右される分を差し引いても確実に自給率が上がっていく」だけの行動プログラムを作り上げ、実践していく必要がある。そのためにも一年、二年の視点ではなく、十年、二十年、それこそ「国家百年の計」を持たねばならないだろう。

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