成長続けるSWF、2007年時点で3兆3000億ドルの規模に

2008年07月14日 08:00

株式イメージ6月30日に内閣府が発表した【世界経済の潮流】によると、SWF(Sovereign Wealth Fund、ソブリン ウェルス ファンド)と呼ばれる政府系ファンドの総額が2007年の時点で3兆3000億ドルに達していることが明らかになった。そのうち46%が中東地域によるもので、原油価格の高騰に伴うオイルマネーが、SWFという形で世界の金融市場に浸透しつつあるようすがうかがえる(【該当資料、PDF】)。

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SWFとは「Sovereign Wealth Fund(ソブリン ウェルス ファンド)」の略で、政府系ファンド、政府の出資する投資ファンドのことを指す。石油や天然ガスなど天然資源の利益によって得られた収益、さらには総合的に外貨準備などの「余力」を原資として形成されるファンド。最近は世界的な資源高によって資源を豊富に持つ国家の国家財政が急速に潤い、その資金を元にしたSWFが急増している。その額は通常のヘッジファンドの規模を上回るとさえ言われている。

「世界経済の潮流」によると、2007年時点で全世界のSWFの規模は3.3兆ドル(約350兆円)。うち64%をコモディティ(Commodity、穀物や石油など、商品取引市場で売買される商品)を主原資とするSWFが占めている。

SWFの資産規模の推移(「世界経済の潮流」から、以下同)
SWFの資産規模の推移(「世界経済の潮流」から、以下同)

地域別のSWF分布を見ると、圧倒的に中東地域が多く、半数近くを占めている。これも原油価格高騰のなせる業(わざ)。もっとも、他地域のSWFも原油売却益を原資とするものが多く、政府の外貨準備金を原資とするSWFは少数派である(【参照:SWFについて(シャリア指数覚書)】)。

SWFの地理的分布(2007年)
SWFの地理的分布(2007年)

SWFはその規模の大きさや、現状では安定した資金供給を受けられることから、金融市場においても大きな期待を受けている。特に昨今におけるサブプライムローン問題などで大きく資本を欠損した欧米の金融機関にとって、SWFは「頼みの綱」であり、市場全体のショックアブソーバー(衝撃を抑える装置)的な役割を果たしている。

欧米金融機関におけるサブプライム関連損失と増資状況
欧米金融機関におけるサブプライム関連損失と増資状況

上記表組の中で黄色く塗られている部分がSWFによって増資され難を脱した案件。金融市場の収縮と原油・資源高によるSWFの飛躍が奇しくも同時期に(あるいはお互いが深い関係のもとに)おきたことで、SWFが主要金融機関に大きく影響力を及ぼすようになったことが改めて把握できる。


概算するとサブプライムローン関連で増資を行った総額1706億ドルのうち、実に595億ドル(34.8%)がSWFによるもの。他の金融機関も首が回らない状態に変わりはなく、SWFに頼らざるを得ない状況がさらに加速することを考えると、今後SWFの投資額・比率は今まで以上に高まるに違いない(もっとも「打ち出の小槌」ではないので、リスクを勘案した上で判断されるから、SWFですら見放す案件も出てくるだろうが……)。

レポートにもあるように、SWFはその資金の潤沢さが市場から歓迎されている一方、情報公開の不十分さや説明責任の問題、投資そのものの政治的な意図の可能性などから、受け入れ側にも警戒感が見られる場合もある。今後その規模や影響力が増すにつれ、SWFに対して一辺倒に「諸手を挙げて大歓迎」というわけではなく、さまざまなルールに基づいた行動が求められることだろう。

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