SBIとゼファーの金銭関係を時系列化してみる

2008年07月20日 19:30

分析イメージ先に【ゼファー(8882)が民事再生法適用申請、負債総額949億4800万円】でお伝えしたように、東証一部上場のマンション分譲大手【ゼファー(8882)】が負債総額950億円ほどを抱えて民事再生手続き開始の申し立てをし、事実上の倒産となった。今件について、当方の巡回サイトの一つである優良サイト【ちぎっては投げ】で、ゼファーとその親会社である【SBIホールディングス(8473)】との関係において興味深い分析が行われていたので、ここでピックアップしてみることにする。

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詳細は該当記事【ゼファー 民事再生手続き申請】【ゼファーを倒産させたのはSBI】で確認してほしいが、概要をまとめると「今回のゼファーの倒産について、経営が傾いた際に手助けしたのは事実だが、直近において引導を渡したのも親会社のSBIではないか」というもの。

その解釈が正しいのかどうかはさておき、気になる人がそれぞれの判断で解釈しやすいよう、ここ数か月の流れを時系列を追って(SBIグループとゼファーの関係に限り)箇条書きにしてみた。これで事態の流れがある程度理解できるはずだ。

2008年5月12日
・ゼファー、2008年3月期決算短信発表(【発表リリース、PDF】)
 26、64ページの近藤産業への言及中「金融機関からの一部の借入金に対して財務制限条項に抵触している状況にありますが、金融機関との協議により期限の利益喪失の蓋然性はないものと判断しております」との表記あり。
要は近藤産業の財務状況が貸付時に定めた一定条件以下となったため、「貸付金の返却時期」が無効となり、即時に貸付金を返さねばならない・返せといわれても文句の言えない状況にあること。だから「金融機関との協議」をして、「契約上は文句は言えないけど、すぐに返せとはいわないで」と懇願している状態。


2008年5月30日
・ゼファーの100%子会社近藤産業が破産(【発表リリース(ゼファー、PDF)】)。
 最終的に142億6400万円を関係会社整理損として計上(【民事再生手続き時のリリースより、PDF】)


2008年6月12日
・SBIがゼファーへの貸付金200億円に関してコメント(【発表リリース(SBI)】)
 「貸付金200億円」「同社(ゼファー)が保有する当社(SBI)株式の散逸を防ぐため、同社(ゼファー)保有の当社(SBI)株式に対して担保設定」


2008年6月27日
・ゼファーが保有していたSBI株式を売却、現金化(【発表リリース(ゼファー)、PDF】)。
 6月12日の時点でSBIが担保扱いとしていた、ゼファー所有のSBI株式を「手元流動性資金の確保および有利子負債の削減」のために売却。89億4400万円のキャッシュが手に入るも、SBIグループ※からの借入金の担保に充てられていたため、借入金返済に50億2000万円が充てられ、39億2400万円のみがゼファーの手元に残る。
「SBIグループからの借入金」という表記があるが、金額から「SBI証券(旧SBIイー・トレード証券)」からの借入金50億円にそのまま充当されたと推定される。

・SBI、ゼファー保有の株式売却に関してコメント(【発表リリース(SBI)】)。
 「英国の機関投資家に一括売却いたしました」。担保株式の売却容認と売却先の認識。6月12日の時点で「株式の散逸を防ぐため」とあるが、結果的にSBI公認で事実上の「散逸」へ(「英国の機関投資家」はSBIグループにあらず)。


2008年6月30日
・SBIの北尾氏がゼファーの社外取締役から退任していたことを発表(【親会社等に関する事項について(ゼファー)、PDF】)
 ゼファーの社外取締役でありSBIのCEOでもある北尾吉孝氏が6月27日の株主総会の終結の時期をもって「任期満了に従い」退任したと発表。代わりにSBIの執行役員専務である相原志保氏が社外取締役に就任。

・ゼファー、2008年3月期の(3月31日時点における)有価証券報告書提示(【該当資料、PDF】)
 重要な後発事象(71ページ~)において「近藤産業の破綻」「SBI子会社からの運転資金の借り入れ」「保有していたSBI株式の売却」が記載。
 「SBI子会社(パートナーズ・インベストメント)からの運転資金の借り入れ」……
 1:5月29日……90億円、利率9%、8月29日付けで一括返却
   (∴3か月のみ借り入れ)
 2:6月9日……30億円、利率9%、9月9日付けて一括返却
   (∴3か月のみ借り入れ)

 ※73ページ以降に社債明細表。直近償還期限のものは
  8月22日……120億円分(第2回無担保公募社債、2006年8月22日発行)


2008年7月16日
・SBI、ゼファーへの貸付金についてコメント(【発表リリース(SBI)】)
  「段階的に返済」「現時点で貸付金は120億円まで減少」


2008年7月18日
・民事再生手続き開始(【発表リリース(ゼファー)、PDF】)
 「7月末までに必要な資金を調達する目処が立たず」
・ゼファーの飯岡社長、記者会見を実施(【ロイター伝】)
 「今年7月末までに必要な27億円の資金を調達するメドが立たなくなったことが、民事再生手続き開始の引き金を引いたという」(公式リリース中の「必要な資金」額判明)
・親会社のSBI、見解を発表(【発表リリース(SBI)】)
 「貸付金120億円(7月18日時点)」「ゼファー保有の優良不動産に対して担保設定済み。十分な担保価値を保有している」
 「SBI保有のゼファー株式は単体簿価31億円・連結簿価95億円」


次に、SBIグループのゼファーへの貸付金のみを時系列順に抽出する。

2008年3月31日時点……80億円
 SBIイー・トレード証券……50億円
 パートナーズ・インベストメント(SBI子会社)……30億円

2008年6月12日時点……200億円(公式発表)
 SBIイー・トレード証券……50億円
 パートナーズ・インベストメント(SBI子会社)……150億円
 (前期からの繰越30億円+5月29日の三か月短期貸出90億円+6月9日の三か月短期貸出30億円)
 (※短期貸出計120億円が公開されたのは6月30日)

2008年6月27日時点……150億円
 パートナーズ・インベストメント(SBI子会社)……150億円
 (SBIイー・トレード証券の50億円は担保としていたSBI株式売却に伴い一括返却されたものと推定)

2008年7月16日時点……120億円
 パートナーズ・インベストメント(SBI子会社)……120億円
 (差し引き30億円ほどゼファーから返却させたものと思われるが各種報告書が無いので確認は出来ず)

2008年7月18日時点……120億円
 パートナーズ・インベストメント(SBI子会社)……120億円


今回の時系列表はいずれも公的に発表されたものばかり(倒産時の記者会見の状況のみロイター伝)であることを書き記しておく。

2008年3月期決算の時点ですでに本業のマンション分譲において首が回らなくなりつつあったこと(営業キャッシュフローが-243億1100万円と大きくマイナスを示しており、物件の仕入れが過大であることが分かる)、4月以降不動産市場の冷え込みが加速する一方で、たとえ7月末までに27億円が調達できたとしても、8月22日償還予定の公募社債120億円分の手当てのめどがつかないこと、さらに8月末・9月頭にはSBI子会社に計120億円+年利9%の短期借入金を返却しなければならないことなどから、付け替え貸し出しをしたとしても恐らく破綻は免れなかったものと推定される。

3月末時点の財務状況を示した有価証券報告書提示を見ても、支払手形や工事未払い金、短期借入金、長期借入金の相手には名だたる企業(上場企業多数を含む)が名を連ねている。7月18日の「倒産」時点でこれらの企業の貸付金などに、どれだけ手当てが行われていたかを考えると、SBIグループへの一部返却以外は、むしろその額を増やしていたのではないかとすら推定できる(このあたりの実情もじきに明らかになることだろう)。

繰り返しになるが、直近数か月におけるゼファーと、その親会社SBIの行動、特に後者において、今回の流れがベストなものだったのかどうか。その是非についての判断は、読者の方々それぞれに任せることにしよう。


(最終更新:2013/09/07)

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