不況が変えるアメリカのカーリース市場
2008年07月31日 12:00
日本と比べても非常に利用状況が高く、自動車が生活に密着しているツールの立場に置かれているアメリカ。個人間の自動車の転売も盛んだが、「乗りつぶした自家用車を売って新しいのを買うのは面倒だから、長期間リースをすれば良いや」と考え、実践している人も多い。日本でも企業がプリンターやFAX、電話機、サーバーなどをリースで借り受けるのと同じことを、アメリカでは個人が自動車で行っているわけだ。そして自動車産業上のシステムも、GMやフォードをはじめとした各販売元自らがリースの仕組みを用意するなど、リースを許容するような選択肢がある(もちろん利用期間分を積み重ねて考えれば、現金一括払いが一番安くつき、ローンがそれに続き、リースは一番高くつく)。しかし日本以上に自動車のリースが普及しているアメリカでも、状況が変化しそうな雰囲気が見受けられるという。【USA TODAY】いわく、自動車のリース費用が跳ね上がり、一部ではすでに急騰しているとのこと。
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自動車産業全体が財政的に厳しい状況にあるため、リースの仕組みを中止したり、料金を改定する動きが広まっている。単なる財務的な問題に加え、中古車価格の下落がリースにマイナスの影響を与えている(リース用に使われた車両は最終的に中古車として販売される、それが出来なければスクラップ行きとなるから)。さらに、金融市場全体の信用収縮も要因の一つ。要はふところ具合が寂しく、一般のローンも申請が通りにくいため「焦げ付きリスク」が高まっている。
燃費が悪いとして後ろ指を指されるようになったトラックやSUV(ジープやワゴン、四輪駆動車など)のような、大型車両の中古車市場価格の下落が大きい。積極的な買い手が少なく、売り手市場にあるからだ。中古売却時のリターンを望めないため、貸し出ししている時点で利益を稼がねばならないため、リース条件も厳しく(リース料金を高く)設定せざるを得ない状況にある。当然、本社からの「キツい条件」のもとで営業をしなければならない代理店には、過酷な運命が待ち受けている。
同じ年数分だけリース用として使われている車両も、リース終了後に中古車として売り出される際の市場価格が急落すれば、それだけ負担がリース時の料金にかさ上げされてしまう。リースは期間単位の負担が少ないのがメリットだが、「これでは割が合わない」と思う人も増えてくるに違いない。
一般のクレジットローンの焦げ付き問題同様に、自動車のリース料金の焦げ付きも問題視されている。例えばゼネラルモータースでは昨年度から、リスクの高い(リース料金を延滞する可能性の高い)顧客への貸し出しを止める方策を実施している。日産のカルロス・ゴーン社長も先月ロイターとのインタビューの中で、「リース契約の価格設定の際に、その車両が最終的に中古車価格として売却される際の見積もりが、あまりにも甘いので驚いた」とコメント。これは「現実には中古車両は叩き売り状態なのだから、リースに回す車両の減価償却のことを考えれば、リース契約の代金をもっと上げねばならない」ことを意味する。
トラックやSUV車の中古価格(あるいは新車ですら)の暴落が、リース市場にも大きな影を落としている。リースとして使われた後の車両から(中古車として)回収が出来ないのなら、リース料金のアップは仕方の無いところ。結局リース料金は跳ね上がり、人々は自動車のリースがしにくくなる。
リースは「一定期間の料金負担が少なくて済む」のがメリットだが、そのリース料が跳ね上がってしまっては、敬遠する人も増えるだろう。新車を買える人には何ら関係のない話だが、自動車をリースで利用している人、特にアメリカに永住するつもりは無い人には、自動車離れがさらに加速しそうな話ではある。
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