主要テレビ局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(2)業績斜め読みとスポット広告の落ち込み
2008年08月09日 19:30
「主要テレビ局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる」その2。ここでは発表された業績を斜め読みし、さらに業績を押し下げた主要因であるスポット広告の変化を見ることにする。本業たる放送事業を支える広告のうちの一つ、スポット広告にどのような変化があったのか、グラフ化すると一目瞭然。
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●業務成績は全社軟調、ただしテレビ朝日は「相棒」が押し上げる
それでは早速各社のデータを見ることにする……とはいえ、まだ第1四半期なので比較できるデータは少ない。グラフ化できるのは売上高や経常利益など一部のデータくらい。
主要5局の第1四半期における業務成績(前年同月比)
前年度の決算短信において次期、つまり現在進行期が厳しい状況になることは言及されていたが、実際グラフ化してみると非常に大変な環境下にあることが分かる。なお、唯一【テレビ朝日(9409)】が気を吐いているが、これは『相棒-劇場版-』が絶好調で「その他事業部門」が躍進、さらに「音楽出品事業」も大きくプラスとなり、放送事業の軟調さをカバーしたのが要因。まさに「良き『相棒』のおかげ」というところか。
続いて主要事業たる「放送事業」に的を絞って眺めてみる。順に放送事業利益と、前年度比をそれぞれグラフ化する。
放送事業営業利益
放送事業営業利益前年度比
放送事業の営業利益だけを見ると、(利益の絶対値はともかく順位は)ほぼそのままそれぞれのテレビ局の放送業界における勢力・シェアを模したような形に見える。【フジテレビ(4676)】の突出度はいつも通り。しかし「前年度比」まで見ると、【TBS(9401)】や【テレビ東京(9411)】の利益が他局と比べて低いのは、前年からの落ち込みが大きいのも一因であることが分かる。
●スポット広告の落ち込みが業務状態を悪化させる
ここまで営業成績が悪化している理由、ひとえにテレビ放送に対する広告費収入の減少にある。すでに【ネットやケータイ増やしてテレビや新聞、雑誌は削減・今年の広告費動向】などで何度と無くお伝えしているように、広告効果が薄くなったことやインターネットなど新媒体の登場で、テレビ広告に対する広告出稿の割合は減少の傾向にある。これはテレビ局から見れば「収入減」に直結する。
特に、先に説明したTVCMの部類のうち、番組そのものを買い取る形の「タイム広告」より、「スポット広告」の落ち込みが激しい。ある程度ターゲットを絞れる「タイム広告」はともかく、いわばばら撒き型の「スポット広告」は企業からは(効果が低いから)優先順位が低い、と判断されつつある。また、契約期間は「スポット広告」の方が短いことから、景気の動向に流されやすい(がため、景気悪化に敏感に反応して出稿が抑えられている)のも要因として存在する。その現状はテレビ局側でも重々承知・認知しているようで、各短信にもしっかりと記載されている。例えばテレビ朝日の場合は次の通り。
・日本経済は、景気の先行きに不透明感が強まりつつあり、このような経済状況のなか、当社グループ収入に大きな影響を及ぼすテレビ広告市場は、東京地区のスポット広告の出稿量が前年同期を大幅に下回る水準で推移するなど、大変厳しい状況となっております。
・スポット収入は、「輸送機器」や「薬品」が好調だったものの、原油高、原材料高の影響を大きく受けた「食品・飲料」が大幅に低迷したほか、「サービス・娯楽」「出版」「住宅・建材」なども振るわなかった結果~
などの表記が見受けられる。特に「業績が不調なセクターからのスポット広告出稿量が減っている」という表記は興味深い。
それでは具体的にスポット広告の前年同期比をグラフ化してみる。
スポット広告の前年同期比
TBSがやや落ち込みが激しく、逆に【日本テレビ放送網(9404)】が健闘しているのが分かる。先の決算短信による財務分析でも、日本テレビ放送網は放送事業における底堅さが見られており、この点も注目すべきかもしれない。
先の営業利益・純利益の落ち込み幅と比べると、いずれも10%前後と大したことはないように見える。しかし額そのものが大きい(例えばフジテレビの場合、当四半期営業利益は95.3億に対し、放送事業の営業利益は85.72億円)だけに、少しの割合の変動が全体の収益に大きく作用するようになる。極端な話、スポット広告が1割減れば、その何倍もの影響がテレビ局全体の営業成績に生じるわけだ。
(続く)
■一連の記事:
【主要テレビ局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(1)スポット広告と下方修正】
【主要テレビ局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(2)業績斜め読みとスポット広告の落ち込み】
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